ベネズエラ(2020年度)
日本語教育 国・地域別情報
2018年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
11 | 35 | 443 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 4 | 0.9% |
中等教育 | 0 | 0.0% |
高等教育 | 25 | 5.6% |
学校教育以外 | 414 | 93.5% |
合計 | 443 | 100% |
(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
当初、個人教授ベースで、日本語に興味がある者を対象に、細々と日本語教育が行われていたが、1978年に、在ベネズエラ日本国大使館に日本語講座が開設された(閉鎖)。その後、国立シモン・ボリバル大学、国立ロス・アンデス大学、国立タチラ工科大学(2019年現在は閉鎖)、国立カラボボ大学等、高いレベルを誇る国立大学が、日本語講座を開講した。また、2006年には、私立ホセ・アントニオ・パエス大学(2019年現在は閉鎖)及び国立シモン・ボリバル大学、2007年には、国立ベネズエラ中央大学(2019年現在は閉鎖)の市民大学講座でも、日本語講座が設けられた。
さらに、ベネズエラの北半分に位置する州を中心に私塾の日本語教育講座も開講しており、若年層を中心とする日本のマンガ・アニメをきっかけとした日本語学習人口は、増加している。
2007年度以降、国際交流基金の日本語能力試験が、年1回実施されている。
背景
日本からベネズエラへの政策移住が行われなかったこともあり、他の中南米諸国と比べて、在留邦人数や日系人数は少ない(2019年10月時点日本人254名、2018年時点日系人334名)。また、歴史的、地理的要因により、ベネズエラは、欧米偏重傾向にあり、日本語を学習する必要性、モチベーションは、それ程高くはない。しかし、在ベネズエラ日本国大使館が、各地で実施している日本文化紹介事業等の反響、アニメ・マンガ文化の浸透、日本食人気等と、若者を中心とした、日本の武道をはじめ、生け花、囲碁、日本食、禅、盆栽、折り紙、和太鼓、アニメ・マンガ、J-POPなどの日本文化に対する関心の増大にともない、日本語への関心も高くなっている。
特徴
ベネズエラでは、初等教育機関、中等教育機関で日本語を教えているところはないが、上述のとおり、主要大学では、日本語講座が開設された。また、日本の大学と交換留学協定を締結している大学もある。これらの大学の日本留学あるいは文部科学省の国費留学を目指すためや、日本のアニメ・マンガをきっかけとし日本に興味を持ち始め、日本語を学ぶ者が多い。
最新動向
若年層への日本のアニメ・マンガの浸透に加え、インターネットやSNSを通じて容易かつ即時に日本の情報が入手できるようになったことから、在ベネズエラ日本国大使館が各地で開催している日本文化紹介事業の大きな反響等も相まって、若者を中心に、日本や日本文化に対する関心が高まっており、高度な日本語能力を有し、日本語教師を目指すベネズエラ人も少なくない。
他方、日本語学習人口及び学習希望者数が増加している反面、十分な技能とレベルを備えた日本語教師がおらず、希望者の需要を満たすことができていない。日本語学習希望者は、独自にテキストを購入して学習したり、インターネットを利用して学習したりしている中で、初級レベル以上の日本語教育を受ける機会が少なく、質の高い日本語教師の不足が、ベネズエラにおける日本語教育の主要な問題点と言えよう。
なお、ベネズエラでは、2019年7月に国際交流基金が実施する日本語能力試験に140名が申し込み、114名が受験した。
2020年は新型コロナの影響で日本語能力試験が中止となり、さらに殆どの日本語講座がオンライン授業に移行した。
教育段階別の状況
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
大学における日本語教育では、国立シモン・ボリバル大学(カラカス首都圏)、国立ロス・アンデス大学(メリダ州メリダ市)、国立カラボボ大学(カラボボ州バレンシア市)に、日本語コースが開講されている。日本への留学、日本文化に対する興味から学習している者、国際理解・異文化理解の一環として学ぶ者が多い。これらの大学から、文部科学省の国費留学生や内閣府の「世界青年の船」参加青年等を輩出している。また、国立シモン・ボリバル大学は、国立長岡技術科学大学及び東北大学と交換留学協定を締結していることもあり、日本語学習熱は特に高い。
学校教育以外
大学が設置する市民大学講座の他、ベネズエラ各地にある私塾で、日本講座を開設しているところが徐々に増えている。学習者の多くは大学生や社会人で、囲碁、折り紙、武道、盆栽、アニメ等の日本文化紹介団体に加入している者も散見される。在ベネズエラ日本国大使館が、毎年2~3月に開催している日本語弁論大会にも、日本語学習者の積極的な参加がみられる。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
初等教育(日本の小学校に相当)が6年間、中等教育(日本の中学(3年間)、高校(2年間)に相当)が5年間、高等教育(日本の大学に相当)が4年または5年間。義務教育は、基礎教育から中等教育までの11年間である。
教育行政
初等教育機関、中等教育機関、専門学校、短期大学は教育省。高等教育機関(4年制大学)は大学教育・科学技術省の管轄下にある。
言語事情
公用語はスペイン語。
なお、先住民族が、公式の場において、先住民族語を使用することは、憲法上、保障されている。
外国語教育
小学校から高校まで英語が必修科目(最低週3時間)。通常行われている外国語教育は、英語のみであるが、イタリア、ドイツ、フランス系の学校は、それぞれ、各国の言語を教えている。
