マーシャル(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
4 4 242
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 186 76.9%
高等教育 56 23.1%
学校教育以外 0 0.0%
合計 242 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 マーシャルにおける日本語教育は、第一次世界大戦期にまで遡る。1914年に第一次世界大戦が勃発すると、日本は日英同盟に基づき、英国政府からの要請を受け、太平洋地域におけるドイツ領ミクロネシア植民地におけるドイツ軍の武装解除を目的に、マーシャル諸島を含む同植民地に海軍を派遣した(マーシャル諸島を含むドイツ植民地にはドイツ軍は駐留しておらず、日本は無血状態の下で占領を終了した)。その後、第一次世界大戦終了(1918年)後、ベルサイユ条約(1919年)に基づき、日本はドイツ領ミクロネシア植民地を引き継いだが、1920年には国際連盟により日本の委任統治領として認められ、第二次世界大戦終了時まで30年間にわたり南洋群島として統治下においた。マーシャルには、1920年に日本政府による初等学校が開校した。その後も、ジャルートやウォッジェに初等学校が開校され、そろばんを含めた算数や技術教育が行われ、日本語による教育は太平洋戦争の勃発まで続いたこともあり、今日、少数となってきたが、現在でも日本語を理解する高齢者が存在する。
 第二次世界大戦後、1947年にこれまでの日本による委任統治領に代えて、米国を施政権者とする国連の信託統治地域となり、1979年自治政府発足、1986年独立、米国との自由連合協定の締結を経て今日に至る。その間英語が公用語として認められ、Peace Corps(平和部隊)などの米国人ボランティアによる英語教育が行われた。
 日本語教育が復活したのはここ20年ほどの間である。この間、JICA海外協力隊の日本語教師隊員が継続的に派遣されており、現在では中等・高等教育機関で学習する第二外国語として日本語が定着している。

背景

 戦前期に日本語教育を受けた高齢者や政府部内にも少なからず存在する日系人は、日本語教育に対する理解があり、同時に日本人及び日本文化への憧憬の念も強い。さらに近年では経済協力を中心として日本のマーシャルへの援助活動が大いに評価されていることから、日本を身近な隣国として意識する素地が存在している。一方で、日本語・日本文化・日本人を知るマーシャル人の中で、直接戦前戦後・独立期を実体験した当国のリーダー的存在であった世代が高齢化してきていることもあり、日本語教育に対する考え方・トレンドが変化しつつある。このことは、2012年度の日本語教育機関調査(国際交流基金実施)において、マーシャルにおける日本語学習者数が2009年度調査と比べ半減した統計結果に如実に表れている。

特徴

 数年前までは、マーシャルで実施されていた外国語教育は、英語の他は日本語であった。2013年時点で日本語教育を正規科目としているのは、国立マーシャル諸島短期大学(CMI)、マーシャル諸島高校及び私立のコーオペレーティヴ・スクール(以下コープ・スクール)高等部であり、継続して授業が実施されている。

最新動向

 マーシャル諸島短期大学(CMI)では選択科目として日本語講座が開設されており、50名程度が受講している。マーシャル諸島高校では外国語が必修選択科目となっており、受講者総数は年100名程、コープ・スクール高等部でも外国語が必修となっており、受講者総数は60名程度となっている。

教育段階別の状況

初等教育

 (下記【中等教育】参照のこと)

中等教育

 小・中学校(1~8年生)では、原則日本語教育は行われていない。
 高等学校においては、マーシャル諸島高校で教育省が採用した日本人教師により10~12年生に対して日本語教育が行われている。また、コープ・スクール高等部においてはJICA海外協力隊の日本語教師隊員により9~12年生に対して日本語教育が行われていたが、2014年6月からJICA海外協力隊員派遣が中断された。そのため同校での日本語教育の存続が危ぶまれた。その中、同校高等部の単位制度が、米国西海岸高等学校制度の基準認定単位としてリンクしていることから、同校・前中高等部校長ほか複数の理事の強い要望により、日本語教育(必修外国語)として、なんとか存続する決定が下された。現在は、同校が日本から日本語教師を独自に招聘し、授業が行われている。
 なお、米国の大学で第二外国語の履修が必須であることから、進学の準備としても学ばれている。

