理事長挨拶

新年あけましておめでとうございます。
平素は国際交流基金の活動に関し、温かいご支援とご理解を賜り、心より御礼申し上げます。
昨年は円安の影響も追い風となり、訪日外国人の伸び率は目覚ましく、過去最高の4000万人を上回る実績となる模様です。興味深いことに、訪日への関心は単なる観光にとどまらず、特に文化体験への志向が強まっている傾向があります。世界中の方々が日本文化の多様性を楽しむだけでなく、それぞれの趣味嗜好に応じた文化の奥深さを探求する動きが広がりをみせる等、日本文化が訪日外国人を魅了し続けていることを実感するたびに、喜びを感じます。また、世界的マンガ・アニメブームの後押しもあり、日本国外での教育機関における日本語学習者は大台の400万人を超えました。国際交流基金として半世紀以上に亘り、日本文化を世界に伝え、友好の絆を育んできたことで、こうした状況に少なからず寄与させて頂いていることを大変光栄に感じています。
一方、国際情勢に目を向けると、昨年来分断社会の傾向が強まったり、終息が見えないロシアのウクライナ侵攻や中東地域の紛争はじめ、その他地域でも力による現状変更が行われようとしていたり、依然として不安定な状況が続いています。また、直近では日中関係の縺れが露呈する等、日本自らも混沌とする世界情勢の安定化や、新たな秩序形成に向けて、主体的に対処することが、より一層求められてきているのではないでしょうか。このような状況の中、国家安全保障の枠組みにおいて、各国とも兎角ハードパワーの重要性がクローズアップされがちなことを憂慮しています。未然にコンフリクトを防ぎ、混沌とする国際社会での平和を追求する意味において、人的交流や文化交流といったソフトパワーが果たす役割は、持続的な平和と安定を担保する上で、より大きな意味をもたらすものとして、今後位置づけられるべきだと、私たちは考えています。
人的交流や文化交流は、人々の相互理解を深め、緊張を緩和し、平和で安定した国際関係を築く基盤です。私たちはそうした活動を通じ、異文化に対して尊敬の念をもって接し、「共感」を育みながら、日本が国際社会において信頼される存在であり続けるよう努めていきたいと考えています。こうした考え方に伴い、これからも海外での日本文化紹介、日本語教育の更なる普及とこれに連動した日本文化の理解促進を推進するほか、文化人・学術専門家等とのネットワーキングや青少年交流等、多角的に人的交流を創造し、健全な多文化共生の実現へと貢献して参る所存です。
特に、ASEAN諸国との中長期的なプロジェクト「次世代共創パートナーシップ-文化のWA2.0-」を所属する各国、並びにASEAN Communityと共有化し、様々な施策を通じて、関係性を深めて行きます。具体的には、ASEANを中心とするアジア各国で、日本語授業のアシスタントや日本文化の紹介を行う「日本語パートナーズ」の派遣を通じて、現地との絆を深める活動を継続的に強化します。また、日本とASEAN諸国の文化関係者や若手リーダーをつなぐネットワークを育み、アートや学術分野等における共同制作や対話を促進のうえ、「共創」が実感できる環境づくりに努めます。
長年の良好な友好関係を持つアメリカについては、知的交流や草の根交流のネットワークをさらに強化し、次世代へとその絆を引き継ぐ役割を果たして参ります。加えて、グローバルサウス諸国への投資を加速し、日本語教育の普及、文化交流の機会創出、国際対話による新たなパートナーシップの枠組み形成に努めます。この他、育成就労制度を見据えた日本語教育の更なる推進、日本語試験の改善に向けた開発、10年以上に亘り構築してきた日本語パートナーズ経験者ネットワークの有効活用による多文化共生社会への貢献等、将来的社会的要請に応えるべく、様々なチャレンジを行っていく所存です。更には、外交的節目を迎える諸外国とは、引き続き強固な友好関係づくりを目指して諸施策を講じて行きます。
国際交流基金として、これまで国際社会の中で、日本の平和が維持されてきたことに対する感謝の気持ちを胸に、変化する世界情勢に対応しながら、今後とも日本と異文化との信頼を育み、未来志向で希望を共有できる価値あるパートナーづくりに向けて、世界中の関係機関と連携して取り組んで参ります。
本年もよろしくお願い申し上げます。