コスタリカ(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
12 39 892
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 0 0.0%
高等教育 300 33.6%
学校教育以外 592 66.4%
合計 892 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 コスタリカの日本語教育は、1978年、コスタリカ大学(本校:モンテス・デ・オカ市)における日本語の選択第二外国語としての導入をもってスタートした(同時に、この日本語講座へのJICA海外協力隊派遣が開始された)。非営利団体(2009年よりコスタリカ日本人会)が運営する「日本文化教室(旧日本文化センター)」でもこの頃から日本語講座を開講した。なお、同日本文化教室は、2014年に私立の語学学校「日本文化センター」として独立し、現在に至っている。
 1990年代前半にはコスタリカ大学日本語講座の授業数が増える一方、コスタリカ大学と並びコスタリカの二大国立大学と称されるナショナル大学(エレディア市)の文学言語学部に対しても青JICA海外協力隊日本語教師の派遣が始まり、1988年に第二外国語としての日本語講座が設置された。1997年にはコスタリカ大学オクシデンテ校(アラフエラ県サンラモン市)に対するJICA海外協力隊日本語教師の派遣が開始され、それまで首都圏のみで行われていた日本語教育の地方展開の皮切りとなった。
 この他、1992年に幼稚園から高校まで一貫教育を実施しているラ・グラン・エスペランサ学院(サンタバルバラ市)で日本語が必須科目として採用されたが、教師不足と教育方針の変更により、必須科目が日本語からポルトガル語に変更となった。
 最近では、コスタリカ大学本校、ナショナル大学、コスタリカ大学オクシデンテ校で社会人向け講座が開かれている他、私立語学学校でも日本語を取り入れるところが出てきており、2009年にCIDI(Centro Internacional de Idiomas、サンホセ市)、2011年にNLA(New Language Academy、モラビア市)で日本語講座が開講された。近年では他数校にて日本語講座が開講されている。

背景

 日本とは地理的に遠く、経済的影響が少しあった程度であり、過去においては日本語への関心が必ずしも高くなかったが、最近では日本文化を通して日本語への関心が高まっている。特に、青少年を中心としたアニメ・マンガ、コスプレ等、日本のポップカルチャーの人気は非常に高く、日本のアニメは頻繁にテレビで放映されている他、アニメグッズショップやメイド喫茶等もあり、また、複数のアニメ愛好団体が年間を通してアニメ・マンガ、コスプレ、アニメ・カラオケ大会といったイベントを企画、実施している。また、空手、柔道、合気道、剣道などの武道も盛んであり、これらをきっかけに日本語や日本文化に関心を持つ若者も増えてきている。

特徴

 コスタリカにおける日本語教育の特徴として、「異文化・異言語への興味」から学習を始めた者、日本への留学希望等の理由により学習を始めた者がいる一方、上記のような若い層を中心に、ポップカルチャーを中心とする日本文化への興味から、マンガや日本のポピュラーソングを日本語で読みたい、あるいは、歌いたいといった動機から日本語を学び始める学生が多い点が挙げられる。
 学習レベルは未だ発展途上段階にあり、複数のレベル設定を行っている学習機関の中上級相当コースでも実用水準へ到達するのは難しく、それ以上のレベルを求める者は、個人レッスンを受けるしかないのが現状である。しかしながら、2015年から中米カリブ地域で初めてコスタリカで実施した国際交流基金・日本語能力試験の実施や同年に初めて実施した中米・カリブ地域日本語スピーチコンテスト等がモチベーションとなり、コスタリカ人の日本語レベルは徐々にではあるが確実に上がってきている。2019年の日本語能力試験の申込者数は266名で、この4年間で1.7倍に増えている。日本語学習者数も増加傾向にあり、現在の年間平均学習者数は約910名になっており,2015年調査時に比して約1.4倍に増加している。

