The JAPAN FOUNDATION friends of the world 世界のJF仲間

「日本舞踊」パリ公演で踊る、坂東はつ花さんの写真(C)KOS-CREA
日本国旗

日本 → フランス

坂東 はつ花さん

異国の文化に真摯に向き合う心に感動

日本とフランスの両国が連携し、芸術の都フランス・パリを中心に“世界にまだ知られていない日本文化の魅力”を紹介する大規模な複合型文化芸術イベント「ジャポニスム 2018: 響きあう魂」。その一環として「日本舞踊」パリ公演を行った。人間国宝・井上八千代氏や富山清琴氏らとともに出演者の一人として参加した日本舞踊家の坂東はつ花さんに、公演時の観客の反応や、異国の地で日本舞踊を披露したことで感じた文化交流への想いなどのお話を聞いた。

憧れのフランスでの公演

「まず、パリ公演に参加できるとご連絡いただいた時は、憧れのフランスで踊るということに興奮と喜びを覚えましたが、ご一緒させていただく先生方や公演の概要を知るうちに、これは大変なことにお声をかけていただいたんだと、有難い気持ちと緊張で身の引き締まる思いをしたことを覚えております。出発まではとにかく怪我をせず、体調を整えてご迷惑のないようにと心がけておりました。

そして迎えた出発の日、本当に私的な思い出ですが、海外公演に向かうのに、自分の身の回りの荷物だけで飛行機に乗り込める有難さをひしと感じました。数少ないですが今まで私が経験した海外公演では、自分の鬘(かつら)や衣裳、小道具、ある時は松羽目まで自分たちの手荷物で運ぶというものでした。検査場では、鬘箱を横にされそうになったり、道具を出させられて説明させられたり……その苦労をしっかり段取ってくださって、サポートしてくださる方々がいることに、本当に有難さを感じました。

現地のシテ・ド・ラ・ミュージック-フィルハーモニー・ド・パリでの公演では、国際交流基金やスタッフの方々のサポートが手厚く、劇場入りすれば、ここは日本なのかと思うくらい過ごしやすい環境でした。楽屋弁当も美味しい和食で、飲み物も緑茶が提供され、微塵のストレスもなく舞台に集中することができました。」

『連獅子』にて胡蝶を演じた、坂東はつ花さんの写真(C)KOS-CREA
『連獅子』にて胡蝶を演じた、坂東はつ花さん(前列右から二番目)

割れんばかりの拍手を受けたカーテンコール。異国の文化に真摯に向き合う心に感動

「本番を経験して一番印象深かったのは、カーテンコールでした。公演初日、踊っている時は、満席の客席から、なにか冷んやりした風を感じるような静寂で、やはりフランス、芸術にとても厳しいんだ……と不安になりつつも、観客の表情を確認する余裕などなく、必死に踊りました。そしてカーテンコール、さっきまでの静寂が嘘のように、みなさん立ち上がり割れんばかりの拍手をくださり、一階席二階席かかわらず、まるで身内が観にきてくれたかのように満面の笑みでこちらに手を振ってくださっていました。フランスの方は、芸術に慣れ親しみ、異国のものでもそれを理解し感じようと真摯に向き合う温かな心を持っているんだと、とても感動したのを今でも昨日のことのように思い出します。

舞台での貴重な経験もさることながら、海外公演ならではの劇場外での経験も、私にとってはとても有意義なものでした。中世の頃の歴史に思いを馳せながら素敵な街並みを歩いて、ふと周りを見ると日本とは違い様々な人種の人たちで溢れていて、もしかしたら日本人の自分もこの街に溶け込めているのではないかと錯覚してしまう感覚を味わいました。しかし、どの国であっても当然のことですが、美しいものばかりではなく暗い場面を目にすることも度々でした。長く歴史のある国が、どのような道を辿って今のようにあるのだろう……と、興味をかきたてられました。

そして、出国から帰国まで、お流儀も違い普段では長くご一緒させていただける機会のない、井上八千代先生や富山清琴先生をはじめとする方々と過ごさせていただいた時間も、何よりの経験でした。先生方のお舞台に向き合われるお姿を間近で拝見でき、尊敬の思いは大きくなりました。お舞台以外ではいつでもどなたにでも気さくに優しく接していらっしゃる先生方を見て、しがない私ごときですが、全く違う境遇や立場にあっても、先生方をお手本としていきたいと思いました。」

大舞台での公演の閉幕の写真 (C)KOS-CREA
大舞台での公演は大喝采で幕を閉じた

日本舞踊を入り口として、自国に興味をもってもらう。公演での手応えで再確認

「パリ公演を通して、日本舞踊を他国で紹介するということは、日本舞踊の素晴らしさを知っていただくこともさることながら、そこからもっと広く日本の国や文化、歴史までにも興味を持ってもらうことに繋がるんだと、旅を通して身を以て再確認しました。この素晴らしい公演に参加させていただけたことで、自国と他国の文化や芸術をまた新たな目、心で感じられると思います。このような貴重な経験ができる機会が今後またありますよう、心から願うばかりです。」

2019年4月

  • ジャポニスム2018 日本舞踊公演
坂東はつ花さんの写真
Profile
坂東 はつ花(ばんどう はつはな)/日本舞踊家。1981年高知県出身、2003年東京藝術大学音楽学部邦楽科を卒業。2015年各流派新春舞踊大会会長賞受賞。国内外の公演やTV番組など、様々な公演に出演。

一覧に戻る