日本語教育ニュース 日本語教育の専門図書館 国際交流基金日本語国際センター図書館

日本語教育ニュース
このコーナーでは、国際交流基金の行う日本語教育事業の中から、海外の日本語教育関係者から関心の高いことがらについて最新情報を紹介します。

2024年3月
国際交流基金日本語国際センター図書館

日本語教育通信の読者のなかで、国際交流基金日本語国際センター(埼玉県さいたま市)に「誰でも利用できる日本語教育の専門図書館がある」ということをご存知の方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。

国際交流基金日本語国際センター図書館は、世界で唯一の日本語教育の専門図書館です。ぜひこの機会に、日本語教育にたずさわる方、また少しでも日本語教育に関心がある方に、国際交流基金日本語国際センター図書館のことを知って役立てていただければと思います。また、本ニュースの後半では、図書館に来館しなくても活用できる、インターネットで公開している当館の蔵書検索を使った日本語教材の調べ方のヒントをご紹介します。

1. 世界に一つだけの日本語教育の専門図書館

国際交流基金日本語国際センター図書館は、日本語国際センター設立と時を同じくして平成元年(1989年)に開館しました。日本語国際センターの2階に位置し、蔵書冊数は約5万冊です。図書館の大きな窓からは中庭がよく見え、四季の移り変わりを楽しむことができます。

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当館は世界約80か国・地域の日本語教材と、日本語教育分野を中心に日本語学、言語学、日本事情、外国語教育などの資料を収集・提供しています。当館が図書館として最もユニークな点は、やはり、日本国内外で制作された数多くの日本語教材を取り揃えていることです。日本語国際センターの研修に参加した海外の日本語教師から「こんなにたくさんの日本語の教科書がそろっているところを見たのは初めてです。ここは天国のようです」という感想を寄せられたことがあります。

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当館では日本国内で出版される日本語教材はほぼ網羅的に収集しています。日本国内で購入できない資料は国際交流基金(JF)の海外事務所に協力を依頼して入手することもあります。また大変ありがたいことに、出版社や自治体などさまざまな団体や個人の方から制作した日本語教材を寄贈いただくこともあります。海外からの寄贈も少なくなく、日本国内の図書館では当館にしかないという貴重な資料も数多くあります。所蔵している資料は蔵書検索を利用して調べることができます注1

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図書館は一般に公開しており、資料の閲覧、複写サービスはどなたでも利用できます。資料の貸出サービスは「日本語教育関係者で、日本在住の方あるいは登録日より3か月以上日本に滞在する方」が利用登録できます。関東地方在住の方の利用登録が多いですが、利用登録の条件に日本国内での居住地による制限はありませんので、遠方にお住まいの方が来館して利用登録後、借りた資料は後日郵送で返却する、といった形で利用されることもあります。貸出サービスは主に日本語教師やボランティアで日本語を教えている方、日本語教育を専攻する学生や研究者などに利用されています。

当館では日本国内の公共図書館や大学図書館などを通じた文献貸借サービスも行っています。当館への来館が難しい場合、お近くの図書館に文献複写や資料を取り寄せて利用することができます(取り寄せた資料は図書館内での利用となります)。文献貸借サービスはどなたでも利用できますので、ご希望の方はまずはお近くの図書館にご相談ください。

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当館の利用は、日本語教師の方が授業づくりのために日本語教材を比較検討したり日本語教授法の資料を参照したりというケースが最も多いですが、そのほかにも研究者や学生の方が論文執筆のために日本語教育関係の学術雑誌や紀要から論文を複写したり、海外で発行された日本語の教科書を分析したり、日本語教材の内容の変遷を調査したりなど、さまざまな目的で利用されています。また、日本語国際センターでは海外の日本語教師を日本に招へいする教師研修を行っており、図書館も多くの研修参加者に利用されています。研修のプロジェクトワークのための資料を探しにグループで訪れたり、研修後の自由時間に課題や自習に取り組む様子は、専門図書館というよりも大学や学校に付属している図書館のような、なごやかな雰囲気を感じます。

2. 日本語教育に役立つ蔵書検索の活用法

ここでは、これまでに当館に寄せられた問い合わせから4つの事例を取り上げて、当館の蔵書検索を使った日本語教材の調べ方をご紹介します。

蔵書検索を使うとき、まずはトップページにある「通常検索」の検索ボックスに本のタイトルやキーワードなどを入力して検索することが多いと思います。今回は、複数の検索項目を掛け合わせたり特定の条件を指定した検索ができる「詳細検索」の機能を使った検索方法をご案内します。

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質問(1)「発音について教えるときに参考になる資料はあるか」

回答:「詳細検索」で、「キーワード」と「日本語教材」コードを掛け合わせて検索することで、当館で所蔵している「発音についての教師用の日本語教材」が検索できます。

手順1:「キーワード」の指定

「キーワード」の検索ボックスに“発音”と入力します。

手順2:「日本語教材」コードの選択

「日本語教材」のプルダウンメニューから[教師向け(日本語国際センター図書館)]を選択し、[検索する]をクリックします。

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検索のポイント

「詳細検索」で資料をテーマから検索したいときは、「キーワード」の検索ボックスを使うのがおすすめです。「キーワード」の検索ボックスは、タイトルだけではなく件名も検索対象です。件名とは「図書資料の主題(subject)を簡潔なことばで表したもの」注2で、タイトルに含まれていることばではなく資料に書かれている内容の主題から探すことができる検索項目です。そのため、『日本語教師のためのシャドーイング指導』といった書名の資料は、「タイトル」の検索ボックスに“発音”と入力した場合にはヒットしませんが、「キーワード」の検索ボックスに入力した場合には件名が一致することでヒットします。

