インドにおける日本語指導助手の活動紹介

国際交流基金ニューデリー日本文化センター
日本語指導助手 成松 祐里

私は2021年9月から国際交流基金ニューデリー日本文化センター(以下、JFND)に日本語指導助手(以下、指導助手)として派遣されています。2021年の9月といえば、インドでは新型コロナウイルス感染症の感染者数が減少傾向にある状態ではありましたが、まだマスク着用が義務付けられており、隔離生活からのスタートでした。コロナ禍を経て、日本語教師に求められる能力も変化したように感じます。
国際交流基金(JF)が実施している海外日本語教育機関調査によると、インドの日本語教育はここ10年で2倍近く学習者数が増加しており、日本語への関心の高まりは、私自身も実感しています。 今回は、JFNDで私が担当している業務をいくつか紹介したいと思います。

1. JF講座運営全般

指導助手が担当している業務のメインとなるのは、JF講座(JFNDが運営している日本語講座)の運営です。JFNDではJFが制作した『まるごと-日本のことばと文化-』(以下、『まるごと』)のテキストを使用し、全64時間のコースを開講しています。クラスはレベル別に1〜10まであり、約200名の受講生が日本語を学んでいます。

着任して最初に取り組んだのは、クイズ・試験問題の修正作業でした。JFNDでは、各課が終わるごとに復習クイズを実施しているのですが、オンライン化に伴って作成されたため、未完成な部分や修正が必要なものが多く、数か月に渡りその作業を行いました。
授業は曜日ごとに担当を決め、インド人の先生と2人一組でクラスを担当しています。基本的にはオンラインで授業をしていますが、少しでも日本人と直接話す機会を増やそうと、コース中にビジターセッションを取り入れています。ビジターセッションとは、インド在住の日本人に参加を募り、実際に受講生と交流してもらう取り組みです。教科書で学習した内容に関する会話をすることもあれば、テーマについて発表をしてもらうこともあります。「武道に挑戦」というトピックを扱った際に、柔道有段者を招いて実際に体験会をしたり、「そとでたべる」というトピックで、ピクニックをしたりしました。
その他にも、各クラスの出席管理や成績管理、非常勤講師の対応などの運営業務を担っています。

ピクニックの写真
ピクニックの様子

2. 学習者奨励イベント

学習者の日本語運用能力や学習のモチベーションを上げるために、各種イベントも企画・運営しています。

定期的に実施しているものとしては、「JFチャットルーム」があります。これは、インドの日本語学習者と日本語母語話者が交流するイベントで、対面での実施は2022年7月に再開しました。毎回、定員の3倍以上の応募があり、とても満足度の高いイベントになっています。
その他に南アジアの日本語学習者を対象とした「ショートフィルムコンテスト」や「フォト俳句コンテスト」などのコンテストも実施しました。

3. 教師研修

JFNDの日本語講座は、受講生に日本語を教えることはもちろんですが、教師の指導力を磨くことも重視しています。

2022年には、その教師を対象にブラッシュアップコースを実施しました。『まるごと』中級の教科書を使用し、日本語運用能力の向上と維持、そして学習者の立場を体験し、今後の授業に活かしてもらうことを目的として行いました。
全28回のコースでしたが、授業毎に上級専門家からのフィードバックをいただき、私自身の成長にも繋がったと感じています。

先日は「評価の方法とフィードバック」を扱った教師研修会も実施しました。先生方と意見交換をすることができ、有意義な時間となりました。

上級専門家が実施している教師育成コースにも補助として携わり、各地域の先生方と関わりを持つことができました。ICT活用をメインに取り上げた内容で、私自身も新しい学びが多かったです。個人面談も担当させていただき、非母語話者の先生方がどんなことに悩み、困っているかを認識することができました。

4. インドでの活動をふりかえって

この1年9か月で多くのことを経験させていただきました。日本語を教えることだけではなく、コース運営、イベントの企画運営、教師のサポートなど、さまざまな業務を経験できたことは私の財産です。そしてなにより、自身が外国人として海外に身を置き、生活できたことは今後の日本語教師生活に必ず活きてくると感じています。

将来の為に勉学に励む受講生の姿は、私のインド生活での糧となり、たくさんのパワーをもらいました。インドは、人口が世界一の国になるそうです。多くの日本企業が進出しており、日本企業への就職を目指す学習者も少なくありません。将来日本とインドの懸け橋になる可能性を秘めている学習者に、より多くの刺激や体験の機会を提供することができるよう、残りの任期も尽力したいです。

修了式の写真
修了式の様子

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