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理事長からのごあいさつ

国際交流基金理事長 梅本和義の写真

前年度に続き、2021年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた1年となりました。このような状況の中、国際交流基金(JF)は「文化」と「言語」と「対話」を通じて日本と世界をつなぐ場を作り、人々の間に共感や信頼をはぐくむための機会を絶やすことのないよう、IT技術の活用等さまざまな工夫を模索しながら、国際文化交流事業を着実に進めて参りました。

「文化」の分野では、日本の優れた現代演劇から、ダンス・パフォーマンスや伝統芸能にわたる多彩な92の舞台公演作品を多言語字幕付きでオンライン配信する「STAGE BEYOND BORDERSSelection of Japanese Performances―」を実施し、従来なかなか鑑賞機会を得られなかった方々も含め、111か国・地域から950万回(2021年度末時点)を超える視聴アクセスを頂きました。また、世界25か国を対象に2022年2月に2週間にわたって開催した「オンライン日本映画祭2022」では、クラシックから最新作まで20作品を配信し、のべ32万人が視聴いたしました。一方、感染症対策を講じて実施したリアルな事業として、例えばドイツとポーランドでの日本美術展、ヴェネチア・ビエンナーレ建築展(イタリア)への参加に加え、海外巡回展セットを活用した展覧会等を通じ、世界の人々に直に日本文化に触れていただく機会をお届けいたしました。

「言語」の分野では、気軽に日本語を楽しんでいただけるよう「JFにほんごeラーニング みなと」にて多彩なオンラインコースを提供し、利用者登録は世界199か国・地域29万人余(2021年度末時点)に上りました。また、主に就労のために来日する外国人が遭遇する、生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力の測定を目的とする「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」を日本及び海外9か国で実施したほか、これから日本で働きながら生活することを目指す海外在住の外国人が、生活場面で必要な日本語のコミュニケーションを自習できる「いろどり日本語オンラインコース」を新たに公開いたしました。
世界で高まる日本語への関心の状況については、1974年より定期的に実施している「海外日本語教育機関調査」を通じて把握に努めており、2021年に実施した最新調査結果を2022年度中に公開する予定です。現地情勢を踏まえた調査分析報告を今後のJFの事業計画に活かすのみならず、多くの皆様にもお役立ていただき、新たな連携が生まれることを期待いたします。

「対話」の分野では、2020年度は対日理解の促進に貢献する世界各国・地域の日本研究者が、日本に滞在して研究を行うためのフェローシップの提供による支援を、コロナ禍のため一部例外を除いて中止とせざるを得ませんでした。しかしながら2021年度には研究者が日本入国に際して必要な防疫措置を取るよう丁寧なサポートを行い、150名の研究者の訪日を実施する等、各国との人的往来の再活性化に向けて動き始めております。

2022年はJFが特殊法人として設立された1972年から数えて50周年の節目となります。我が国を取り巻く国際情勢の変遷や、日進月歩の技術革新の中、文化を通して、日本と世界をもっと身近にするべく歩んできた自らの来し方を改めて振り返りつつ、混沌とする現在の国際情勢の中で、我が国への信頼や共感に裏打ちされた世界の人々との連帯の強化に貢献すべく全力を尽くしてまいる所存です。

今後とも引き続き皆様のご理解・ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2022年9月
独立行政法人国際交流基金 理事長 梅本 和義