平成29(2017)年度 日本語指導助手レポート 活動報告

パリ日本文化会館
津田香織

パリ日本文化会館外観の画像
パリ日本文化会館外観

私が日本語指導助手として2016年6月より派遣されているパリ日本文化会館(以下、MCJP)は、エッフェル塔のすぐ近く、セーヌ川に面したブランリ通り(Quai Branly)にあります。1997年の開館以来、MCJPは公演、展示、映画、文化体験教室などさまざまな事業を通じて、フランスに日本文化を紹介しています。私の所属する日本語事業部は、「日本語」をキーワードに、日本語教育に関わる研修や日本語学習/教育にかかわるイベントの開催、JF日本語講座の実施、外部機関との連携協力などを行っています。

私自身が携わった業務の一例として、「全仏高校生日本語プレゼンテーション大会」を紹介します。これは今年第1回を迎えた新しい事業で、企画者の藤光由子日本語教育アドバイザー(上級専門家)を中心に各段階を一つ一つ検討し、議論を重ねながら作り上げ、私自身も運営の全過程に関わったため、特に印象深く心に残っています。この大会は、フランス全土で日本語を学ぶ高校生たちが、「日仏交流 この人に注目!」という大会のテーマに合う人物を1人選び、2、3人のチームで10分間の日本語でのプレゼンテーションを行うというものです。応募者はエントリーシートと動画を提出し、それらによる予備審査を通過した5組のチームが、本選大会に出場します。本選大会出場者は、MCJPからのサポートを受けながら、自由な発想でプレゼンテーションを準備し、大会当日の大きな舞台での発表に臨みます。

私は応募を受け付けた時から高校生や先生方とのメールでのやりとりを行い、彼らが熱意を持って、困難を乗り越えながら、大会に臨んでいることを読んで感じていました。普段の学校生活に加えて、大会出場の準備をするので、夜中にメールが来ることがしばしばありましたし、休暇中に集まって作業をしたということも聞きました。そんな努力を重ねる彼らを私たちも全力で支援しました。生徒たちがどこにいても信頼できる情報にアクセスできるように、 MCJP図書館の全面的な協力を得て、オンラインの検索ツールやリソースを紹介したり、彼らからの提出物に一つ一つパーソナライズしたコメントを返すようにしたりしました。生徒の理解に誤解が生じにくいように、できるだけ文書は日本語とフランス語の両方で作成する工夫もしました。

最終的に本選大会では、全てのチームが予備審査時よりも深められた、魅力的な発表をしました。彼らの創造力や行動力が私たちの予想を超えていたこともありました。演劇や影絵などの手法を発表に組み込んで聴衆への伝え方に工夫をこらしたり、自分たちの足でさまざまな町の図書館や日仏団体に出向いて資料を集めていたり、たくさんの人にインタビューを行なっていたり・・・そしてどのチームもチームメイト同士が協力して、先生の助言をもらいながら作ってきたということが見てとれました。このような努力の成果を発揮した生徒たちの発表が終わった時の表情はたいへん清々しいもので、私たちもそれを見て心から嬉しく思いました。参観者からの彼らを称賛する声がたくさん寄せられました。

大会が終わってからは、プレゼンテーションをした生徒と先生には大会への出場を通じて自分が何を学んだか振り返ってもらい、彼らの学びが整理され、深められるように、フォローアップを行っています。主催者の私たちも振り返りを行なって、第2回大会に向けて準備を始めています。今議論をしているのは、日本にルーツを持つ生徒と日本語を外国語として高校から学び始めた生徒の発表を同じ基準で評価するよりよい方法は何かということです。言語的なパフォーマンスと共に、批判的な思考や準備のプロセスの質を評価することについて意見が交わされています。大会終了後に、日本語教育を学ぶ大学院生と、この大会をモデルに学びのデザインについて考える機会があり、評価の問題に関しても意見を聞くこともできました。出自にかかわらず、あらゆる人に平等な機会を保障するという立場に立って、私たちがするべきこと・できることは何だろうかと話し合うことは、前向きで、希望に満ちていて、このような議論に参加できることを私はとても誇らしく思っています。

全仏高校生日本語プレゼンテーション大会の画像
全仏高校生日本語プレゼンテーション大会

このように私は今、日本語をめぐって、さまざまな人々と協力しながら、大きな目標に向かうことができる職場で、日々大いに刺激を受けています。私自身の任期は合計2年で、残すところあと1年ほどとなりました。後半の1年では、これまでの学び、そして私自身の専門性(言語学、特に日仏言語対照研究など)も活かして、貢献していきたいと思います。

(参考リンク)
「第1回全仏高校生日本語プレゼンテーション大会」

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