日本語国際センターについて

専任講師の仕事

1. 教師研修の仕事

教師研修の種類

日本語国際センターでは、世界の日本語教師を対象とした様々な研修を開催しています。
研修参加者は若手の教師から経験のある教師まで、研修の種類により様々です。また研修の期間も、短期のものでは2週間、長期の研修は6ヶ月、その他には2ヶ月程度の研修など、いろいろです。そして、韓国や中国など特定の国の中等教育機関の教師を対象とした研修、基金のネットワークに参加している機関や基金の海外拠点の教師のための研修などもあります。さらに、政策研究大学院大学と連携して行っている大学院プログラムでは、現職教師の教授力と研究力を高め、各地域の指導者として育ってもらうためのコースを運営しています。

教師研修の写真1
教師研修の写真2
教師研修の写真3

専任講師の業務内容

教師研修に携わる専任講師は、研修ごとに、参加する教師の日本語運用力と教授環境やニーズに合わせ、研修目標を立て、カリキュラムやシラバスを作成しています。ほとんどの研修で、(1)日本語の知識の整理と運用力の向上、(2)教授法の知識の拡充と現場の改善を目指した授業案や活動案の作成、(3)日本文化の深い理解と異文化理解能力の向上という大きな柱を立てていますが、世界中の多様な教育現場から参加者があるので、研修によって、それぞれ目標が異なります。センターの研修事業も30年近い実績を積み重ねており、これまでの経験を踏まえ、かつ、世界の日本語教育の動向を捉えた上で、参加者の現場に役立つ研修を展開できるよう、それぞれの研修目標を立て、取り上げるべきことの優先順位を考え、時間割を作り、授業準備を行っています。

この教師研修に参加する教師達は、一番現場を知っている「プロ」です。私たち講師は、彼らに対して敬愛の心を忘れず、しかも、確実な前進を支えるために、どのような研修を行えばよいか、常に考えています。そのために、研修改善のための数々のプロジェクトも立ち上げ、30名の専任講師が様々なグループを作って活動しています。一方、この研修で授業をするということは、自分自身の教育能力を問われることでもあります。実際に教授法で扱っている方法論や授業運営のやり方を私たち自身が研修の中で実現できているのか、日々の実践を自己点検しなければなりません。同じ教師である参加者からときに厳しく、ときに励まされるフィードバックをもらうことも少なくありません。この事業に関わることで、私たち自身も、緊張感を持ちながら、世界の日本語教育の広さと深さに組することの責任感とやりがいを感じています。


2. 教材開発の仕事

教材開発の概要

日本語国際センターでは、世界の日本語教師の教育実践を支えるために様々な開発業務を行っています。最近では、(1)コースデザインに関する情報やリソースを総合的に提供する「JF日本語教育スタンダード」開発、(2)教師が教科書や配布資料などを作るための写真・イラスト・文法説明・教室活動集などをサイトで提供する「みんなの教材サイト」開発、(3)教授法を学ぶ参考書シリーズの執筆、などがあります。このほかに、教師用ではありませんが、海外の高校生を対象にした映像教材も教科書・DVDWEBの3つの形態で制作しました。

JFスタンダード日本語教育」開発は、コースデザインする手順を示した紙媒体のガイドブック、学習目標(Can-do)のデータベースサイト、実践するための教材(『まるごと 日本のことばと文化』シリーズ全9冊)、評価方法(JFS準拠ロールプレイテスト)という一連の制作物を10年以上にわたって開発し続けています。このように一冊の教材の枠を超えた大規模な開発事業が特徴と言えるでしょう。

専任講師の業務内容

教材開発に携わる専任講師は職員と共に、海外の教育現場について情報収集と分析を行い、関係者の悩みに耳を傾け、何を問題解決すべきか考えます。そして、国際交流基金が言語教育を通して、国際社会にどのように貢献できるかを考えます。この2つの視点に立脚して、開発プロジェクトを立ち上げ、職員、講師、業者の人たちと1つのチームになって、数ヶ月から数年に亘る業務に関わっていきます。

公的機関の業務として今までにないものをゼロから作り上げていくことになるので、醍醐味を感じられる一方で、大きな責任も背負います。開発には納期があるので、そのストレスもずっしりと肩に感じます。ですが、「学習者が目に見えて話せるようになった」、「学習者主体の教育実践ができるようになった」、そう報告してくれる教師を見ると、それまでの苦労が報われます。世界の日本語教育の現場と日本を開発でつなぐことができた、業務遂行を通して自分自身が成長したという実感を味わえる瞬間です。


3. 海外での仕事

専任講師は、日本国内で教師研修や教材開発に関わるだけでなく、海外で教師研修や教材開発などの日本語教育支援に携わり、その経験を国際交流基金の日本語事業全体に還元することも期待されています。
海外派遣専門家※として海外に赴任する場合もあります。上述の教師研修や教材開発の業務を通して得た「現地に寄り添い、国際社会に貢献する日本語教育」という視点、そして、世界中の日本語教育の情報や人的ネットワークが派遣先での活動の大きな力になります。日本語国際センターで世界中の多様な日本語教育と日本語教師に接し、業務を行ってきた経験を活かして、派遣先の日本語教育の現状・ニーズを的確に把握したうえで、関係者と協力しながら、世界の日本語教育の動向と国際交流基金の方針を踏まえた適切な支援を行います。

海外に派遣されると、センターの研修に参加した教師に再会することがあります。そのときには、心強いカウンターパートとして協力して現地の課題解決にあたることもできます。また現地で出会った教師に訪日研修や修士号取得など更なる研鑽の機会を持つことを勧め、日本語教師としてのキャリアアップを支援することも意識的に行っています。このように、海外の日本語教師のキャリアアップや成長に長く関われることも専任講師の大きなやりがいの一つだといえます。先に述べたようにこのセンターが教師研修を始めて30年になりますが、海外の日本語教育の人材育成が着実に進んできたことを感じます。


4. 日本語国際センターの専任講師に求められる資質

専任講師は、任期中に、教師研修を担当したり、教材開発に携わったり、海外派遣されたりします。これらの経験を積み重ねることでこそ、講師一人一人も、講師全体の力としても、本当の意味で、世界の日本語教育に貢献できると考えているからです。
このような中で、最も専任講師に求められているのは、協働力です。すべての業務がチームで進められるので、お互いを尊重し合いつつも、一方で、より良い研修、より良い教材、より良い助言を行うために、しっかり議論し合うことができることが不可欠です。さらに、新しい理論や情報を積極的に取り入れる力も含めた専門性、そして、その専門性を活かしつつ、研修では、特に、参加者の言葉を傾聴し、一緒に現場での実践を考えることができる柔軟性、教材開発では、特に、現在、そしてこれからの日本語教育が何を求めるのかを判断していくことができる先見性も望まれます。

研修から帰国した先生方から、またはセンターで作成した教材を使った先生方から、「学習者が目に見えて話せるようになった」、「学習者主体の教育実践ができるようになった」などといううれしい知らせをもらうと、世界の日本語教育の発展に関わることができているという自負と、業務遂行を通して自分自身が成長した実感を味わうことができます。

※ 国際交流基金の日本語上級専門家・日本語専門家の業務については、以下のサイトをご覧ください。センターの専任講師は海外拠点等に日本語上級専門家・日本語専門家として派遣されることがあります。
専門家募集サイトhttp://www.jpf.go.jp/j/about/recruit/japan_30.html#js