国際交流基金日本語教育紀要 13号 要旨

研究論文

ノンネイティブ日本語教師のビリーフと学習経験
-2004・2005年度と2014・2015年度の量的調査結果の比較-
久保田 美子

本文【PDF:958KB】

本研究は、ノンネイティブ日本語教師のビリーフと学習経験について、10年の間をおいて調査した結果を比較検討するものである。久保田(2007)では、2004・2005年度調査の結果、ビリーフには「正確さ志向」「豊かさ志向」の2因子があり、そのあり方に地域差があること、また「正確さ志向」と学習経験因子「文法・暗記・訳読型」との間に緩い相関があることを明らかにした。本研究で2014・2015年度調査を実施した結果、ビリーフに関しては、2004・2005年度と同様に地域差がみられたが、より「豊かさ志向」の傾向が強いことがわかった。学習経験に関しては、2014・2015年度調査のほうが「コミュニカティブな活動型」の学習経験が多い一方で「文法・暗記・訳読型」の学習経験に関しては違いがないことがわかった。また、ビリーフと学習経験の関係性は、学習経験因子「作文・報告・ディベート型」と二つのビリーフの因子の間に緩い相関がみられ、2004・2005年度とは異なる結果となった。

実践報告

ブログによる情報提供を通した“日本語パートナーズ”教務支援
-タイ4期(2016年度)に対する取り組み-
佐藤 五郎

本文【PDF:624KB】

筆者は、“日本語パートナーズ”(以下、NP)教務支援担当として、2014年度より継続的に、NP の学校訪問や、E メール等を通じたコンサルティングなどを行ってきた。日本語教師ではないNP に対し、どのような支援をすべきか試行錯誤を続ける中で、「任期中一度もコンタクトのないNP とのつながりをいかに確保するか」「NP のニーズに合った情報を適切なタイミングでいかに提供するか」という二つの課題が明らかになった。そこで、2016年度は4期に対して、筆者の個人ブログによる情報提供を開始した。ブログへのアクセス数、NP からのコメント、ブログ利用状況に関するアンケート調査の結果から、当ブログの有用性が認められ、そこで紹介した活動が授業でも実践されていることがわかった。同時に、「NP のニーズに合った情報の提供」「カウンターパート(タイ人日本語教師)との対話を促す手立て」という課題も浮き彫りになった。

映画視聴後の2つの話し合い活動における協働的学び
-中国における「視聴説」授業の実践から-
清水 美帆

本文【PDF:1.32MB】

本稿では、映画視聴後に行った2つの話し合い活動について、学習者間の話し合いの分析から特徴と学びを明らかにすることを試みた。中国の大学日本語専攻課程で実施されている、「視聴説」と呼ばれる映像メディアを用いた日本語授業の一環として、映画『時をかける少女』(2010実写版)を用い、視聴後に「内容理解タスク」と「感想の話し合い」の2つの異なる話し合い活動を実施し、分析を行った。その結果、「内容理解タスク」は、映画のあらすじを理解するという目標に向かうやり取りがされ、同時に言語学習の場としても機能していることが示された。「感想の話し合い」では、各グループで様々な話題と話の流れが見られ、創造的な学びを起こすためには、テーマの具体化と、学習者に本来備わる多様性が生かされる工夫が必要であることが示唆された。

『まるごと 日本のことばと文化』を主教材とした専門日本語研修のコースデザインと成果
羽太 園、野畑 理佳、東 健太郎、戸田 淑子、安達 祥子

本文【PDF:526KB】

国際交流基金関西国際センターで実施している外交官・公務員日本語研修では、これまで主教材として『みんなの日本語』を使用していたが、コース目標とカリキュラムのずれ、レベル差の拡大による学習ストレス、日本文化社会理解のシラバスの偏りなどの問題から、平成27年度より『まるごと日本のことばと文化』(以下『まるごと』)を使用することとした。主教材変更に際しては、本研修参加者の多様な背景や学習能力などをふまえ、(1)職業的な知識や経験の利用、(2)レベル差への対応、(3)文法を重視する学習者への対応、の3点に留意してコースデザインを行った。研修の結果、成績下~中位レベルの口頭運用能力の向上、ストレスの軽減、コミュニケーションへの積極性などの変化が明らかになったが、上位レベルのカリキュラムには課題が残った。

