
日本語国際センターでは、2014年9月21日(日曜日)、大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所との共催事業として第8回NINJALフォーラム「世界の漢字教育—日本語漢字をまなぶ—」を開催しました(登壇者とプログラム詳細は、こちらをご覧ください)。
日本語を第二言語として学ぶ学習者にとって、漢字の習得は常に大きな課題となっており、それは非漢字圏の学習者だけではなく、日本語の漢字の形、読み方、用法などが異なる漢字圏の学習者にとっても同様のことだと言えます。
加納千恵子氏(筑波大学)の基調講演では漢字の数、形、音、使用方法が学習者の理解を困難にしている一方、漢字が持つ情報をうまく使い、ゲームをしながら学習をする面白さもあると紹介をしました。また、今後学習者が孤独に行う「覚える」という作業から、使える「ことば」として漢字を理解するまでどのようにサポートできるかが学習支援をする教師の役割となるだろうと説明しました。
その後には、林立萍氏(台湾)、フランチェスカ・ヴェントゥーラ氏(フィリピン)、プラシャント・パルデシ氏(インド)、ガリーナ・ヴォロビヨワ氏(キルギス)、アルド・トリーニ氏(イタリア)らが、それぞれの国で日本語がどのように必要とされているのか、学習者の漢字に対する向き合い方などを説明し、自らが学習者としてどのように漢字を学び、指導してきたのかについて報告をしました。また、その後に行われたパネルディスカッションでも過去の経験から得た学習法の提案や実践について発表し、漢字教育の問題点や解決方法について議論しました。
話の中には、形や意味が異なっていても漢字圏の台湾では漢字のクラスがなく、ほぼ自主学習という状態になっていることや、レベルの高い日本語が自らの仕事に大きく影響するが、漢字習得で躓いてしまう教師が多いためレベルの高い人材を育成できていないというフィリピンの深刻な問題が取り上げられました。また、プラシャント氏は自らの経験を元に、「漢字は練習して覚えるほか方法はない」と、いかに漢字学習が非漢字圏の学習者にとって困難かを説明し、ガリーナ氏は自らの執筆『漢字物語』を例に問題点の改善方法をわかりやすく報告しました。最後のアルド・トリーニ氏の発表では、漢字教育は文章の中から熟語をとらえる「読解能力」と密接な関係にあり、日本語を読む上で必要不可欠な能力であることを説明しました。
410名が参加し、会場となった一橋講堂ホールは満席となりました。共催者である国立国語研究所事務局並びにご協力をいただいたJSL漢字学習研究会にこの場をかりまして厚く御礼申し上げます。
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