平成12年度 国際交流基金賞/奨励賞 授賞式 石井米雄氏 挨拶

国際交流基金賞

神田外語大学学長 石井米雄


 今日は、図らずも伝統のある国際交流基金賞を頂くことになりまして、胸がいっぱいでございます。私は昭和28年にタイ語の勉強を始めました。1953年ですから、早いものでもう47年になります。それ以来、タイを中心に東南アジアの勉強を続けて今日に至っています。私はタイ語を勉強してタイの研究をする、そういう一つの行為を通じて、タイ国あるいは東南アジアの方々だけでなく、世界の東南アジア研究者と交流を深めることができました。このことを私は本当にうれしく思っております。


石井氏の写真1

 国際交流ということがよく言われ、国と国、あるいは組織と組織というマクロな文脈でよく議論されますが、国際交流は、本当は、固有名詞を持った個人と、もう一つの国の固有名詞を持った個人の間の友情とか信頼関係が基礎になければいけないと思っております。私の場合、私がいままで勉強してきた東南アジアというものがちょうど仲介役をしてくれて、世界の人々と交流を深めることができ、そして多くの友達を得ることができた。その結果としてもしも基金賞が与えられたのだとしたら、私にとって本当に無上の光栄でございます。


 東南アジア地域の研究は、私が勉強を始めた昭和28年のころには、ほとんど日本人に関心を持たれない地域でした。その後も、私がどこかに行なって何か話をしますと、必ず「なぜあなたはタイを勉強したのですか」「なぜあなたは東南アジアを勉強したのですか」ということを聞かれ続けております。私がもしもフランスやアメリカの勉強をしたのだったら、おそらくそういう質問はなかったと思います。こうした質問を聞くたびごとに、私は、「とにかく50年近く前に始めたタイから離れることができなかったのです」と、それだけを答えることにしております。


石井氏の写真2

 最近では若い世代が、本当に国際的に第一級の東南アジアに関する研究を発表しております。この賞は私一人が頂くのではなくて、そういう人たちにとっても大きな励ましになると思います。私も、今後ますます勉強を続けて、日本と東南アジアだけではなくて、世界の人々との間の国際交流に努力したいと思っております。今日は、ご多用中にもかかわらずお祝いのためにお集まりいただいた皆様に、心から


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