トンガ(2017年度)
日本語教育 国・地域別情報
2015年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
6 | 12 | 153 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 0 | 0.0% |
中等教育 | 152 | 99.3% |
高等教育 | 1 | 0.7% |
学校教育以外 | 0 | 0.0% |
合計 | 153 | 100% |
(注) 2015年度日本語教育機関調査は、2015年5月~2016年4月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
トンガにおける日本語教育は、1985年に日本の無償資金協力でババウ諸島のネイアフ島にババウ・ハイスクールが建設されたことをきっかけに1986年、青年海外協力隊員(日本語教育)が派遣されて始まった。翌1987年には私立のアテニシ学院大学部、1996年にはエウア・ハイスクール、2000年ツポウカレッジへ青年海外協力隊員の派遣が開始された。2002年にトンガ教員養成学校にてトンガ人日本語教師養成講座がJICAシニア海外ボランティアの派遣により開始され、2005年には、初のトンガ人日本語教師が誕生した。
1998年まで公立高校における日本語教育はフォーム3(日本の中学3年に相当)からフォーム 5(同高校2年に相当)までだったが、同年よりフォーム 6(同高校3年に相当)にも導入され、南太平洋後期中等教育共通試験(Pacific Senior Secondary Certificate Examination : PSSC)の科目として承認された。2012年からは統一試験の実施管理がトンガ教育訓練省のExamination Unitに移管されたため、PSSCに代わって、トンガ独自の全国統一試験(Tonga Form Six Certificate:TFSC)が実施されることとなった。これに伴い、トンガ以外に日本語を正規の科目として高校で教えている国がないことから、PSSCの科目から日本語は除外された。2014年からはトンガ・ハイスクールとババウ・ハイスクールで、フォーム7に日本語が開講され、TNFSC(Tonga National Form Seven Certificate)として日本語の試験が実施されるようになった。
2017年10月現在、青年海外協力隊員3名、トンガ人日本語教師8名が7つの高校で日本語を教えている。このトンガ人日本語教師のうち4名が2010年より国際交流基金海外日本語教師研修(短期・長期)に参加している。
背景
トンガに日本語教育が導入されたきっかけは、日本政府の援助で学校が建設されたことである。最初に日本語が導入されたババウ・ハイスクールだけでなく、エウア・ハイスクールも日本政府の援助で建設されており、同校においても援助がきっかけとなり、日本語教育が開始された。日本語教育普及の要因としては、王室の影響力が絶大なトンガで、親日家であった故ツポウ4世国王陛下の下で日本語教育やそろばん教育が導入され、現在まで続いている。加えて、トンガでは、ニュージーランドの教育制度に従い同国から教育関係の援助及び指導を多く受けているため、日本語教育が盛んなニュージーランドの影響も受けていると考えられる。2015年ラグビーワールドカップにおいて日本代表のトンガ出身選手の活躍が多く報道されたように、日本の高校や大学へラグビー留学をし、社会人ラグビーで活躍する選手も多数いる。毎年日本の高校からスカウトが来るトンガ・カレッジを始め、多くの男子校では日本へのラグビー留学を目指し、日本語の学習を始める学生も多い。
特徴
一般的に英語以外の外国語教育は盛んではないが、2017年10月現在、日本語が教えられている学校は、政府系高校4校、教会系高校3校、計7校で、日本語学習者は約180名となっている。トンガの日本語教育は2017年10月現在、トンガ教員養成学校を除くと、すべて中等教育における日本語教育であり、青年海外協力隊員とトンガ人日本語教師が中心となって行っている。
最新動向
2013年12月、日本政府は草の根文化無償資金協力「日本語学習センター整備計画」を通じて、トンガ教員養成学校に対して9,495,954円を供与し、「ヘイララさくら日本語学習センター」の建設に加えて、LL教育用のパソコンやAV機器、日本語及び英語の学習教材の整備を行った。
また、最新のシラバスは、トンガ教育訓練省の指針に基づきシニア海外ボランティアが改訂し、2016年度に導入された。
教育段階別の状況
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
トンガの日本語教育の中心となっているのは中等教育である。2017年現在で、公立のババウ・ハイスクール、トンガ・ハイスクール、トンガ・カレッジ、エウア・ハイスクールと私立のタイルル・カレッジ(トンガタプ)、タイルル・カレッジ(ババウ)、セント・アンドリュース・ハイスクールの7校において日本語が教えられており、約180名の生徒が選択科目として日本語を学んでいる。
