オクラホマ州タルサより1年目の活動報告

ブッカーT.ワシントン高校
泉 千草

竜巻とインディアンの州

私が派遣されているオクラホマ州は、面積181,195 ㎢、人口3,814,820人で、テキサス州の真上に位置しています。
「オクラホマ」と聞いてまず思い浮かぶのは「オクラホマミキサー」くらいですが、現地の人はほとんどこの曲を知りません。ではどんなところかというと、保守派が多い典型的な南部の州なのですが、その名がネイティブアメリカンの言葉で「赤い人々」ということからもわかるとおり、オクラホマは大小さまざまなネイティブアメリカン部族の居留地が存在する「インディアン」の州として知られています。広大な平原(プレーリー)には野生のバッファローが群生しており、先日日本でもニュースになりましたが、春先には竜巻がいたるところで発生します。内陸型の気候で寒暖の差が激しいのですが、湿潤で緑が多く、故郷熊本を彷彿とさせます。おおらかで親切な人が多く、「サザンホスピタリティー」を折々に感じることができます。

ブッカーT.ワシントン(以下BTW)高校があるここタルサ市は、かつて石油関連事業で急成長し、州都オクラホマシティに次ぐオクラホマ第二の都市です(人口約40万人)。アジア系住民の人口比率は3%弱で、なかでも日系人や日本人は非常に少なく、したがって日本語教育も西海岸・東海岸の州などに比べると盛んではありません。主な日本語学習環境としては大学やコミュニティカレッジなどの高等教育機関があげられます。中等教育レベルでは我がBTW高校が州で唯一の実施機関となります。

派遣校の概要とアシスタント業務について

BTW高校は、タルサ市の北部に位置しています。この北部タルサは裕福なタルサの中でも比較的貧しい地区であり、BTW高校は歴史的な背景から黒人専用学校として開校しました。その後、人種差別撤廃の流れを受け、またマグネットスクール(特定の科目やプログラムを充実させ、学区制ではなく入試によって学生を選抜する学校)という運営形態も後押しし、市内の他の学校では見ることのできない「人種融合策」の成功例として、また2010年に全米の優秀な高校100選に選ばれた学校として、地元では高く評価されています。

BTW高校は外国語教育に力を入れており、9つの言語プログラム(西、仏、独、露、伊、ギリシャ、羅、日、中)のうち1つが2年間選択必修となっています。スペイン語のようなメジャーな外国語と比べ、日本語の履修人数は圧倒的に少なく、日本語担当の教師も私のスーパーバイザーであるニュー先生のみです。しかし、文字から学ばなくてはならない日本語をあえて選択する学生たちは非常に学習意欲が高く、2年間の選択必修の後も卒業まで日本語を履修し続ける人が多いです。オクラホマという土地柄、学生は日本人や日本文化とふれあう機会が少ないため、この一年間は文化理解学習に尽力しました。日本の祝祭日が近づくと、スライドやレアリアを用いて説明し、クラフトワークや伝統的な遊びで実際に祭日の体験をしてもらいました。9年生や10年生は残念ながら文化紹介・体験にとどまりましたが、大学入試が待っている上級生のクラスは、アメリカの祝祭日と比較して作文を書いたりプレゼンテーションを行ったりなど、より異文化理解につながる授業を目指しました。

アシスタントとしての業務はその他にも、日々のクラスの課題やテスト等の作成/添削、遅れている学生への個別指導などがありますが、J-LEAP間のつながりをいかし、ケンタッキーのキャロウェイカウンティ高校の日本語クラスに向けたBTW高校の紹介ビデオを作成し、スカイプを利用したビデオチャットも試みました。他の高校の学生と日本語で交流することは今までなかった試みなので色々と課題も残りましたが、学生も大いに盛り上がっていたので次年度もぜひ再挑戦したいと思っています。

教室外での活動

昨年度は、授業以外で学校内外の活動に取り組む機会はあまりありませんでした。しかし、英文学のクラスで短歌・俳句の単元を導入する際にプレゼンをしてほしいというお話をいただき、伝統的な日本の短歌・俳句や現代の川柳甲子園について紹介しました。とくに日本の高校生が作ったユーモアあふれる川柳にはみんな興味を示していて、実際におもしろい川柳(英語)を作ってくれた学生もいました。

様々な人種や文化的背景の学生が通う学校ということもあり、BTW高校では毎年Multi-Cultural Assembly(多文化集会)という集会が行われ、学生や教師が自身に関係する文化のプレゼン発表を行ったり、パフォーマンスを披露します。私も「何か日本の文化について紹介してくれ」と言われ、趣味である弓道の紹介をしました。残念ながら実践披露することはできませんでしたが、発表後、全く話したことのない学生から弓道について質問を受けたり、アーチェリークラブの練習に誘ってもらったりして、クラス以外の学生と交流するきっかけを得ることができました。

また、昨年度は「キズナプロジェクト」と姉妹都市である宇都宮市から短期研修団の訪問がありました。日本語クラブの学生と習字で横断幕を書いたり、数百枚の折り紙で満開の桜の木を作ったりして、お客様をもてなしました。桜の木は、花の数が増えるにつれ、教室の前を通りかかる学生も先生もみんな立ち止まって話しかけてくれるようになり、花見という日本の文化を紹介するいい機会となりました。

また個人的には、現地の日本人会にも入会し、アジアフェスティバルなどの国際交流祭りへの参加のお手伝いをさせていただきました。オクラホマにはおもだった教師会がないのですが、会でその話をしたところ、コミュニティカレッジの先生が勉強会をしようと誘ってくださり、現在、有志の会員とともに月一の日本語教育勉強会に参加しています。

1年目を終えて

アシスタントとして、また生活者として、昨年度はとにかく「見て学ぶ」年でした。授業のカリキュラムや課外活動など、どこをとっても日本の学校のそれとは異なる環境に圧倒されました。アメリカ人の、個性を大切にして人と違うことを恐れず自己表現する力は、このようにして培われるのだなぁと大いに感心させられました。徹底して個人の自主性を重んじる教育方針に疑問やとまどいも感じましたが、日本や東アジアの国で教えていてはきっと気づかなかったであろう教え方(学習者との接し方)に出会えたので、このプログラムに参加できて本当に良かったと感じました。

また、以前はあまり歴史に興味がなかったのですが、オクラホマは「人種のサラダボウル」アメリカが直面する様々な問題を間近に観察できる場所であり、タルサの抱える歴史も学ぶところが多いです。保守的な州にあるリベラルな地方都市ということで、色々な価値観を持つ人と接することができ、また音楽やアートに対する関心も高いこのタルサという街は、一見しただけではわからない奥深さがある非常に面白い街です。

2年目である次年度は、そのタルサの人々にもっと日本や日本語を知ってもらいたい。そのために、昨年度はあまり活動の機会がなかった日本語クラブの活動を活発化させ、国際交流祭りへの参加や学内外でのダンスパフォーマンス披露などを計画しています。また、コミュニティカレッジや日本人会と密に連携を図り、学生たちが日本語で交流できる場を設けたいと考えています。また、昨年度はニュー先生とともに、大学進学に大きな影響を持つIBテスト対策を試行錯誤しながら見直しましたが、今年はその反省もふまえ、さらなる改善と充実化を目指します。

前述の通り、タルサの日本語教育の規模は非常に小さく、陸の孤島となっています。そんな状況にあって、他地域のJ-LEAP参加者から各校の情報を得ることができるのはありがたいことです。昨年度に引き続き、スカイプチャットによる学生同士の交流など、J-LEAPネットワークを活用した活動を考えていきたいです。

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