- キャリアパス
- 新聞社(1年) → 経理部会計課(中途入職・2年3か月) → 映像事業部テレビ放送チーム(1年) → パリ日本文化会館(3年6か月) → 文化事業部美術チーム
中高時代に帰国子女の多い環境で育ち、大学時代にイギリス留学を経験したこともあり、漠然と日本と海外を繋ぐような仕事がしたいと考えていました。JFの存在を知ったのは、大学の先輩が就職したためで、当時から文化を介して日本と諸外国との相互理解を図る、という設立趣旨に深く共感していました。
新卒の就職活動では、JFには惹かれつつも、海外との繋がり、文化に関わる、公共性などを意識し、結果として新聞社に就職しました。新聞社ではたくさんの得難い経験をしましたが、外国との文化交流の現場に身を置きたいという思いがやはり強くあり、中途採用試験を受け、JF職員となりました。
文化事業部美術チームという部署で、美術分野における国際文化交流事業を実施しています。具体的には、海外での日本美術に関する展覧会の実施を中心に担当しています。日本美術といっても扱う分野はさまざまで、所属部署でも関わっている「ヴェネチア・ビエンナーレ」に代表されるような現代美術・建築のほか、デザイン、工芸などが主だったところです。展覧会を一から作るのは、膨大な事務作業と調整が伴いますが、外部の専門家、協力者の方々の知見を得ながら、一つの展覧会を作りあげていくのは興味深いプロセスだと感じています。展覧会は、数年の準備期間を要する足の長い事業なので、まだ現時点では、担当展覧会のオープンまでは見届けられていません。コツコツ毎日準備を進めているものが今後開幕し、その国の方々にどう受け止められるのか見られるのを、今から楽しみにしています。
ほかにも、日本美術を紹介する海外での展覧会を支援したり、日本美術の専門家を育成したりするための助成事業も行っています。書類を通してであれ、海外の美術館や専門家が、現在どのような日本美術に感心を持っているのか知ることができるのは純粋に面白く、勉強になっています。
国際文化交流の現場の最前線で、ほかの職業ではなかなか経験できない場面に立ち会えることではないかと思います。対象となる国の人の心に「刺さる」日本文化紹介事業・文化交流事業は何だろうと、同僚と唸りながら考え、外部の専門家と協力し、一緒に事業を作っていくという仕事は、なかなか他では探すことができないと思います。また、その過程でさまざまな文化人・有識者の方々にお目にかかる機会もあります。もちろん、その背後には膨大な事務作業があることを忘れてはなりませんが、そうした場面に少しでも立ち会うことができるということは、魅力的だと思います。
パリ駐在中に迎えたコロナ禍で、オンライン事業として同僚とポッドキャスト番組を制作したことです。当時担当していた日本研究・知的交流支援事業の一環として行ったもので、アカデミックな世界にとどまりがちな日本研究者の活動・研究内容を、一般聴衆向けにアレンジし、紹介できないかと考えました。初めての本格的なオンライン展開だったため、初めて直面する課題が多くありましたが、同僚も夏のバカンス先から仕事をしてくれたり、技術担当のスタッフが親身に相談にのってくれたりして、最終的にiTunesにアップロードされたときには感動しました。
私の駐在の最後の1年にあたる2020年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、パリでも厳格な都市封鎖を余儀なくされました。その反面、事務所内では逆に前向きな、建設的な議論が増えたように感じ、他部署のスタッフを交え、オープンスペースでディスカッションを繰り返した毎日は刺激的でした。その時同僚が、「良いものを作るには、フランス人の視点も日本人の視点も必要」といった趣旨のことを話していたのですが、この言葉は印象的な思い出の一つです。振り返れば、海外勤務自体が貴重な経験であり、現地に馴染み、多様な考え・経験を共有し、理解しあうことは、職業人としてだけでなく、個人としても、豊かな成長の機会であったと感じています。
現在の部署も学ぶことが多く、目の前の課題解決に奔走する日々ですが、いずれはまた欧州の現場に戻ることができたらとぼんやり考えています。そのためにも、毎日の暮らしは大切にしつつ、仕事のためにも、自分のためにもなるようなインプットをこれからも続けていきたいと思います。