国際交流基金賞50周年記念 ピーター・ドライスデールさんからのメッセージ

ピーター・ドライスデールさんの写真
(c)The Australian National University

平成26(2014)年度 国際交流基金賞

オーストラリア国立大学名誉教授

ピーター・ドライスデール

[オーストラリア]

国際交流基金賞50周年記念メッセージ

国際交流基金は、私のキャリアを形作る上で欠かせない存在でした。1970年代、オーストラリアに初めて国際交流基金の事務所が設置された後(豪州事務所はのちにシドニーに移転)、基金を通じた日本の官民支援に加え、豪州の官民協力も得たことで、オーストラリア国立大学豪日研究センターが設立されました。その後20年間、私はこの任務に全精力を注ぎました。

豪日研究センターは45年間、日豪の協力を生みだすインスピレーションの源泉となってきました。両国の協力関係は、二国間関係だけではなく、特にAPEC設立への協力やASEANを中心とする東アジアの様々な枠組みへの参加を通して、アジア太平洋地域における日豪の外交においても発展してきました。

こうした物語は、日豪関係のあらゆる側面への投資の推進役として国際交流基金が果たした役割を象徴するものです。これは、日本から北東アジア、東南アジア、中国、インドにいたる、開放性と開かれたグローバルな経済秩序を支持する諸国から成る東アジア地域全体の繁栄につながる、変革の軸となる物語です。

太平洋戦争という暗黒の時代に育ち、豪州国民のみならず域内のすべての人の友好を夢見た私からすれば、過去50年間の日豪の模範的な行動は、夢がかなったに等しいものと言えます。

とはいえ、アジアの国民間の友好と協力―それに繁栄と安全保障―の基盤が、脅威にさらされています。アジアの経済力の高まりと、それが政治権力と軍事力の投入に与えた影響によって、アジアは今、刻々と変化する大国による国際政治という舞台の中心に押し出されています。そして、世界の地政学的秩序への挑戦によって、アジアの進歩が根底から揺るがされています。

地政学的に分断されたこの新たな世界で、様々な課題を乗り切るための国際協力は決してたやすいことではありません。世界随一の大国である米国は、全面的な多国間協力に対する意欲を失っており、世界第二の大国である中国との戦略的な関係が悪化しています。米中の戦略的な競争によって、最終的には両国が世界の復興に建設的に貢献し、持続可能な未来の姿を描くことがむずかしくなっています。

国際交流基金が次の50年間も、今後の困難な道を乗り越える上で欠かせない国民間の理解と協力を促す上で、これまでの50年と同じように重要な役割を果たすよう願っています。

オーストラリア国立大学
アジア太平洋学群
クロフォード公共政策大学院名誉教授(経済学)
ピーター・ドライスデール

(原文 英語)

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