中等教育における日本語学習者は主にフォーム 3(日本の中学3年に相当)からフォーム 6(日本の高校3年に相当)までで、2014年からフォーム7(大学予備課程)でも開講された。また、2010年より新たにトンガ・カレッジにてフォーム3の学生を対象に、2011年にはセント・アンドリュース・ハイスクールでもフォーム 3の生徒を対象に日本語の授業が行われるようになったが、その後、同校では日本語教師が確保できず一時休講していたものの、2017年度より再開された。
高等教育
高等教育段階における日本語教育機関としては、トンガ教員養成学校がある。同学校では、対象を「高校で4年間日本語を学習し、TFSCに合格している者」(もしくは同等レベル以上)に限定して開講されている。2年間日本語及び日本語教授法を専攻科目として(学生は2教科を専攻できる)学び、卒業後は日本語教師となる。2017年現在、同機関に日本語専攻者は2名在籍している。
その他教育機関
NGO Tonga Youth Employment & Entrepreneurship(帰国留学生会会長による日本語教育):現在休講中
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
義務教育は5~17歳。
初等教育は6年間。5歳入学だが、留年もあるので卒業年齢はさまざまである。6年生修了時に統一試験を受け、その結果によって入学するハイスクールが選別される。
ハイスクールは学校によって6学年から7学年までと異なる。5年生修了時にトンガ中等教育修了認定試験を受験し、合格すると6年生に進級できる。6年生修了時点でTFSCを受験し、その結果により進学・就職等進路が分けられる。一部の学校にある7年生はいわば大学予備課程のようなものであり、大学進学を目指す一部の学生のみが在籍する。7年生はTNFSCを受験し、この結果が大学入学試験や各種奨学金採用試験の基準となる。
高等教育機関としては、トンガ教員養成学校(2~3年間)、南太平洋大学(USP)トンガ・キャンパス(但し学位の取得にはフィジー本校での履修が必要)のほか、看護学校、トンガ科学技術専門学校等の専門学校(2~3年間)がある。
教育行政
教育訓練省の管轄下にあるGovernment schoolと主に教会が運営する私立校がある。
言語事情
公用語はトンガ語と英語。英語は公用語となっているが、一般家庭では主にトンガ語が使われている。
外国語教育
2009年までは小学校1年から国語を除く全ての教科が英語で教えられていたが、同年より小学校1年~2年生に対してはトンガ語を用い、小学校3年生以上から英語が使用されるようになった。
中等教育段階では全ての教科が英語で教えられるほか、英語の授業が必修である。第二外国語としては日本語がもっとも盛んに教えられており、日本語以外の第二外国語(フランス語、中国語)はトンガ・ハイスクールにおいてのみ選択科目として開講されている。
外国語の中での日本語の人気
日本語は第二外国語としてもっとも盛んに教えられている。日本語以外の第二外国語(フランス語、中国語)はトンガ・ハイスクールにおいてのみ選択科目として開講されている。日本留学を目指し受講する生徒やラグビー留学や日本文化に興味を持ち受講する生徒、もしくは選手としての日本での活躍を目指し受講する生徒が主である。
大学入試での日本語の扱い
南太平洋大学の受験にあたっては、日本語を含む第二外国語は必須ではない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
トンガ独自のシラバスに基づいて青年海外協力隊員が作成した『えがおⅠ~Ⅱ』『さくらⅢ~Ⅳ』(共にオリジナル・テキスト)を使用している。
高等教育
教員養成学校があり、『できる日本語』『大地』『プリント』を使用している。
その他教育機関
2013年12月に日本政府草の根文化無償資金協力「日本語学習センター整備計画」を通じて建設された「ヘイララさくら日本語学習センター」で開講されている海外青年協力隊員による日本文化学習講座や、在留邦人による無料日本語講座において、同計画で整備されたLL教育用のパソコンやAV機器、日本語及び英語の学習教材が使用されている他、シニア海外ボランティアが作成したシラバス、教科書が使用されている。
マルチメディア・コンピューター
日本語教育にマルチメディア・コンピューターは使用していない。
教師
資格要件
初等教育
日本語教育は実施されていない。
中等教育
教員養成学校で日本語を専攻し、教員養成課程を修了するのが一般的であるが、国費留学等を利用し日本で学位等を修めた者が、日本語教師としての資格はないものの、補助教員として日本語を教えることも可能である。
高等教育
南太平洋大学予備教育課程修了認定試験(South Pacific Form Seven Certificate)の合格を条件としているが、教師としての勤続年数が長い経験豊富な人材を採用することもある。
その他教育機関
ボランティアで簡易な日本文化学習講座や日本語講座を教えている。
日本語教師養成機関(プログラム)
トンガ教員養成学校における日本語コース
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
2017年10月現在、青年海外協力隊員3名が3校(トンガ・ハイスクール、トンガ・カレッジ、ババウ・ハイスクール)で、シニア海外ボランティアがトンガ教師養成学校で教えている。
教師研修