最新動向

 2015年、当国で日本語教育における中核的な存在として活躍しているコスタリカ日本語教師会が、国際交流基金から日本語教育拠点としての認定を受け、JFにほんごネットワーク(さくらネットワーク)に加盟した。同年8月には同教師会が中心となって中米カリブ地域の枠組みで初めて中米カリブ地域日本語スピーチコンテストを実施。また、同年12月には中米・カリブ地域ではじめてとなる国際交流基金・日本語能力試験を開始し、同試験の実施は当国及び近隣諸国の日本語学習者のモチベーションにもなっている。
 2018年からは,日本語学習者相互の親睦を深めるとともに,日本の文化,社会,教育等に関する理解を増進することを目的として,日本語学習者大運動会,日本語学習者文化祭等を実施している。
 上記のとおり、コスタリカにおいては日本語学習者数が増加傾向にあり、また、日本語講座を開講していないコスタリカ工科大学(TEC)、コスタリカ通信大学(UNED)、ラティーナ大学(ULATINA)等から日本語講座開講希望が寄せられている。他方、当国においては日本人の日本語教師が減少傾向にあるため、これら潜在的日本語学習意欲者のニーズを拾いきれていない状況にある。そのような背景からコスタリカ日本語教師会では、コスタリカ人日本語教師の発掘と育成に努めるとともに、コスタリカ人日本語教師用カリキュラムの作成、国際交流基金・日本語教師長期研修プログラム等による育成を図りながら、コスタリカにおける日本語教育の普及と発展に努めている。

教育段階別の状況

初等教育

 (下記【中等教育】を参照のこと。)

中等教育

 初等・中等教育段階で日本語教育を行っていた私立のラ・グラン・エスペランサ学院(Colegio La Gran Esperanza:サンタバルバラ市)では、長年同校で日本語を教えていた日本語教師が退職し、後任の日本語教師の補充がつかず、日本語学習が困難になったことにより、24年続いた同校における日本語学習は2016年末に取りやめとなった。

高等教育

 上記【沿革】に記載の通り、コスタリカ大学(モンテス・デ・オカ市の本校及びサンラモン市のオクシデンテ校)並びにナショナル大学(エレディア市)において、それぞれ日本語コースが選択第二外国語として開設されている。コスタリカ大学本校では、日本語学習者数が約100名おり、日本語教師7名(日本人教師2名、コスタリカ人アシスタント5名)が週6時間5クラスを担当している。コスタリカ大学オクシデンテ校では、日本語学習者数が約80名おり、日本語教師2名(日本人1名、コスタリカ人1名)がクラスを担当している。ナショナル大学では、日本語学習者数が約100名おり、日本語教師6名(日本人2名、コスタリカ人アシスタント4名)が日本語1~6のクラスを担当している。

学校教育以外

 日本文化センターでは、日本語学習者数が約250名おり、日本語教師9名(日本人2名、コスタリカ人アシスタント7名)が第1レベルから第8レベルまでの日本語を教えている。同日本語講座は一般向けに4か月毎に開講しており、会話クラス、JLPT対策講座等その時の学習者のニーズに合わせたコースを開講している。また、当地日本人会主催の運動会や餅つき大会などに参加し、日本人との交流を図っている。
 コスタリカ大学及びナショナル大学では、一般人向け日本語コースもあり、コスタリカ大学(Casa de Idiomas)では約30名が、また、ナショナル大学でも約10名が、他大学の学生や一般社会人、高校生、中学生まで学習している。
 また、2017年からサンラモン市に所在するコスタリカ大学附属博物館でも学生、一般社会人等を対象とした日本語講座が開講され、日本語学習者は約50名おり、日本語教師2名(日本人1名、コスタリカ人1名)が日本語を教えている。
 私立語学学校でも日本語を取り入れるところが出てきており、2009年にCIDICentro Internacional de Idiomas)、2011年にNLANew Language Academy)で日本語講座が開講された(両語学学校共にサンホセ県所在)。CIDIでは、日本語学習者が約75名おり、日本語教師7名(日本人2名、コスタリカ人 5名)が一般クラス(12歳の子供から大人までで、比較的19歳から24歳の学生が多い。)を担当している。NLAでは、日本語学習者が60名おり、日本人日本語教師6名(日本人6名)が一般クラスを担当している。個人レッスン(家庭教師)を受ける者もかなりいるようであるが、その数は把握し難い。年齢層は10~20歳代の学生が多いが、20~30歳代の社会人もよく見られる。また、コスタリカ人の知人が多いコスタリカ人が夫の日本人妻が、自宅で日本語を教え始め、現在はグループレッスンも含め40名以上の生徒が日本語を学習している。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 コスタリカにおける一般的な教育課程は次のとおり。

