2年9か月ぶりのトルクメニスタン派遣の中で

ドゥーレットマーメット・アザディ名称世界言語大学/トルクメニスタン国民教育大学
勝 成仁

 2022年12月下旬に日本語上級専門家(以下、上級専門家)とともに、トルクメニスタンに着任してから、あっという間に5か月がすぎました。日本語専門家の派遣は約2年9か月ぶりということもあり、状況を把握するのに時間がかかっていますが、徐々に業務にも慣れてきました。ここでは、これまでの業務内容について紹介していきたいと思います。
 日本語指導助手の主な業務は3つあります。1つ目は、ドゥーレットマーメット・アザディ名称世界言語大学 (以下、アザディ大学)で授業を行うことです。アザディ大学は国内で唯一日本語専攻がある大学で、私は2〜4年生のクラスを受け持っています。2、3年生とっては、私が初めての日本人の先生ということもあってか、いつも楽しそうに、そして、真剣な眼差しで授業を受けてくれます。また、どの学年の学生からも日本のことを先生からたくさん学びたいという熱意がひしひしと伝わってきます。そういった姿を見ると、彼らのためにより一層頑張らなければならないと日々感じているところです。トルクメニスタンでは日本人と日本語で話す機会はまずないため、私たちとの会話は学生にとって非常に貴重なものです。今後、授業内はもちろん、授業外でも日本語を使う機会が増やせるような活動を行っていきたいと考えています。

アザディ大学の教室風景の写真
授業を行っているアザディ大学の教室風景

 2つ目は、初等・中等教育機関で使用される日本語教科書の作成になります。この業務は、もう一つの派遣先であるトルクメニスタン国民教育大学で行っています。トルクメニスタンでは、初等(1年生〜)・中等教育機関(5年生〜)での日本語教育が2016年に始まり、中等教育機関用の教科書と、トルクメニスタンで唯一初等教育から日本語教育を行っている140番学校用の教科書が作られるようになりました。これまでも、日本語専門家が中心となって、これらの教科書を作成してきました。そして、今回も新年度以降で使用される予定の中等教育機関用の教科書と140番学校用の教科書の作成を依頼されました。教科書作成は初めてで、大変ではありますが、上級専門家や現地の日本語教師と協力しながら作成しているところです。

 3つ目は、中等・高等教育機関に所属する日本語教師に対して、上級専門家と教師研修を実施することです。まず、中等教育機関対象の教師研修を、2023年1月4日から14日まで行いました。これは着任後すぐ、アザディ大学から依頼されたもので、上級専門家は日本語力の向上を目的とした「日本語」の授業を、私は「日本語教授法」の授業を担当しました。研修には、アシガバット市内や地方の学校から4名の日本語教師が参加しました。上述のように、まだ日本語教育が始まったばかりと言えるトルクメニスタンでは、教師の数・質ともに十分であるとは言えない状況です。そのため、1回1回の研修が非常に重要です。今回の「日本語教授法」の授業では、教授法の振り返り、授業の進め方の確認、自分で作成したロールカードを使ったロールプレイの実践などを行いました。教師研修を行うのは初めての経験で、不安もありましたが、無事に終えることができました。今回は、準備時間が十分にない中での研修だったので、次の研修までには、学校訪問などで授業実態を把握し、よりよい研修ができるように準備したいと思います。
 また、高等教育機関対象の教師研修も、2023年3月2日にアザディ大学で行いました。日本語教育を行っている5つの大学の日本語教師が参加し、今回は、大学で日本語を教える際の課題についてグループや全体で共有する活動などを行いました。今後、この研修は月1回のペースで行う予定です。次回以降の内容は、今回出てきた課題を踏まえて考えていきたいと思っています。

中等教育機関日本語教師研修の様子の写真
中等教育機関日本語教師研修の様子

 これら以外にもアザディ大学の日本語教師の依頼に応じて、さまざまな業務を行っています。2年9か月もの間、専門家が不在だったので、正直なところまだまだ手探り状態ですが、業務を行う中でここでの課題が少しずつ見えてきました。その中でも、特に、日本語教師育成は急務のように思われます。定期的な教師研修や学校訪問を通して、教師一人一人の力を伸ばせるようにしていきたいです。また、現状、トルクメニスタンの中では、アザディ大学の卒業生しかトルクメニスタンの学校・大学での日本語教師資格を得られないので、アザディ大学での「日本語」や「教授法」の授業も非常に重要と言えます。今後も上級専門家と協力して、こういった課題に一つ一つ取り組んでいきたいと思います。

 最後に、ここでの業務は初めてのことばかりで、大変だと感じることも多いですが、まだまだ成長過程にあるトルクメニスタンの日本語教育に携われているという大きなやりがいも感じています。この国の日本語教育の発展に貢献することが、私の日本語教師としての成長にもつながっていくはずです。今後も、限られた任期の中で、できる限りのことを頑張っていきたいと思います。

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