平成29(2017)年度 日本語指導助手レポート 教えることと学ぶことが近いことを意識して

マニラ日本文化センター
諸隈良子

私は2016年3月末からマニラ日本文化センター(以下、JFM)に日本語指導助手(以下、指導助手)として派遣されています。JFMの日本語教育部門は3つのチームに分かれていますが、その中で私は中等教育チームに所属しています。中等教育チームの主な業務は2009年度から始まったフィリピンのハイスクール(日本の中学、高校に相当)における日本語教育を支援することです。私自身、以前にもフィリピンで日本語を教えた経験はありましたが、中等教育における日本語教育に携わることは今回が初めてです。また指導助手の業務自体も前任者と大きく変更がありました。その中での主要業務を紹介したいと思います。

中等日本語教師養成研修における『まるごと』の授業

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ききましょう!答えはあっていますか?

着任直後の2016年4月から現職高校教員を対象とした第4期の日本語教師養成研修(以下、研修)がはじまりました。この研修は日本語教育専門家(以下、専門家)のコーディネートのもと、JFMが開発したハイスクール向けの教材『enTree-Halina! Be a NIHONGOJIN!!-』(以下、『enTree』)を使って日本語が教えられる教師を養成しています。この4期からは、研修参加者である現職教員(以下、先生方)の日本語能力を伸ばす為、国際交流基金(以下、基金)が作成した『まるごと 日本のことばと文化 かつどう』(以下、『まるごと』)を使用した日本語学習の時間も設けられました。指導助手はマニラでの研修において主にこの時間を任されています。『まるごと』を使って日本語を教えるのは私にとって初めての経験であり、新鮮さと同時に新たな挑戦でもありました。

先生方も大部分が日本語学習の経験がなく、当初CDを聞きながら新しい語彙や表現の意味を推測していくという流れの授業スタイルに戸惑っていました。ですが、JFMのフィリピン人講師から「推測する力を育てることは言語学習にとって、とても重要である」という話をしてもらい、徐々に慣れていったような気がします。よくできる人が必ずしも推測力が高いわけではなく、「自分の推測があたった!」とクラスの中で、いろいろな人が主役になれます。またフィリピンの方は恥ずかしがり屋な人が多いのですが、ロールプレイなどの発表となると、こちらの想像を超えたパフォーマンスを見せてくれることもあり、授業内のうれしい一コマです。

習ったことばを使って、ビジターセッション!の画像
習ったことばを使って、ビジターセッション!

今年度の研修では『まるごと』のレベルも入門A1から初級1 A2に上がり、先生方も少しずつ自分のことが日本語で表現できるようになってきました。私自身の教え方はまだまだ足りないことが多く、課題もたくさんありますが、先生方と一緒に成長していきたいと思っています。

指導助手としてのその他の業務

その他に指導助手の仕事として、ハイスクールでの使用教材『enTree』の改訂作業補助、マニラ近郊のハイスクールへの巡回指導同行、中等教育向けのイベント実施補助などの仕事があります。またチーム以外の仕事としてJFMが作成しているFacebookページ「 NIHONGO for every Juan」のコンテンツ作成、日本語パートナーズが実施している「おしゃべりサロン」の運営補助なども行っています。JFMには専門家が多数派遣されており、先輩方の仕事ぶりを間近で見ることができるのも勉強になっています。

今後の目標

フィリピンの日本語学習者数は近年大幅に増加していますが、教師数が足りないことがどの機関でも絶対的な課題です。そのため、ハイスクールの先生方のように「習ったことをすぐ教えなければならない」状態にある教師も多いようです。今後はそのことを踏まえ、「教師に教える」ということを念頭に置き、学習したことをすぐ教室で活かせ、先生方の後ろにいる生徒たちに届くような授業をしていきたいと思っています。私の任期も残り1年をきりました。微力ですが、もっと視野を広げ、中等教育だけでなくフィリピン全体の日本語教育が活性化するお手伝いをしていきたいです。

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