派遣1年目を終えて

サン・ディエギート・ハイ・スクール・アカデミー
日暮 康晴

カリフォルニア州について

2016年現在でおよそ3,925万人、全米50州の中でも最大の人口を抱えるカリフォルニア州は、その面積も423,970 平方キロメートル(日本のおよそ1.1倍)と大きく、州都サクラメントの他にもロサンゼルス、サンディエゴ、サンフランシスコなどの大都市を擁しています。日本との交流の歴史は長く、開国後初の遣米使節団である万延元年(西暦1860年)遣米使節の記録にもサンフランシスコがアメリカ本土初の寄港地として記されています。現在では、ロサンゼルスのリトルトーキョーに代表されるような大きな日系コミュニティが各地にあるだけでなく、日系スーパーや日本料理レストランも至る所に見られ、日常の中で「日本」に触れる機会はかなり多く感じます。日本語学習・教育も盛んで、日本語学習者数は約41,000人、日本語教師数は約1,000人(いずれも2015年国際交流基金調べ)と、どちらも全米一の数字を誇ります。継承語として日本語を学習するという学習者も少なくありませんが、その他にもアニメ・マンガなどのポップカルチャーをはじめとする日本文化への興味、日本企業への就職、日本での就学・就職なども学習動機・目標としてあるようです。

San Dieguito High School Academy

派遣校のSan Dieguito High School Academy は、カリフォルニア州南部エンシニータス(Encinitas)市にある4年制の公立高校です。日本語のクラスとしてはレベル1から5、それとAdvanced Placement テスト向けのクラスが開講されており、1,600人の全校生徒のうち100人ほどが履修しています。授業は基本的に市販の教科書やオリジナルのワークブックを用いて進められますが、その他にも授業の内容に応じたプロジェクトやビデオスキット作り、他にも多読やオンラインのデジタルポートフォリオなど、多種多様な活動を行っています。自分のアシスタントティーチャー(以下、AT)としての業務は主に授業内でのゲームの進行、会話練習時のモデル、テストや宿題のチェックなどですが、最近では少しずつではありますが授業の進行をリードティーチャー(以下、LT)に任せて貰える機会も増えてきました。前に立って授業を主導していると、LTの後ろでアシスタントとして携わっている時とは授業の見え方も変わります。また、授業以外にも日本語を学ぶ生徒で構成された活動団体であるJapanese National Honor Society(以下、JNHS)の校内イベントの運営やブース出展等の活動にもできるだけ参加するようにしており、その際には、授業時とはまた異なった学生との姿に触れることができます。

校外での活動

大きな活動として、受入機関と同学区内の2つの中学校で行った放課後の日本語・日本文化クラスがあります。1校では他の高校の日本語教員とペアで、もう1校では自分1人でクラスの計画・実施を行いました。どちらも週1回希望者向けのクラスで、毎回10~15人程度の中学生が参加してくれました。内容は大きく日本語と日本文化の2つに分かれ、日本語に関しては表現や文法、単語などの紹介・練習、日本文化に関してはひな祭りやこどもの日などといったその時々の季節のイベントや、日本の新幹線や自動販売機、マンガなど中学生の興味のある内容についての紹介・体験を行いました。中学校での希望者だけのクラスということで派遣校でのATとしての活動とは勝手が違い、毎回悩むことも少なくありませんでしたが、その分学ぶことも非常に多くありました。また、どちらのクラスにも高校で日本語を学習している学生が会話練習の補助や文化についての発表の手伝いをしてくれました。中学生と高校生の交流の場にもなり、高校生にとっても色々なことを学ぶ機会になったようです。他にも、派遣校のJNHSによるビーチでのゴミ拾いや市のパレードへの参加の手伝い、市立図書館で開催された日本祭の手伝いなどの活動にも加わりました。

派遣1年目を終えて、そして2年目へ向けて

1年目のアメリカ生活を通して強く感じたのが、失敗を恐れないでとにかく挑戦してみる姿勢、自他に関わらず物事を前向きに捉える明るい姿勢が人々の間で共有されていることです。そういった環境の中で育っていく学生たちの姿を眺めていると羨ましくもあり、一方で自分もまた、ATという立場ではありますが、この子達を育て、導く側の人間であるという事実に身が引き締まる思いもします。また、学生の創造力や表現力には未だ毎日のように驚かされています。いかに学生たちの長所を活かし、伸ばすことのできる授業づくりに貢献できるかというのは、2年目の課題の大きな1つです。加えて、州内各地で催された様々な日本語教師会・外国語教師会にも参加でき、その度に米国内各地の先生方から様々なことを学ぶことができました。自らの学びを進めつつ、それをいかに派遣校でのATとしての業務の中に還元していくことができるかというのも派遣2年目の課題として感じています。
  学生、LT、周りの方々と、色々な人との関わり合いを通じて、気付くこと・学ぶことに溢れた、非常に実りある1年間でした。そんな中で、時間はあっという間に過ぎ去っていったような気がします。これからの1年は「次はない1年」になります。自分と、自分に関わるすべての人にとって有意義な派遣2年目にできたらと思います。

  • 派遣先での写真1
  • 派遣先での写真2
  • 派遣先での写真3
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