米国の日本語教育の現場から

オルダーダイス・ハイ・スクール
鉾之原 秀平

ペンシルバニア州ピッツバーグの日本語教育

米国東部に位置するペンシルバニア州は、アメリカ合衆国において最も歴史のある州のひとつです。主要都市のフィラデルフィアはアメリカ独立宣言がなされた場所であり、合衆国発祥の地と呼ばれています。筆者が日本語指導助手(以下、指導助手)として赴任しているピッツバーグは州西部に位置しています。かつては鉄鋼産業で栄え、全米の鉄鋼生産量の半数がピッツバーグで生産されたほどでした。現在は、高層ビルが建ち並ぶ金融の街として栄え、2009年5月の第3回20カ国・地域首脳会合の開催地に選ばれました。市内に日本語プログラムのある学校は、中学2校、高校3校、大学4校。日本語教育の盛んな都市のひとつと言えます。毎年3月には、ピッツバーグ大学とペンシルバニア日米協会共催の高校生スピーチコンテストが開催され、学区内外から毎年80名を越える学生が参加しています。2012年、筆者の担当した学生8名がコンテストに参加し、中級の部参加者2人が入賞、上級の部では最優秀賞に選ばれました。

日本語指導助手としての業務

筆者の赴任しているオルダーダイス高校(Allderdice High School)は日本語を含む5言語の外国語プログラムをとりいれています。筆者の上司は、日本語とスペイン語プログラムの担当、ペンシルバニア州で最も優秀な外国語教師のお一人に選らばれた方です。日本語はレベル別に4クラスあり、約80名が履修しています。日常業務として筆者に任せていただいている内容は、レッスンプラン、宿題、テストの作成業務、および採点業務です。さらに日本の伝統行事、祝日の紹介も。日本の祝日は、実際の日と同じ日に授業で紹介し、その日に日本で行なわれる伝統行事、お祭りを紹介。例えば、体育の日は紙で作ったボールで玉入れ競争、お正月は年賀状書き、こどもの日は新聞紙で兜のかぶりものの作成など、学生の記憶に残るように工夫しています。限られた教室内ではありますが、できるだけ体験してもらえるように積極的にアクティビティを取り入れています。文化紹介では、学生から質問が活発にでます。異文化に驚きながらも積極的に学ぼうとする姿勢に筆者も刺激を受けます。学生達の好奇心から発するエネルギーをうけながら、指導助手としての使命と日々向き合っています。

ピッツバーグ公共図書館での日本語クラス

筆者は、カーネギー図書館本館(Carnegie Library of Pittsburgh-Main、以下CLP)が運営している無料外国語プログラムの日本語講師、そして複数の日本語ボランティア講師の指導をしています。この外国語プログラムはJET卒業生の司書によって2009年に日本語会話からスタートし、現在はフランス語、イタリア語、ドイツ語、スペイン語、アラビア語、中国語、韓国語もあります。なかでも日本語クラスの参加者が最も多く、ピッツバーグの人達が日本語・日本文化に深い関心を持っていることがわかります。現在の日本語クラスは3レベル(会話・中級・初級)あり、隔週の月・火曜の夕方一時間です。小・中・高校生、大学生、社会人と様々な方が3レベル合計すると数十名近く受講しています。筆者はまた、昨年10月、11月にCLP子ども図書館とCLP本館友の会「日本橋プロジェクト」の協力のもと、児童対象の日本語「キャンプこんにちは!」を5週間の期間限定で開講しました。土曜の午前中、就学前のこどもから小学生、その保護者が対象です。おりがみ、ものの名前(食べ物、乗り物など)、歌、ダンスと、アクテビティが盛りだくさんのプログラムを考えました。アシスタント集まれ !と、オルダーダイス高校の学生に声をかけたところ、毎回20名近くがボランティアに来てくれました。

米国の日本語教育にふれて

筆者にとって試行錯誤の毎日、毎日が研究です。本体験を通して筆者は、日本語教育に携わる者として大切なことは見識を広くもつことだと思うようになりました。一言に日本語教育といっても、取り巻く環境は異なります。学習希望者は日本国内にもいれば、海外にもいます。また教育機関といっても広く、小中高大学の日本語プログラムがあり、それぞれ各レベルがあります。さらに地域に目を向けると社会人の日本語学習希望者もいます。学習動機も十人十色です。エスニック・バックグラウンドも異なります。筆者はその状況をオルダーダイス高校での指導助手として、さらにCLPのボランティアクラスの経験を通して少し理解できるようになりました。日本語を教えるという仕事は、このように様々な学習者に対して、それぞれに適したアプローチが必要です。米国という環境、高校という環境、またボランティアクラスという環境でどのようなアプローチが効果的なのか、試行錯誤の毎日です。また、海外で暮らすひとりの日本人として、コミュニティに日本文化を発信するとともに、筆者が知る米国の日本語教育についても日本に発信していきたいと思います。

  • 米国の日本語教育の現場からの写真1
  • 米国の日本語教育の現場からの写真2
  • 米国の日本語教育の現場からの写真3

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