平成12年度 国際交流基金賞/奨励賞 授賞式 ハイファ博物館ティコティン日本美術館 挨拶

国際交流奨励賞

ハイファ博物館ティコティン日本美術館


 本日、ティコティン日本美術館を代表してこのような素晴らしい場に出席し、国際交流基金より栄誉ある賞を頂くことになり、大変名誉に感じております。


 ティコティン日本美術館は、北イスラエル・ハイファ市のカルメル山上に、地中海を見下ろすように建っています。美術館は、中近東における唯一の日本美術・文化専門美術館として、1960年にフェリックス・ティコティンさんにより建てられました。


 ドイツ系のユダヤ人であるティコティンさんは、若いときから日本の美術と文化を愛され、ヨーロッパ各地で多くの展覧会を開催された人です。そしてある意味では、彼の日本美術のコレクションが彼の命を救ったのです。第ニ次世界大戦が始まる直前、彼のコレクションはデンマークで展示されていました。その展覧会が終わったとき、デンマークの友人が彼のコレクションをオランダに送ることに決め、ドイツに送り返さなかったのです。ドイツ第三帝国が欧州を蹂躙したとき、ティコティンさんはコレクションを追ってオランダに行き、結果的に生き残りました。ある意味で、彼のコレクションがホロコーストから彼を救ったと言えるでしょう。これを契機に、ティコティンさんは生涯の目標として、イスラエルに万人が楽しめる日本美術館と日本文化センターを建てようと決めたのです。


藤井理事長よりハイファ博物館ティコティン日本美術館代表へと賞状を授与する写真

 彼が最初にイスラエルに来たのは1956年でした。そのとき、ティコティンさんは彼のコレクションの相当部分をハイファ市に寄贈することを決められました。その後も彼は、寄贈したコレクションを収蔵するための美術館建設に献身的に努力されました。ティコティン日本美術館という名は日本とイスラエルの文化的な架け橋になっています。両国とも長い、そして古代にさかのぼる伝統を持っている国であります。イスラエルの国民は日本の文化についての知識を渇望しております。日本の古い慣習がイスラエルや西洋の文化とは全く違うので、それを知りたがっているのです。


美術館の目的は、日本の美術や文化をイスラエルの国民に紹介し、こうした活動を通じて両国民の絆を強化することにあります。美術館では毎年7、8回展覧会を開いており、伝統的なものや現代的なものを含めて日本美術の紹介をしております。また、美術館付属施設として創作体験センターがあります。ここでは、幼児、学童、成人すべてが、日本の文化をあらゆる角度から体験できる活動を行なっています。こういった活動には、日本語教室や、日本の歴史・伝統を学ぶ講座も含まれています。創作体験コースとしては、書道、折り紙、生け花、そして日本料理があります。美術館の中では茶道も行なわれていますし、それ以外にもいろいろな活動が行なわれています。大きな講堂もあり、日本のアーティストや歌舞伎俳優、能役者、演劇俳優をお迎えしたときにはそこで歓迎をいたします。日本映画も上映されています。


会場風景の写真

5年前、美術館は全面改築され、新しい棟も付け加わって新たに出発しました。それ以来、35回の展覧会に延べ20万人以上の人々が美術館を訪れています。われわれの活動は子供にも大人にも等しく開かれています。ユダヤ人、アラブ人、キリスト教徒、あるいはイスラエル人、外国人観光客を問わず、だれでも訪問できます。2002年は日本とイスラエルの外交関係が樹立されて50周年という年にあたります。ティコティン日本美術館は、両国間の強い絆と両国文化のゆるぎない結びつきを象徴していると言えるでしょう。


最後になりましたが、本日、大変栄誉ある賞を与えられたことに対し、個人として、またティコティン美術館の代表として改めて御礼を申し上げたいと思います。ハイファ市長とティコティン美術館主任学芸員イラナ・ジンガーも私同様に、今回の受賞に感謝しています。国際交流基金がわれわれを受賞者に選んでくださったことに改めて感謝いたしますとともに、今後とも継続的に協力を続けていくことができますように祈っております。


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