高等教育

 マーシャル諸島短期大学(CMI)には、JICA海外協力隊の日本語教師隊員が派遣されており、単位認定科目のひとつとして日本語教育が行われている。

学校教育以外

 過去、マーシャル諸島短期大学(CMI)では、地域社会に学ぶ機会を与えるプログラムとしてのAdult Continuing Education Program、海外留学を目指す現役高校生を対象としたUpward Bound Programがあったが、米国からの同プログラムへの支援が打ち切られた3年前に日本語クラスも廃止された。他方で、高校生の中で日本語の学習を望む者もおり、実際に個人教授を雇って学習している者もいる。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 5-3-4制、又は6-2-4制(双方とも米国と同じ/但し義務教育期間は8年間)。
 小中学校が8年間(6~14歳)、高校が4年間(15~18歳)、短期大学が2年間となっている。ただし首都マジュロの中心部では、小学校6年間、中学校2年間となっている。なお小中学校8年間が義務教育である。

教育行政

 国内に5校ある公立高等学校及びマーシャル諸島短期大学(CMI)は教育省の直轄下にある。

言語事情

 公用語はマーシャル語と英語。
 日常会話、国会審議、国内機関の会議などでは主にマーシャル語が使われる。公文書には英語が使用されている。

外国語教育

 現状では、正規科目としてマーシャル諸島短期大学(CMI)、マーシャル諸島高校、コープ・スクール高等部の3校で日本語講座が開講されている。2006年度より、CMIにおいて台湾ボランティアによる中国語講座が開講されていたが、一時台湾のボランティア派遣が中止された時期に中国語講座も中断していた。その後、当地在住の台湾人によりボランタリーに再開されていたものの、2013年12月に同人が帰国することをもって現在は休講となっている。
 その他、スペイン語講座、フランス語講座が一定時期設けられたことがある。なお、当地ケーブルテレビ局で、韓国ドラマ、中国ドラマ等が恒常的に流れていることもあり、これら言語に対する潜在的学習希望者が増加傾向にある。

外国語の中での日本語の人気

 若年層には、アニメファンも増加していることから、アニメを日本語で理解したいとする小・中・高校生、及び短大生もおり、日本語を学習したいという潜在的学習希望者は少なくない。他方で、継続学習を希望するかという点になると、日本語が出来ることによる就職機会が少ないため、年齢が高くなるにつれて学習者は激減している。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 JICA海外協力隊員が(日本語教育以外の教科で)派遣されている一部の小学校等においては、学校側の希望により日本語・日本文化を教えるために、要請を受けた隊員が適宜教材を作成し、教えている。

中等教育

 教師が考えたシラバスに沿って、マーシャル諸島高校においては、自作教材を使用、コープ・スクール高等部においては、『初級日本語げんき』坂野永理他(ジャパンタイムズ)、『エリンが挑戦! にほんごできます。』国際交流基金(凡人社)及び自作教材を使用している。

高等教育

 1998年より2010年までは『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社USA)が使用されていた。2011年以降は、『JAPANESE FOR YOUNG PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社USA)が使用されている。その他、国際交流基金から提供された視覚教材および自作教材を使用している。

学校教育以外

 日本語教育の実施は確認されていない。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。なお、教育省の方針により、現教員に対しても、教員として勤務を続けるには、大学卒業資格または同等資格の取得が義務づけられたため、今後日本語教育が導入される際には、日本語教師に対しても同資格の提示が義務づけられる可能性が高い。

中等教育

 資格要件に定めはない。但し、教育省の方針により、現教員に対しても、教員として勤務を続けるには、大学卒業資格または同等資格の取得が義務づけられたため、今後日本語教師にも同資格の提示が義務づけられる可能性が高い。

高等教育

 教師は主にJICA海外協力隊から派遣されている日本語教師である。当国の唯一の国立高等教育機関であるマーシャル諸島短期大学(CMI)については、大学教員になる資格要件として、修士以上の学位取得者であることが採用条件となってきている。