  • 就学前教育1~3年(教育機関により異なる):~6歳
  • 初等教育(エスクエラ)6年間:7~12歳
  • 中等教育(コレヒオ)5年間(前期3年間、後期2年間):13~17歳
  • 高等教育4~6年間(日本の大学とほぼ同様):18歳~

教育行政

 コスタリカの教育機関は、基本的にすべて教育省(Ministerio de Educacion Publica)の管轄。但し、高等教育については、直接的には国家大学学長審議会(Consejo Nacional de Rectores)が監督の任に当たる。

言語事情

 公用語、国語ともスペイン語。但し、カリブ海岸リモン地方においてはパトゥア(一種のクレオール英語)、国内各地の先住民居住区ではそれぞれの民族語も使用されており、現在、ブリブリ、カベカル、グアイミ及びマレクの各先住民言語が使用されている。それらの各言語については、先住民居住区の初等教育学校で、言語及び文化に関する講座が開講されている他、ブリブリ語及びマレク語については、コスタリカ大学本部校文学哲学部言語学科で、大学生及び一般向けの語学講座が開講されている。

外国語教育

 初等教育においては、従来国語(スペイン語)のみの教育が一般的であったが、最近では英語の授業を取り入れる学校も増加している。中等教育以降においては、英語が必須科目。第二外国語を取り入れる中等教育機関も増えている。第二外国語ではフランス語を学ぶのが一般的である。私立学校は学校によって学習開始時期、学習言語が異なるが、ほとんどの学校が初等教育から英語を必須科目としている。
 この他の外国語としては、国立大学の公開講座を中心にドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、中国語、韓国語、ロシア語、アラビア語の語学講座が開講されている。特に、中国語は、2009年8月に当地コスタリカ大学内に孔子学院が開設されてから、ナショナル大学(UNA)、国立技術大学(UTN)や国立遠隔大学(UNED)などでも公開講座として中国語の語学講座が開講された他、民間の語学学校などで中国語の語学講座が開講され、学習者数は把握できていないものの、相当数のコスタリカ人が中国語を学習しているとされる。また、韓国語は、2010年2月にナショナル大学(UNA)で韓国語講座が開講され、現在約75名の学生と4名の教師がおり、2013年にコスタリカ大学で韓国語講座が開講され、現在約60名の学生と3名の教師(KOICA及び韓国ファンデーションから派遣)がいる。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 (下記【中等教育】を参照のこと。)

中等教育

 日本で出版された教材が使用されている他、独自の教材(教師自作教材等)が用いられている。

高等教育

 シニア海外ボランティア日本語教師が独自に作成した教材が、コスタリカ大学とナショナル大学にて用いられている。

学校教育以外

 日本で出版された教材が使用されている他、独自の教材(教師自作教材等)が用いられている。

IT・視聴覚機材

 徐々に広まってきているものの、未だ広汎な使用は行われていない状況。

教師

資格要件

初等教育

 (下記【中等教育】を参照のこと。)

中等教育

 日本語教師としての特段の資格要件はないが、言語のみならず、日本文化・日本事情についても幅広い知識と教授能力が要請されることが多い。

高等教育

 日本語教師としての特段の資格要件はないが、言語のみならず、日本文化・日本事情についても幅広い知識と教授能力が要請されることが多い。

学校教育以外

 

