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理事長からのごあいさつ

梅本和義理事長の写真国際交流基金(JF)は2022年に設立50周年の節目を迎えることができました。

新型コロナウイルス感染症の流行が一定の落ち着きを見せ始め、世界的にウィズ・コロナやアフター・コロナといったフェーズへの移行が少しずつ進んだ1年でした。JFとしても、「文化・言語・対話」の三つの分野で、人の往来を伴う事業を本格的に再開でき、「リアル」だからこその意義を改めて実感するとともに、コロナ禍の経験を踏まえた新たな事業の在り方についてもさまざまな示唆を得る年になりました。

国際交流基金賞は3年ぶりに対面にて授賞式を開催しました。式典には秋篠宮皇嗣同妃両殿下のご臨席を賜り、秋篠宮皇嗣殿下からは「今後の国際社会において文化交流がますます必要となる中で、国際交流基金の役割も今まで以上に重要なものになっていく」との励ましのお言葉を賜りました。

また、設立50周年を記念して、特設ウェブサイト「世界との絆を紡いで50年 そして未来へ」を開設しました。この記念サイトでは、JFがこれまで取り組んでまいりました主な活動や、世界各地の国際文化交流の第一線でご活躍されている関係者の方々の記事を掲載しています。ぜひ一度、このサイトをご覧いただき、国際文化交流の半世紀を振り返っていただければ幸いに存じます。

2022年度は、コロナ禍での経験や蓄積も生かして、各分野でさまざまな事業を再開しました。「文化」の分野では、日本の多様な芸術や文化を多言語字幕付きで紹介する動画ポータルサイトを新設したほか、海外のキュレーター招へいや国際図書展への専門家派遣等、コロナ禍で中断していた対面による人的交流事業も多く実施しました。また、日本映画上映事業においても、オンサイトとオンラインを効果的に組み合わせたハイブリッドな取り組みを加速させ、世界各地で観客の輪を広げました。「言語」の分野では、「2021年度海外日本語教育機関調査」の結果を11月に発表し、141の国・地域、1万8000を超える教育機関で、379万人以上の方が日本語を学習していること、また、多様な学習目的・理由について確認しました。「対話」の分野では、ゲーテ・インスティトゥート、ブリティッシュ・カウンシルとの共催により国際シンポジウム「不確実な時代の国際文化交流:日・独・英の現場から」を実施し、各機関の代表や関係分野の専門家が各々の経験や実践を織り交ぜながら文化交流の新たな可能性や将来像について議論を深めました。また、東南アジアと日本を代表する知識人や次世代の有識者が一堂に会し、次の半世紀に向けた新たな日本-ASEAN関係についてさまざまな論点から議論する国際シンポジウムを東京で開催しました。

2023年は日本ASEAN友好協力50周年記念に当たる年ですが、JFが2014年から2021年にかけて実施した「文化の WA(和・環・輪)プロジェクト~知り合うアジア~」の果実や、周年の盛り上がりを十分に生かしながら、日・ASEAN関係の一層の発展に寄与できるよう、魅力ある文化交流事業を実施していく所存です。さらに、次の50年においても更なる飛躍を果たせるよう、今後とも全世界で時流・時機を捉えた活動を展開してまいります。引き続き、ご理解・ご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

2023年10月
独立行政法人国際交流基金(JF) 理事長 梅本 和義