本文へ

2017年度 事業概況

国際交流基金は、2017年度も文化・言語・対話の3つの柱を中心に、さまざまな事業を展開しました。

マレーシアでの能楽公演の写真 Photo:Ch'ng Shi P'ng

[文化]文化芸術交流

日中国交正常化45周年、日本スペイン外交関係樹立150周年、日本・インド文化協定発効60周年、日本人キューバ移住120周年などの外交上重要な機会をとらえ、現地のニーズを踏まえながら、伝統芸能から現代美術、ダンス、映画まで多彩な日本の魅力を発信する大型の文化事業を実施しました。

また、2018年度にフランスで開催する大規模な日本文化行事「ジャポニスム2018」の実施に向けて、展覧会、舞台公演、映像、生活文化などさまざまな分野において60を超える公式企画の準備に本格的に取り組んだほか、事前企画としてポンピドゥ・センター・メッスで日本の現代建築と現代美術をテーマにした2つの展覧会を開催し、19万人余りの来場者を得て、好評を博しました。

さらに、巡回展や映画上映会の実施、国際図書展への参加、放送コンテンツ等海外展開支援事業による海外の放送局へのテレビ番組等の提供など、機動的な文化事業を幅広い地域で実施することで、世界各地の人々に日本の文化に親しんでいただく取り組みを行いました。

日中交流センターでは、「中国高校生長期招へい事業」により、延べ61人の中国人高校生を11か月間日本に招へいしたほか、中国の青少年を対象とした対日理解と交流の拠点となる「ふれあいの場」が陝西省と貴州省に新規開設され、中国全土で合計15か所となりました。

関西国際センターの専門日本語研修の写真

[言語]海外における日本語教育

アジアや欧州等の地域を中心とした中等教育レベルでの日本語教育拡充に向けた働きかけと世界の日本語教育機関の活動とネットワーク化を支援する取り組みを2017年度も継続して行いました。カリキュラムや教材作成の助言、現地教師の育成、日本語授業の支援を目的とし、日本語専門家を41か国120ポスト、米国を対象とした若手日本語教員(J-LEAP)を20人派遣し、各国の日本語教育の充実を図りました。

また、JF日本語教育スタンダード準拠教材『まるごと 日本のことばと文化』の「中級2(B1)」を出版したほか、使用国も53か国・地域まで拡大しました。日本語学習のためのeラーニング・プラットフォーム「みなと」は、多言語化やコンテンツの拡充などユーザーの利便性向上に努めた結果、使用国数が登録者ベースで169か国・地域にまで拡大し、世界中の多くの学習者に質の高い教育を提供しています。

日本語能力試験(JLPT)の海外及び日本国内の応募者が、1984年の試験開始以来、初めて100万人を突破するなど、日本語学習への関心が高まり、学習者の裾野が広がっています。また、政策的要請への対応として、二国間経済連携協定(EPA)による看護師・介護福祉士候補者に対する来日前日本語予備教育を実施し、看護師、介護福祉士国家試験の累積合格者も着実に増加しています。

サマー・インスティチュート2017の写真

[対話]日本研究・知的交流

2017年度には、若手や次世代の育成及び国際連携の強化に重点的に取り組みました。東アジア地域初の日本研究ネットワーク組織「東アジア日本研究者協議会」への支援をはじめ、米国のアジア研究学会(AAS)の年次大会やアジア大会に際しての若手研究者への旅費支援、欧州日本研究協会(EAJS)への支援などを通じ、国・地域を越えた連携を促進しました。

一方、中国知識人招へいプログラムに参加した中国人研究者が、100万人のフォロワー数を擁する自身のミニブログに日本の司法制度や日本各地での見聞について投稿し、計800万件のアクセスを獲得するなど、中国における日本理解に大きな波及効果をもたらしました。また、2015年度に開始した「現代日本理解特別プログラム」では、米国、英国、フランス、オーストラリアの主要機関が行う現代日本に関する理解の促進と発信強化に資する事業を支援し、高い評価を受けました。さらに日米センターでは、創設以来実施している「安倍フェローシップ・プログラム」の関連企画として、過去のフェローの参加を得て、気候変動や世界貿易システムをテーマとしたグローバルフォーラムを米国3 都市で開催しました。また、トランプ政権の発足後、影響力を増している保守系有力知識人等を招へいし、日本の研究者、実務家等との意見交換や講演会を実施し、日米の知的コミュニティ間の対話を推進しました。

日本語パートナーズの授業の写真

アジアセンター

2017年度には、アジアとの新しい文化交流政策「文化のWA(和・環・輪)プロジェクト〜知り合うアジア〜」への取り組みが4年目に入り、“日本語パートナーズ”派遣事業では、約600人を東南アジア10か国及び中国、台湾に派遣しました。“日本語パートナ ーズ”は、現地の中学・高校・大学等での日本語授業を通じて約14万人の生徒とのふれあいを生み出すとともに、課外活動やイベントなどで約28万人に対して日本文化の紹介を行いました。

芸術・文化の双方向交流事業では、ASEAN設立50周年を記念して開催した展覧会「サンシャワー:東南アジアの現代美術展1980年代から現在まで」が約35万人の来場者を記録したほか、「JFFJapanese Film Festival:日本映画祭)アジア・パシフィック ゲートウェイ構想」事業では12か国36都市で日本映画祭を開催し、約12万人の観客を動員しました。また、アジアの青年リーダーのワークショップ、ストリートダンスや演劇分野での交流・共同制作、サッカーや柔道交流など、映像、舞台芸術、美術、スポーツ、知的交流、市民交流の各分野で事業を積極的に展開した結果、のべ460件以上の事業に計141万人の参加を得ることとなり、アジアと日本の文化交流を抜本的に強化するという事業目的を大きく進展させることができました。