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 コスタリカ大学本校、ナショナル大学及びコスタリカ大学オクシデンテ校ではJICA海外協力隊員及びシニア・ボランティアが日本語クラスを担当している。その他機関においても、一般に日本人が授業を担当しているが、最近ではコスタリカ人教師・アシスタントが育成されつつあり、徐々にコスタリカ人教師が日本語講座を担当する例が見られるようになった。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はない。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 2007年2月に「コスタリカ日本語教師の会」発足。毎月1回日本語教師会定例会を開催。同定例会には日本大使館広報文化担当官も出席し、日本語学習に関する情報交換や勉強会、また、日本語教育セミナー、日本語弁論大会、日本語能力試験等に関する企画・運営等に関する意見交換等も行っている。
 2009年9月、コスタリカ日本語教師会が中心となって、中米・カリブ地域における日本語能力と日本語教育能力の向上及び同地域における日本語教師間の交流の場として、中米・カリブ日本語教育ネットワークが設立された。同ネットワークでは毎年中米カリブ日本語教育セミナーを開催している他、2015年8月には第1回中米カリブ地域日本語スピーチコンテストを開催した。2016年8月に開催された第9回中米カリブ日本語教育セミナーには14カ国68名の日本語教育関係者が参加。中南米地域における最大に日本語教育ネットワークとなっている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣(2019年10月現在)

JICA海外協力隊

 国立コスタリカ大学 文学部現代言語学科 1名
 国立ナショナル大学 文学哲学学部文学言語学科 1名
 国立コスタリカ大学オクシデンテ校 文学部現代言語学科 1名

その他からの派遣

 (情報なし)

日本語教育略史

1978年 コスタリカ大学で選択第二外国語として日本語を導入
1985年ごろ 日本文化センターで日本語講座開始
1993年 ナショナル大学(エレデゥア市)の文言語学部にJICA海外協力隊日本語教師派遣開始
1998年 コスタリカ大学サンラモン分校にJICA海外協力隊日本語教師派遣開始
コスタリカ大学にて社会人向け日本語講座開始
2000年 第1回日本語弁論大会を日本大使館、コスタリカ日本語教師会及び国際交流基金との共催で開催(以降、2015年を除き同大会を毎年開催)
2002年 コスタリカ工科大学にて社会人向け日本語講座開始
第3回日本語弁論大会を日本大使館と共催
2009年 第1回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:コスタリカ)
第9回日本語弁論大会を日本大使館
2010年 第2回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:コスタリカ)
第11回日本語弁論大会を日本大使館
2011年 第3回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:グアテマラ)
第12回日本語弁論大会を日本大使館
2012年 第4回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:ドミニカ(共)
第13回日本語弁論大会を日本大使館
2013年 Casa Manga、コスタリカ大学グアピレス校で公開講座開始
Trade Station社で社員向け日本語講座開始
第14回日本語弁論大会を日本大使館
2015年 第7回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:コスタリカ)
第1回中米・カリブ地域日本語スピーチコンテスト開催(於:コスタリカ)
国際交流基金がコスタリカ日本語教師会を当国における日本語教育拠点(さくらネットワーク)に認定
国際交流基金・日本語能力試験の実施(中米・カリブ地域初開催)
2016年 第15回日本語弁論大会を日本大使館
第8回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:コスタリカ)
国際交流基金・日本語能力試験の実施
メキシコシンポジウム(日本語教師研修)参加
2017年 第16回日本語弁論大会を日本大使館
第9回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:ニカラグア)
コスタリカ人日本語教師がメキシコで開催の日本語教師夏期短期集中講座に参加
南米スペイン語圏日本語教育連絡会議に参加
国際交流基金・日本語能力試験の実施
コスタリカ日本語教師会 Facebookによる情報発信
2018年 第1回日本語学習者大運動会の開催
第17回日本語弁論大会を日本大使館
第10回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:エルサルバドル)
コスタリカ人日本語教師がメキシコで開催の日本語教師夏期短期集中講座に参加
第1回日本語学習者文化際の開催
国際交流基金・日本語能力試験の実施
コスタリカ日本語教師会 Facebookによる情報発信
2019年10月末現在 第2回日本語学習者大運動会の開催
第18回日本語弁論大会を日本大使館
第10回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(予定)
コスタリカ人日本語教師がメキシコで開催の日本語教師夏期短期集中講座に参加
国際交流基金・日本語能力試験の実施(予定)
メキシコシンポジウム(日本語教師研修)参加(予定)
コスタリカ日本語教師会 Facebookによる情報発信
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