日本語専門家 派遣先情報・レポート
ブダペスト日本文化センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
国際交流基金ブダペスト日本文化センター
The Japan Foundation, Budapest
派遣先機関の位置付け及び業務内容
ブダペスト日本文化センターは、ハンガリーを含む中東欧計13か国における国際交流基金の拠点として、海外における日本語教育、文化芸術交流、日本研究・知的交流を3つの柱として様々な事業を実施している。
中東欧地域の日本語教育支援として、研修会の開催、各国で開催される日本語教育関連行事への協力、日本語教育関連情報の収集と提供、日本語教育機関・教師への助言や支援、機関訪問等を行なっている。また、学習者支援としては、日本語講座の運営や、主にハンガリーの学習者を対象とした日本語学習奨励活動(動画コンテスト、ポップカルチャーイベント等へのブース出展)を行なっている。
所在地
1062 Budapest, Aradi u. 8-10. Hungary
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:1名、専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年
2000年

中東欧の日本語教育の変遷と新たな試み

ブダペスト日本文化センター
吉岡千里、片山恵

国際交流基金ブダペスト日本文化センター(以下、JFBP)では、JFBP所在国のハンガリーの他、中東欧12か国(北マケドニア、クロアチア、コソボ、スロバキア、スロベニア、セルビア、チェコ、ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ポーランド、モンテネグロ、ルーマニア)の日本語教育の支援をしつつ、JFBPにおける日本語講座の実施を行っています。

ハンガリーと周辺諸国の地図の写真
中東欧13か国(ハンガリー(緑))
出典:https://d-maps.com/carte.php?num_car=260671&lang=en

この「世界の日本語教育の現場から」の記事を遡ると、2002年から始まっています。今回は今までの記事を通して、中東欧日本語教育ネットワークの移り変わりをふりかえり、最後にJFBPが現在取り組んでいる新しい挑戦について紹介します。

中東欧の日本語教育をふりかえる

この記事が始まった2000年初期の中東欧の日本語教育概況は、各国で素晴らしい先生方が活躍している一方、国境を越えた交流や情報交換がないことが課題としてあげられていました(2002年2003年)。そこで、この点と点をつなげるべく「中東欧日本語教育研修会(以下、中東欧研修)」を初めて開催し(2004年)、中東欧8か国から日本語教育関係者が参加しました。その後も、引き続き中東欧研修を開催したり、JFBPの日本語教育アドバイザー(専門家)が各国の情報収集や研修の実施に努めつつ、各国の日本語教育関係者に対し情報提供したり、相談にのったりしながら、中東欧の日本語教育ネットワーク構築を進めました(2005年2006年)。また、2007年ごろには、東欧の一部地域がシェンゲン協定に加盟したことで、国境を越えた移動もしやすくなり、国を超えたネットワーク構築の追い風となったことは想像に難くありません(2009年)。

その後、2011年に開催された中東欧研修には、11か国20機関から計60名の参加者が集うまでになりました(2011年)。中東欧研修は、中東欧地域の先生方や機関同士の連携を深めることが大きな目的であることは変わらないものの、基調講演をYouTubeで配信したり、Facebookを利用して教師ネットワークの構築をしたりするなど、情報技術の進歩をうまく取り入れ、さまざまな試みがなされてきました(2015年2016年)。また、JFBPでは中東欧研修や日本語教育アドバイザーの地域巡回などを行っていましたが、その成果を共有し、連携を強化し、共同事業の創出を目指すという目的で、「中東欧日本語教育プラットフォーム」が立ち上げられたのもこの頃でした(2017年)。

JFBPによる中東欧のネットワーク構築が進む一方、2009年から2017年には各国の日本語教育機関主導で、ネットワーキングを目的に以下のような国際会議やシンポジウムが開催され、さらにつながりを深めて行きました。

  • 2009年 南東欧・西バルカン日本語教育研究国際会議
  • 2012年 第2回国際シンポジウム
  • 2013年 第3回中東欧日本語教育ネットワーク会議
  • 2015年 東欧日本語教育ネットワーク・ベオグラード研修会
  • 2017年 中東欧日本語教育ネットワーク会議2017

今では当たり前になりましたが、当時はある意味画期的であった複数の国をつないだ研修の実施や、中東欧研修では公式サイトの作成、ペーパーレス化、EdCampの実施、Slackの利用など、JFBPは常に新しい挑戦を行ってきました(2018年2019年)。コロナ禍においては、急遽オンライン授業への対応を迫られた日本語教師のための情報交換の場をつくり、今では数多くの教師がよりどころとする勉強会となりました(2020年2021年)。

20年にわたる中東欧の日本語教育ネットワークの今昔を見てきましたが、当初は点と点だったものが、つながり、広がっていくのを感じ取っていただけたでしょうか。きっと今後もこのネットワークの広がりや深まりは時代とともに、変わっていくと思われます。長い歴史の中で私たちができることには限りはありますが、今後も不易流行を見極め、現地の先生たちとの対話を大切にしながら、中東欧の日本語教育に関わっていければと思います。

ハンガリー語話者のためのオンラインコースの開発

2021年5月、ついに!日本語学習プラットフォーム「JF にほんご eラーニング みなと」に、ハンガリー語話者を対象にしたオンライン自習入門コース『DEKIRU A1』が公開されました!2018年に企画され開発が進められてきたこのコースは、ハンガリーで制作された日本語教科書『DEKIRU1』を基に作られています。ハンガリー人のゲルゲイと一緒に、(1)日本人と知り合う、(2)家を訪問する、(3)街で買い物をするという3つのシーンにおいて、簡単な日本語表現がわかり、話せるようになることを目指しています。また、気軽に日本語を試してもらえるように学習時間も9時間、日本語を読んだり書いたりできなくても学習できるように工夫されています。

教材を紹介するイラストの写真
DEKIRU1 A1」自習コース

さらに!2022年5月には、イタリア、ドイツ、スペインで共同開発されたオリジナル自習コース『ようこそ!日本語と文化A1』のハンガリー語版の公開も予定しています!

地理的・時間的・経済的、様々な制約を超えて、より多くの人に日本語学習の機会が届けられるように、これからも日本語学習のコースを検討し、推進していきます。

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