国際交流基金賞50周年記念 ロベール・ルパージュさんからのメッセージ

ロベール・ルパージュさんの写真
(c) Hélène Bouffard

令和4(2022)年度 国際交流基金賞

俳優 / 脚本家 / 舞台・映画監督

ロベール・ルパージュ

[カナダ]

国際交流基金賞50周年

私の仕事は、もし私が東洋に、中でも日本に眼差しを向けていなかったら、今日のようなものにはならなかったでしょう。

私は、ケベック・シティで演劇の学生だった若い頃、歌舞伎の舞台を見て衝撃を受けたことに始まり、日本語と書道に魅せられ、更にこの魅惑的な国に何度も滞在したことで、実際上多大なる影響と刺激を受けました。日本は私に、相違点と同時に類似性を、抑制と同時に寛容さを、規律と同時に華やかさを教えてくれたのです。

始まりの頃の旅の中で、カナダから遠く離れた国日本で、私は自分自身と出会うことができました。 私が日本から拝借したものは深くパーソナルなものとなって私の中に沁み込み、私の作品に直接的には現れないとしても、変わらずそこに存在しています。 それは、日本自身が他の文化から借用したものを、どうにかして真に日本的なものにしてしまうのと同じです。

文化の盗用と呼ばれるこの時代、私たちは取引と物々交換の世界に生きています。新たな課題に対する解決策を模索するとき、どこか他の場所に行き、他の人々と会い、他の事例を見ることは常に健全なことです。どんなものであれ創造するときには、他の国との文化交流にアクセスがあることが不可欠なのです。私の場合は、ずっと日本に魅了されてきました。なぜそうなのか、それは恋に落ちるのと同じで、自分でも今だ計り知れないところがあります…。

国際交流基金は私に、日出ずる国に旅して仕事をする機会を与えてくれました。日本の演劇に刺激され、私は自分の作品に他の芸術形式を取り入れたり、伝統と現代性を融合させたりしました。『太田川七つの流れ』の独創的なインスピレーションは、私が初めて広島を訪れたときに得たものです。広島は、恐怖と破壊を活気と美しさへと昇華させた、しなやかな都市です。その時私は、自分が日本に強く惹かれていることを理解しました。

日本や日本文化が私にインスピレーションを与えてくれるのと同様、私の作品が日本の観客の皆さんにインスピレーションを与えることができれば幸いです。

国際交流基金、そして日本のすべての人々に感謝いたします。

舞台演出家 ロベール・ルパージュ

(原文 英語)

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