トンガにおける現職の日本語教師を対象とした研修は、1年に1~2度全島の日本語教師を対象に教師会とワークショップが開かれている。訪日研修としては2010年より国際交流基金「海外日本語教師長・短期研修」プログラムにトンガ人日本語教師延べ4名が参加している。
現職教師研修プログラム(一覧)教師会
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
日本語教育に関する情報交換や、「日本祭り」「スピーチコンテスト」「書道コンテスト」のような文化行事、「ワークショップ」、「シラバス・教科書改訂」といった共同作業を目的として、トンガ日本語教師会(Japanese Teacher's Association of Tonga)が組織され、年に1〜2回の総会とワークショップなどを実施している。この他にJICAボランティア(日本語教育)による「日本語部会」が定期的に開かれている。
最新動向
毎年、各校で日本語教師が中心となり、「日本祭り」や「日本週間」などの行事が企画実施され、日本の様々な文化紹介を行っている。加えて、在トンガ大使館は、日本語普及を目的として、2010年5月よりトンガ教育訓練省共催との共催及びJICAとの協力により、毎年「日本語スピーチコンテスト」を実施している。また、2013年からはトンガ日本語教師会の主催で「書道大会」も実施されており、2018年度以降も同様に開催予定である。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
なし
国際協力機構(JICA)からの派遣(2017年10月現在)
青年海外協力隊
トンガ高校 1名
ババウ高校 1名
トンガ・カレッジ 1名
シニア海外協力隊
CDU(教育課程開発部) 1名
その他からの派遣
(情報なし)
シラバス・ガイドライン
初等教育
統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
中等教育
中等教育対象の日本語シラバスがある。2016年にシニア海外ボランティアにより改訂・運用。
高等教育
統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
その他教育機関
統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
日本語教育略史
1985年 | 日本の無償資金協力でババウ諸島にババウ高校が建設される |
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1986年 | 青年海外協力隊員(日本語教育)の派遣が開始される ババウ高校で日本語教育が始まる |
1987年 | アテニシ学院に青年海外協力隊員(日本語教育)の派遣が開始される |
1988年 | トンガ高校に青年海外協力隊員(日本語教育)の派遣が開始される |
1993年 | トンガ教育省によりシラバスが受理される |
1993年 | 日本の無償資金協力でエウア島にエウア高校が建設される |
1994年 | CDU(教育省教育課程開発部)にシニア・ボランティアが派遣され、トンガオリジナルの教科書作成が進められる |
1995年 | トンガシラバスに基づくTSC(トンガ中等教育共通試験)が開始される |
1996年 | エウア高校に青年海外協力隊員(日本語教育)の派遣が開始される |
1997年 | トンガ国定教科書「さくらⅠ」が完成する |
1999年 | PSSC(南太平洋後期中等教育修了試験)に日本語の試験が導入される トンガ国定教科書「さくらⅡ」が完成する フォーム6で日本語教育が開始される |
2002年 | トンガ教員養成学校でトンガ人日本語教師養成授業が開始される トゥポウカレッジに青年海外協力隊員(日本語教育)の派遣が開始される |
2005年 | トンガで初のトンガ人日本語教師が誕生する アテニシ学院での青年海外協力隊員(日本語教育)の派遣が終了する |
2007年 | トンガ人教師参加のワークショップが初めて開催される ハアパイにあるタウファアハウ高校に青年海外協力隊員(日本語教育)の派遣が開始される トンガ人教師が初めて国際交流基金の長期研修プログラムに参加する |
2010年 | 第一回日本語スピーチコンテストの開催 トンガ・カレッジで日本語教育の開始 トゥポウカレッジでの青年海外協力隊員(日本語教育)の派遣が終了する タウファアハウ高校での青年海外協力隊員(日本語教育)の派遣が終了する |
2011年 | 第二回日本語スピーチコンテストの開催 セント・アンドリュース高校にて日本語教育が開始される |
2012年 | タイルル(ババウ)高校にて日本語教育が開始される PSSCに代わりTFSCの実施が開始される |
2013年 | シニア海外ボランティアにより日本語シラバスが改訂される 日本政府草の根文化無償資金協力「日本語学習センター整備計画」により「ヘイララさくら日本語学習センター」が建設される |
2014年 | 新日本語シラバスを発行、運用を開始する フォーム7で日本語教育が開始される TNFSCに日本語の試験が導入される セント・アンドリュース高校での日本語クラスの休講 |
2016年 | 日本語シラバスが改訂される。 |
2017年 | セント・アンドリュース高校で日本語クラス(F3のみ)が再び開始される。 |