外国語の中での日本語の人気
英語・フランス語・ドイツ語など欧米言語の人気が高い。アジア圏の言語の中では、日本語の人気が比較的高い一方、KPOPなどの影響で韓国語の人気も高まりつつある。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
『エリンが挑戦! にほんごできます』国際交流基金(凡人社)
『みんなの日本語初級 聴解タスク』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
『日本語の教え方スーパーキット』水谷信子監修(アルク)
『新日本語の基礎Ⅰ・Ⅱ』海外技術者研修協会(スリーエーネットワーク)
『新絵教材(新日本語基礎 準拠)』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
『クラス活動集(新日本語の基礎 準拠)』高橋美和子(スリーエーネットワーク)
『日本語コミュニケーションゲーム80』CAGの会(ジャパンタイムズ)
『日本語で話そうⅠ~Ⅳ』(財)英語教育協議会(英語教育協議会)
『きりはり教室』(日立ソフトウェアエンジニアリング)等
『Japonés Hablado 』Basic Spoken Japaneseの和訳 Michio Nakamura & Fortunato Brown(Editora ABCD)等
その他、必要に応じてカード類、CD、カセットテープ、文学作品等によるオリジナル教材を使用している。
なお、国立シモン・ボリバル大学では、日本政府が、文化無償協力(1989年)により、同大学に供与したLL学習機材を活用している。
学校教育以外
『新日本語の基礎』(前出)
『みんなの日本語初級Ⅰ&Ⅱ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
『エリンが挑戦! にほんごできます』国際交流基金(凡人社)(前出)
『ひろこさんのたのしいにほんご』根本牧ほか(凡人社)
『新板 みえこさんのにほんご』三重県国際交流財団
『おひさま[はじめのいっぽ]子供のための日本語』山本絵美ほか(くろしお出版)
『まるごと 日本のことばと文化』国際交流基金(三修社) 等
その他、スペインの出版社が出版する教材やインターネット上のフリー教材を基にしたオリジナル教材を使用している。
IT・視聴覚機材
高等教育では、編集・発表のためのソフトウェア『生活シュミレーションできるよ!』、『きりはり教室』(前出)を使用している。
JF関連のウエブサイト、スマホ用漢字アプリ、日本語学習アプリ、ユーチューブに上げられている様々な動画なども活用している。
オンライン授業ではGoogleMeet、ZOOM、Discord、WhatsApp、GoogleClassroomなどを使っている。
教師
資格要件
初等教育
特になし。
中等教育
特になし。
高等教育
特になし。
学校教育以外
特になし。
日本語教師養成機関(プログラム)
2019年からベネズエラ日本語教師会が基礎的な日本語教師養成講座、または『まるごと』などの教科書を使ったワークショップなどを行っている。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
国立シモン・ボリバル大学に1名の日本人教師、ベネズエラ各地にある私塾では、日本人、日系人を含めた約5人の日本語教師が在籍している。
教師研修
訪日研修として、国際交流基金が実施している日本語教師研修がある。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
2007年、日本語教師会を設立。カラカス市内の日本語教師を中心に、定期的に意見交換会、教師養成講座、教材ワークショップ、教材の貸し出しや相談の随時受け付けなどを行っている。2019年からは教師会が行っている様々な活動をユーチューブで流している。また、2008年度より実施している日本語能力試験の実施団体としての役割も果たしている。
最新情報
2008年12月以降、ベネズエラ日本語教師会が中心となって組織しているベネズエラ日本語能力試験実施委員会が、継続的に、日本語能力試験を実施している。
2020年度南米スペイン語圏日本語教育連絡会議実施委員会にベネズエラ代表として参加。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際協力機構(JICA)からの派遣
国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。
その他からの派遣
(情報なし)
評価・試験
2008年度より、ベネズエラ日本語能力試験実施委員会により、日本語能力試験が実施されている。
また、在ベネズエラ日本国大使館は、毎年、2~3月に、日本語学習者の意欲の向上を目的に、日本語弁論大会を開催しており、全国から集まる日本語学習者が優勝を競い合う(同弁論大会は国際交流基金・日本語学習者訪日研修の第一次選考試験を兼ねて開催)。
日本語教育略史
1978年 | 在ベネズエラ日本国大使館に日本語講座開設(カラカス日本人会日本語講座。閉鎖。) |
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1987年 | 国立シモン・ボリバル大学にて日本語教育開始 |
1991年 | 国立タチラ工科大学にて日本教育開始(~1997年、2001年~2008年) |
2000年 | 国立ロス・アンデス大学にて日本語教育開始 |
2006年 | ホセ・アントニオ・パエス大学にて日本語教育開始(閉鎖) 国立シモン・ボリバル大学市民大学講座開講 |
2007年 | 国立ベネズエラ中央大学にて日本語講座開講(閉鎖) |
2008年 | 2月、初めて日本語能力試験(模擬)を実施 12月、日本語能力試験を正式に実施 |