平成29(2017)年度 日本語指導助手レポート 学習者と共に学び、つながる日本語講座の現場から

ローマ日本文化会館
印藤礼子

永遠の都ローマの北、閑静なパリオリ地区にローマ日本文化会館(以下、会館)はあります。地区の雰囲気とは対照的に、学習熱心な学生約350名(2017年4月現在)を抱え18講座を開講する日本語講座(以下、講座)と講座で奮闘中の日本語指導助手(以下、指導助手)の仕事をご紹介します。

会館 日本語講座と担当授業

講座については、以下4つのコース、午後の総合(1レッスン3時間×週2回)、夜間(1レッスン2時間×週2回)、土曜(1レッスン2時間×週1回)及び上級(1レッスン2時間×週1回)があります。

その内、指導助手は週4回授業を担当しており、そのほとんどが中級クラスです。中級は、初級に比べると学習者が達成感を感じることが少なくなりモチベーションも段々と下がってきます。担当するクラスでも伸び悩みを感じている学生が多くいました。

モチベーションを上げるために、少しでも達成感を得られるよう「わたしだけのフレーズ」という活動を毎回授業で実施することにしました。これは学生が授業中に出てきた言葉やフレーズで、今後使いたいと思うものを5つ選び自宅で覚えて、次回のレッスンでテストをするというものです。最初は「こんなことで単語が覚えられるはずはない」と非難していましたが、根気強く何週間も続けた結果、今ではたくさんの言葉やフレーズを覚えることが出来ています。言葉を覚えたことが自信につながり授業中の難題にも果敢に挑戦する姿勢が見られます。授業を教えることは勿論ですが、学生の立場で考え課題解決をサポートできるよう教師として更なる経験が必要だと感じています。残りの任期は、特に課題解決サポートについての能力を培っていきたいと思います。

日本語講座授業風景の画像
日本語講座授業風景

ポートフォリオコンクールを通じて見えた学生の才能

指導助手のもう一つの仕事は、講座の運営補助です。これについては、新たな取り組み「ポートフォリオコンクール」(以下コンクール)を紹介したいと思います。

ポートフォリオとは、学習者が自分で自らの学習記録を残していくためのツールで、(1) Can-doシート (2) 学習成果物 (3) 異文化体験の記録の3点からなっています。 

講座の学生は、今までポートフォリオを作成してもそれを成果物として披露することがありませんでした。また講師先生方からも「せっかくすばらしいポートフォリオがあるのに、見せる機会がないなぁ」というお声があり、2016年-2017年度後期(2017年2月~5月)にコンクールを実施することとなりました。

コンクールにおける指導助手の業務は、概要を考え、学生への通知・審査方法などを専門家と話し合い、準備することでした。各クラスの講師にもご協力いただき、最も優れたポートフォリオを優秀賞として選出してもらいました。更に6月の修了式に向けて、優秀賞の中から最優秀賞を選出する予定です。

ポートフォリオの特に(3) 異文化体験の記録は、日本文化への関心の高さが表わされていることに加え、その表現方法が芸術の国イタリアならではのものがたくさんありました。講師も学生もコンクールを通じて、日本語に限らない新たな魅力や才能を発見することが出来たと思います。それは予想外のコンクール成果とも言えます。今後、コンクールが会館講座を更に盛り上げる材料となるよう、私も運営面で出来ることを増やしていきたいと思います。

和伊和伊しゃべりあーも

会館では、日本語会話の会「和伊和伊しゃべりあーも」(以下「しゃべりあーも」)を月1回開催しています。「しゃべりあーも」は、イタリア人と日本人がテーマに沿って会話をする会で、普段日本語を学びながらも日本人と交流する機会の少ない学習者が「しゃべりあーも」を通じて日本人と出会い、日本語で会話する機会の提供を目的としています。

平均参加者数はイタリア人が約30名、日本人が約10名です。最近ローマ在住や長期滞在の日本人が減少していることも影響してか、「しゃべりあーも」の日本人参加者数が減少していることが課題となっています。対策としては、日本人旅行者にもアプローチをして、参加者を増やしていきたいと考えています。

通常は会館で開催している「しゃべりあーも」ですが、特別企画「しゃべりあーもキャラバン」を2017年3月に実施し、ローマ近郊のティボリという町に遠足に出かけました。

遠足では、日本人とイタリア人が5~6名のグループとなり、日本語の観光マップ作りに挑戦しました。最初はグループ行動がぎこちなく主催者としては心配でしたが、数時間のグループ行動で絆も生まれ最後にはグループ内でとても仲良くなり日本語で話していたのが印象的でした。

「しゃべりあーも」の魅力は日本語を通じて日本人とイタリア人の絆が生まれることだと思います。これからも絆が生まれる企画を「しゃべりあーも」で提供していきたいと思います。

「しゃべりあーも」 キャラバンの画像
「しゃべりあーも」 キャラバン

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