課題遂行を重視した教授法科目のコースデザイン
-ノンネイティブ日本語教師を対象とした教師研修から-
菊岡 由夏、篠原 亜紀

本文【PDF:492KB】

本稿では、ノンネイティブ日本語教師を対象とした教師研修における教授法科目のコースデザインの概要とその成果について報告する。海外日本語教師長期研修では、教授法科目のシラバスを改訂し、2015年度の研修において新たなシラバスによる教授法コースを実施した。新たなシラバスは、JF 日本語教育スタンダードの考えに基づいて、「課題遂行を重視した教え方」を中心に作成した。コースの実施にあたり、研修参加者が、これまでの日本語の教え方と研修で学ぶ新たな教え方とのギャップに混乱することがないよう、「内省」の機会を取り入れることとした。コース終了時のアンケートの結果から、「課題遂行を重視した教え方」が研修参加者に肯定的に捉えられたこと、また、「課題遂行を重視した教え方」を学ぶことを通して研修参加者が自身の教え方をふり返り、自身の教え方の変化の必要性を気づくに至ったことがわかった。

インドネシア国家カリキュラム準拠高校教科書『にほんご☆キラキラ』の開発
-態度面のコンピテンシーの育成と日本語学習の統合を目指して-
古内 綾子・三本 智哉・五十嵐 裕佳・八田 直美・エフィ ルシアナ

本文【PDF:1.24MB】

筆者らは、インドネシアの日本語教育支援の一環として、2013年に発表された国家カリキュラム(以下、K2013)に準拠した高校教科書『にほんご☆キラキラ』(以下、本書)の開発を行ってきた。K2013では、将来、国内外で活躍する人材育成のために、教育文化省が定めた能力(コンピテンシー)の育成を目指しているが、教科・科目で取り上げられる知識や技能とともに、規律や協調性、創造性、責任感といった態度面のコンピテンシーの育成も目標とされている。
本稿では、目的・目標と学習プロセス、学習評価の点からK2013を概観した上で、本書の概要を紹介し、その特徴である、態度面のコンピテンシーの育成と日本語学習の統合を目指したプロジェクトワークについて述べる。本書は、インドネシア人教師による試用を行っており、試用結果を踏まえた改善を行い、現在、出版の準備を進めている。今後の課題として、教師を対象としたワークショップの実施と、学習評価の方法の検討が挙げられる。

タイ中等教育向け教科書『あきこと友だち』の改訂
-コミュニケーション能力の向上を目指して-
中尾 有岐、プラパー セーントーンスック

本文【PDF:1.18MB】

『あきこと友だち』は、タイ中等教育向けに作成された初級教科書である。本稿では2017年出版予定の改訂版について、その方針や改訂点、試用の結果などについて報告する。改訂版ではコミュニケーション能力向上を目指すことを基本方針とし、「どんなばめん?」という課の目標場面を示し、ターゲットの語彙や文型に気づかせる聴解練習を追加した。他には、何ができるようになったかを意識させるために、目標を具体的な説明に書き換えたり、Can-do チェックを設けたりした。さらに、学習者が個人やグループで推測や分析、調査などの考える練習を追加し、協働する機会を増やした。「どんなばめん?」の試用結果では、学習者からは「頭を使う練習だから面白い」、「語彙・文法がわかった」、教師からは「生徒の動機づけになる」、「使いやすい」、「導入の時間が節約できた」など肯定的な反応を得た。

報告

2015年度第三国定住難民に対する渡日前日本語研修報告
岩下 智美、小西 広明

本文【PDF:401KB】

JF にほんごe ラーニング みなと」の構成と今後の展望
信岡 麻理、和栗 夏海、伊藤 秀明、山下 悠貴乃、川嶋 恵子、三浦 多佳史

本文【PDF:1.1MB】

「まるごと(A1)日本語オンラインコース」サイトの開発
武田 素子、熊野 七絵、千葉 朋美、笠井 陽介、石井 容子、前田 純子、北口 信幸

本文【PDF:886KB】

フィリピンカウンターパート教師研修での試み
-日本語運用力を高め日本と日本人を知るためのコースデザイン-
有馬 淳一、篠原 亜紀

本文【PDF:554KB】

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