学校教育以外

 日本語教育の実施は確認されていない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 教育省が、日本人の日本語教師を1名採用し、マーシャル諸島高校教員として勤務を命じている。日本語の専科教師として10~12年生(日本の高校1~3年生に相当)に対して日本語授業が行われている。
 コープ・スクール高等部においては、日本より日本語専任教師を招聘し、全学年(9~12年/日本の中学3年生~高校3年生に相当)に日本語教育(必修外国語)を行っている。また、同校高等部日本人生徒がTA(ティーチング・アシスタント)としてサポートを行っている。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はない。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

  1. 1.2014年9月末時点で、マーシャル諸島共和国内に正式な日本語教師会は存在しない。
  2. 2.これまでの実情は、JICA海外協力隊の日本語教師同士で、それぞれの配属先の状況や授業内容等について意見交換をしていたのみであったが、2013年11月より、在マーシャル日本国大使館が全体の意見交換会を主催し、今後ネットワーク強化を支援する方向に動いている。
  3. 3.マーシャル諸島短期(CMI)大学を中心に、日本語履修者・渡航経験者の親睦・交流機関「ジャパン・クラブ」が、2014年秋に創設される運びとなった。

最新動向

  1. (1)日本語スピーチコンテスト
    2005年にJICA海外協力隊の日本語教師を中心として、マーシャル諸島高校およびマーシャル諸島短期大学の日本語学習者を対象として開催された日本語スピーチコンテストは、2009年度にコープ・スクール高等部の学習者も対象に加わった。大使館との共催事業となったため、大使館文化事業の一環として予算措置もなされ、安定した運営と同時に、内容も年々充実してきている。また、スピーチコンテストの成績優秀者(優勝者)は国際交流基金日本語学習者訪日研修に派遣されている。 2014年4月下旬に開催された「第10回日本語スピーチコンテスト」では、ヒルダ・ハイネ教育大臣が参列したのみならず、日本大使館よりの働きかけで教育省及び内務省の全面的協力の下、マーシャル諸島共和国国営ラジオ放送で、約3時間にわたるコンテストの全プログラムが離島を含めた全国生中継され、特に日本語を使用したことのある高齢者には好評であった。更に結果として、2008年に日本語クラスを創設して以来、初めてコープ・スクール高等部現役4年生が、多くの学生・社会人を押さえてグランドチャンピオンとなったことから、優勝者及び指導されていた女性日本語教員(前JICA海外協力隊員)が、新聞の一面(国際交流基金日本語学習者訪日研修の大型チケットとトロフィーを抱えた姿)を飾る等、マーシャル国内で日本語学習への関心が高まってきている。
  2. (2)マーシャル国内の日本語教師を中心とした「日本語教師会」の設立に向けての動きが出はじめている。
  3. (3)国際協力機構(JICA)マーシャル事務所によれば、基本方針として、今後、日本語教育に関するJICA海外協力隊員新規派遣については、更に削減していくとしている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし。

国際協力機構(JICA)からの派遣(2019年10月現在)

JICA海外協力隊

 マーシャル諸島短期大学(CMI) 1名

その他からの派遣

 マーシャル諸島高校においては、マーシャル教育省が採用した日本人教師が日本語教師として勤務しており、同教師が教育・指導を行っている。
 コープ・スクール高等部においては、2014年6月をもってJICA海外協力隊派遣が中断されたため、日本より日本語専任教師を招聘し、全学年(9~12年/日本の中学3年生~高校3年生に相当)に日本語教育(必修外国語)を行っている。

日本語教育略史

1920年 日本政府による初等学校開校。各地に順次「公学校」が開設された。(その後、太平洋戦争の勃発を受け、1944年に米軍によるマーシャル諸島の占領により、日本語教育は終了)
1991年 マーシャル諸島高校にて日本語教育開始
1992年 マーシャル諸島短期大学にて日本語教育開始
2007年 アサンプション高校にて日本語教育開始(2010年にJICA海外協力隊員の減員のため終了)
2008年 コープ・スクール高等部にて日本語教育開始
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