世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 現地教師たちとともに
タシケント国立東洋学大学
小原 俊彦
タシケント東洋学大学学生
タシケント国立東洋学大学では、現在150名近い学生が日本語を学習しており、学習者数・日本語教員数ともにウズベキスタン国内で最大です。国内で最も影響力をもった日本語教育機関といえるでしょう。
私は2000年9月からこの大学で教えています。仕事の中心となるのは学生たちへの日本語の授業ですが、それと同時に最も重要である活動の一つは、現地人の教師を育成することです。私が赴任する前年度あたりから日本語を履修する学生が急増し始め、昨年度はクラス数の増加に伴い多くの現地人教師が採用されました。それまでは日本人教師のほうが多かったのが、現地人教師の数が日本人教師の倍になるという状況になりました。必然的に、日本語講座の運営をそれまでの日本人教師主導型から現地人教師主導型へ転換していく必要が生じてきたのです。
日本語講座の運営といった場合、それが意味するのは日本語の授業だけではありません。各種試験の作成・実施からカリキュラムの整備、学生指導、他の日本語教育機関との連携など多岐に渡ります。
現地人の教師たちは、皆この大学の卒業生たちです。全員二十代と若く、やる気に満ちているのですが、大学では教師養成のシステムが未整備のため、教える技術や理論をほとんど学んでいませんでした。日本語力においては申し分のない現地人の教師たちも、初めの1年間は授業でどうやって教えるかということで精一杯でした。
私は、彼らが何よりもまず一つひとつの授業に専念できるように努めました。講座の円滑な運営は、授業によって教師が学生の信頼を得ることが基礎になると考えたからです。私はそれぞれの教師の授業を見学し、良かったところや改善点などを話し合ったり、お互いの授業を見学するよう薦めたりしました。教師が参加する「教授法」の授業も行いました。現地教師を育成していくには、彼ら自身にとっても私にとっても、時間と根気が必要でした。彼らは精一杯やるからこそ、ときには焦りや苛立ちを私にぶつけてくることもありました。しかし時間が経つにつれ彼らは着実に力をつけていきました。学生からの信頼も次第に強まり、それが自信となって、授業以外でも自分の考えで積極的に動くようになってきました。私にとって、学生の日本語の上達はもちろん、現地教師の成長は大きな喜びとなっています。
一方で、講座の運営にはまだまだ考えていかなければならない点が数多くあります。日本語のクラスは年々増加しており、学生一人ひとりを指導するのに十分な時間を割くのが困難になってきています。また、「ウズベキスタン日本語弁論大会」の実施をはじめ、さまざまな学習者が学習の成果を発揮する場を作り出していくためには、他の日本語教育機関とお互いに連携を深めていくことも大切です。そのためにも、私を含めた日本語講座の教師たちが成長し、基盤を固めることが必要だと考えています。
日本語講座は、ゆっくりと、しかし着実に現地教師主体へと変わりつつあります。任期が終わる2003年6月まで、しっかりと後押しを続けたいと思っています。
イ.派遣先機関の位置付け 及び業務内容 |
タシケント国立東洋学大学は、ウズベキスタンで最初に開設された日本語教育機関。卒業生数、留学経験者数は国内の他の日本語教育機関に比べて群を抜いており、また、他機関の現地人教師のほとんどが当大学の卒業生であるなど、ウズベキスタンの日本語教育の牽引的な役割を担っている。 専門家は日本語講座、大学院での日本語教授、カリキュラム・教材作成に対する助言、現地教師の育成を行う。 |
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ロ.派遣先機関名称 | タシケント国立東洋学大学 | |||||||||||||||||||||||||||||
Tashkent State Institute of Oriental Studies | ||||||||||||||||||||||||||||||
ハ.所在地 | Lauti Street 25, 700047, Tashkent, Republic of Uzbekistan | |||||||||||||||||||||||||||||
ニ.国際交流基金派遣者数 | NIS専門家:1名 | |||||||||||||||||||||||||||||
ホ.日本語講座の所属学部、 学科名称 |
年度により異なる。2001年度は、文学部・地域研究学部・国際関係学部(第一外国語)、韓国学部・経済学部(第二外国語) | |||||||||||||||||||||||||||||
ヘ.日本語講座の概要 |
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