また、当館では資料の目録データを作成する際、独自に「日本語教材」コードを付与し、「学習者向けの日本語教材」と「教師向けの日本語教材」を区別して検索できるようにしています。「詳細検索」の「日本語教材」のプルダウンメニューから[教師向け(日本語国際センター図書館)] を選択することで、 「発音について書かれた教師向けの日本語教材」のみを検索することができます。また「日本語教材」のプルダウンメニューから[学習者向け(日本語国際センター図書館)]を選択した場合には、「発音について書かれた学習者向けの日本語教材」を検索することができます。

質問(2)「タイ語で書かれた日本語の教材はあるか」

回答:「詳細検索」で、「言語」コードと「日本語教材」コードを掛け合わせて検索することで、当館で所蔵している「タイ語で書かれた日本語の教材」を検索できます。

手順1:「言語コード」の選択

「言語」の検索ボックスの右側にある[言語表]をクリックし、[T]をクリックして開き、[tha Thai タイ語]をクリックします。

手順2:「日本語教材」コードの選択

「日本語教材」のプルダウンメニューから[学習者向け(日本語国際センター図書館)]を選択し、[検索する]をクリックします。

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検索のポイント

「~~語で書かれた日本語の教材はあるか」という問い合わせは、当館で受ける最もよくある質問のひとつです。「言語」の検索ボックスに入力する言語コードを変更することで、ほかの言語についても同様に検索できます。言語コードは、「詳細検索」の[言語表]から対象の言語を探してクリックするか、アルファベット3文字の言語コードを直接入力することでも検索できます注3

質問(3)「オーストラリアで発行された日本語の教材はあるか」

回答:「詳細検索」で、「発行国/地域」コードと「日本語教材」コードを掛け合わせて検索することで、当館で所蔵している「オーストラリアで発行された日本語の教材」を検索できます。

手順1:「発行国/地域」の選択

「発行国/地域(日本語国際センター図書館資料のみ)」のプルダウンメニューから「オーストラリア」を選択します。

手順2:「日本語教材」コードの選択

「日本語教材」のプルダウンメニューから[学習者向け(日本語国際センター図書館)]を選択し、[検索する]をクリックします。

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検索のポイント

質問(2)の言語別の日本語教材の問い合わせとともに、発行した国・地域別の日本語教材についても、よく質問を受けます。「発行国/地域」で選択するコードを変更することで、ほかの国・地域についても同様に検索することができます注4

質問(4)「『JF日本語教育スタンダード』に準拠した教材はあるか」

回答:「通常検索」の検索ボックス(または「詳細検索」の「キーワード」の検索ボックス)に“JF日本語教育スタンダード活用教材”と入力することで検索できます。

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検索のポイント

当館では資料の目録データを作成する際、独自に“JF日本語教育スタンダード活用教材”という件名を付与しており、JF日本語教育スタンダードに準拠した教材を検索することができます。また、“JF日本語教育スタンダード関連資料”と入力して検索した場合、JF日本語教育スタンダードのガイドブックなどの参考資料を検索することができます。“JF日本語教育スタンダード”と入力した場合は、教材と参考資料の両方を検索できます。

ここでご紹介した蔵書検索の機能を活用して検索することで、今までとは違った切り口で日本語教材を探すヒントになるかもしれません。

3. おわりに

当館は開館以来30年以上に渡ってさまざまな日本語教材の収集を続けてきました。日本語教育界全体の財産ともいえるこれらの資料を保存・提供していくことで、国際交流基金日本語国際センター図書館が今後の日本語教育の発展に寄与できることを願っています。ぜひ、ご利用をお待ちしています。

注:
  1. 1.国際交流基金図書館 蔵書検索(OPAC)
    国際交流基金(JF)の日本国内にある図書館3館の共通の蔵書検索システムです。来館される前に、お求めの資料の検索結果詳細の「所在」を確認し、所蔵館が国際交流基金ライブラリー(東京)、関西国際センター図書館(大阪)、日本語国際センター図書館(埼玉)のいずれであるかを必ずご確認ください。3館では相互に資料の取り寄せサービスも行っています。
  2. 2.日本図書館協会用語委員会(2013)『図書館用語集』4訂版, 日本図書館協会, p76.
  3. 3.国立情報学研究所目録所在情報サービス「目録システムコーディングマニュアル(CAT2020対応版)付録1.3 言語コード表
  4. 4.国立情報学研究所目録所在情報サービス「目録システムコーディングマニュアル(CAT2020対応版)付録1.2 出版国コード表
    蔵書検索の「発行国/地域」のプルダウンメニューは、出版国コードの2文字のアルファベット順で排列しています。

(雨宮あずさ/日本語国際センター図書館専任司書)

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