日本語専門家 派遣先情報・レポート
カザフスタン日本人材開発センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
カザフスタン日本人材開発センター
Kazakhstan-Japan Center for Human Development
派遣先機関の位置付け及び業務内容
国際協力機構(JICA)とカザフスタン政府との協定により設立された機関で、日本語コース、ビジネスコース、相互理解の事業を行っている。2011年10月から、日本語コースはJF講座となり、2012年の2月から、アルマティでJF日本語教育スタンダード準拠の日本語教育が始まる。同年9月からは首都のヌルスルタン分室でもJF講座が始まる。日本語専門家は、JF講座をはじめカザフスタンの日本語教育支援として、教師養成や現地の教師の希望に応じたセミナーを開催も積極的に行っている。またカザフスタン日本語教師会(以下教師会)が行う弁論大会へのサポートを通し、教師会の自立発展に向けて活動している。
所在地
55/5 Jandosov str. Almaty Rep. of Kazakhstan
国際交流基金からの派遣者数
専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年
2002年

戻りつつある日常~コロナ前よりパワーアップ!!

カザフスタン日本人材開発センター
瀬川綾子

2020年3月の一時退避帰国から約1年半を経て、2021年10月末にカザフスタンのアルマティに再入国。この間、すべての動きを止めていたかと思っていたアルマティでは、高層マンションの建築ラッシュで高層ビルが増え、たくましく動き続けていました。

2022年、カザフスタンをはじめとする中央アジア5か国は、日本との外交関係樹立30周年を迎えます。その2022年の幕開けは、西カザフスタンの労働者たちのガス値上げに反対するデモから発展した騒擾という暗いニュースからでした。しかし、そんな中報告者が見た一般市民たちの行動は、非常に冷静でお互いを思い合う秩序あるものでした。破壊された町が元の姿に戻るまではそれなりの時間を要すると思われますが、国・町を愛する思いがその復旧に拍車をかけていくと信じています。

報告者が派遣されているカザフスタン日本人材開発センター(以下KJC)では、新型コロナウィルス感染拡大の影響を受けながらも、活動を続けています。そのいくつかをご紹介します。

コロナ禍をきっかけに進化するJF講座

KJCでは2012年より、JF日本語教育スタンダードに準拠したJF講座を開講しています。本コースは、毎年2月に春コースを、9月に秋コースを開講し、それぞれ約4か月です。また、夏休み期間中は入門レベルで夏期インテンシブコースやそれぞれのコースの前に、2週間のかなコースなども実施しています。

新型コロナウィルスの影響で2020年3月以降オンライン授業が続く中、2021年9月開講の秋コースでは、久しぶりに対面での授業を再開できました。アルマティで3クラス、ヌルスルタンで2クラスと、まだ数は少ないのですが、少しずつ日常が戻ってきています。

授業がオンラインになったことで、筆記による試験がしばらくできずにいましたが、この秋コースから筆記試験をクイズアプリの「Kahoot!」を使い実施しました。初めての試みで、試験作成をする報告者にとっても不安な面がたくさんありましたが、結果的にはこれを機会に日本語入力の方法などを真剣に学ぶきっかけとなりました。

このほか、クラスの宿題提出や連絡事項の伝達のためにGoogleクラスルームや、教師の授業報告にSlackを使うなど、オンラインだからこそ導入できた様々なツールが、今後対面授業に戻っても使えるものとして、浸透してきました。オンライン授業の副産物も生まれています。

授業の写真
1年半ぶりの対面授業

JapanClub~日本人留学生との交流

JF講座では、日本人のゲストを迎えて、「ビジターセッション」をクラス別に行っています。今は全てのクラスでオンラインによるビジターセッションを実施しています。秋コースでもいくつかのクラスですでに実施していましたが、1月の騒擾によるインターネットの遮断を受けスケジュールを変更した結果、ビジターセッションの中止を余儀なくされたクラスがいくつか出てしまいました。しかし、準備を進めていた受講生の頑張りを発表する場を作れないかと、2年半ぶりの「Japan Club」を開催する事にしました。オンラインでの「Japan Club」は初めてでしたが、12月に日本人の留学生4名がカザフスタンに入ったことを知り、彼らをゲストに迎え、受講生たちはカザフスタンの文化や料理を紹介しました。また、日本人留学生の皆さんにも、「日本人の若者は、どのようにコロナ禍を過ごしていたか」というテーマで日本での生活を紹介して頂きました。同世代の日本人ゲストが話す「生の今の日本」の情報に、受講生たちはネット越しではありますが身を乗り出し、真剣に聞き入っていました。「次回は対面で!」と約束を交わし、1時間半の「Japan Club」が無事終わりました。

日本車展示場での習字イベント

KJCは日本車展示の主催者より依頼を受け、展示場での習字のイベントを行いました。日本車を見に来た来場者に、日本文化にも触れて欲しいという要望にKJCが賛同し、行ったイベントです。当日は感染対策として手指消毒及びマスク着用の徹底をお願いし、来場者に書道に挑戦してもらいました。報告者にとって書道は小学校以来でしたが、事前にYouTubeや日本人書道家の友人からの指導で基本を思い出しながら、イベントに臨みました。当日は、水(みず)書道で筆の動かし方を練習したあと、希望する漢字を本物の半紙に墨で書いてもらいました。カザフスタンの人がよく「日本語でなんていうの?」と質問する言葉を漢字のリストにして持って行ったので、多くの人はその中から選んでくれました。人気のある言葉は「幸」「健康」「金」「愛」などです。

このように、困難に負けず、日本語や日本文化を愛する活動は続いています。

書道をする女性の写真
「健康」は世界の願い

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