国際交流基金の事業
言語[海外における日本語教育]
海外における日本語教授法及び日本語学習者の能力評価の充実
日本語普及のため、新たな教授法や学習素材の提供、日本語学習者のための日本語能力試験(JLPT)及び外国人材受入れのための国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の実施、日本語教育に関する調査等の事業を行いました。
日本語教授法に関する情報発信と学習素材の提供
「JF日本語教育スタンダード」は、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)の考え方に基づいてJFが開発した、日本語の学び方、教え方、評価の仕方を考えるための枠組みです。その準拠教材として、『まるごと 日本のことばと文化』については、中国・エジプトで新たなレベルの出版、「まるごとサイト」で提供するサポート教材等の多言語化を、『いろどり 生活の日本語』についてはコンテンツの拡充をそれぞれ進めました。また、日本語学習番組『ひきだすにほんご Activate Your Japanese!』(2021年度、NHKエデュケーショナルとの共同制作)を教材として活用するための新ウェブサイトを公開しました。新サイトでは、番組をコーナーごとに切り分けた動画、多言語字幕、ダウンロード資料等授業や自習に役立つ内容のほか、ウェブサイト限定動画も配信しています。
「ひきだすにほんご Activate Your Japanese! コンテンツライブラリー」サイトトップ
2022年度に出版した『まるごと』
左:「初中級」(中国版) 右:「入門」りかい(エジプト版)
eラーニングの開発・運営
日本語学習プラットフォーム「JFにほんごeラーニング みなと」の年間受講者数は189か国・地域の約14万3000人に上りました。オンライン教育に対する需要の高まりに応え、「まるごと日本語オンラインコース」初中級(A2B1)コースの追加等コンテンツの拡充を行いました。また、新たに日本語教師向けのオンラインコースを開講しました。
日本語学習プラットフォーム「JFにほんごeラーニング みなと」トップページ 開講コース(一部)
海外日本語教育機関調査
海外の日本語教育の現状を把握するため、3年に一度「海外日本語教育機関調査」を全世界で実施。コロナ禍で行った2021年度調査の結果を記者発表したほか、報告書、各種集計表、「日本語教育機関検索サイト」をJFウェブページで公表しました。初めてオンライン授業の実施状況を調査し、世界全体で6割を超える機関における実施が確認できました。
2021年度「海外日本語教育機関調査」結果概要記者発表の様子
日本語能力評価のための試験の実施
日本語能力試験(JLPT)は、日本語を母語としない日本語学習者を対象として1984年から実施されている世界最大規模の試験です。2022年度は新型コロナウイルス感染症の影響からの回復の兆しが見え、7月試験はレスター(イギリス)・ジッダ(サウジアラビア)及びアグアスカリエンテス(メキシコ)で新規に実施し、海外52か国141都市で約26万8000人が応募、21万5000人が受験しました。12月試験はウボンラチャタニ(タイ)・キシナウ(モルドバ)・バンクーバー(カナダ)・モントレーベイ(米国)及びリヤド(サウジアラビア)で新規に実施し、海外81か国193都市で29万3000人が応募、24万1000人が受験しました。
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)は、主に就労のために来日する外国人が遭遇する、生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力の測定を目的としたコンピューターテストで、2019年に開始しました。2022年度は新たにバングラデシュでテストを開始し、アジアの11か国19都市及び日本国内で約4万7000人(前年度約3万600人)が受験しました。
2022年度より新規に実施されたリヤド(サウジアラビア)での日本語能力試験(JLPT)
JFT-Basic 受験者インタビュー動画
外国人材受入れのための日本語教育事業
日本での生活・就労を目指す人々の日本語能力習得を支援する取り組みをインドネシア、フィリピンをはじめとするアジア9か国で実施しました。ウェブ教材『いろどり 生活の日本語』は新たに5言語を加え計16言語となり、年間約298万件のアクセスがありました。また、同教材をもとに開発した「いろどり日本語オンラインコース」は、入門(A1)コースの日本語・英語版、初級1・初級2(A2)コースの8言語版を新たに公開しました。各国では、日本語専門家と生活日本語コーディネーターが教材の紹介や教授法セミナー等を行いました。
『いろどり 生活の日本語』フライヤー
送り出し機関での聞き取り調査(タイ)
関西国際センター設立25周年
関西国際センターは、2022年に設立25周年を迎えました。式典では、過去の研修修了者であるアレクサンドラ・コヴァチュ駐日セルビア大使をお招きし、研修で得られた知見等をお話しいただきました。
また、2023年3月には、外国人材の受け入れ・共生のための日本語教育支援をテーマに、各国でのJFの取り組みや制作教材等のリソースを共有、紹介し、日本国内の日本語教育支援への活用について考える記念シンポジウムをオンラインで開催しました。
コヴァチュ駐日大使(中央)を囲む外交官・公務員研修参加者