アメリカの高校で働いてみて・・

ワイパフ・ハイ・スクール
樋口 佳苗

アメリカの中のアジア。ハワイ!!

ハワイ州は8つの島を中心に成り立つ総面積約28,311平方㎞(東京の約7.5倍)、アメリカに最後に加わった50番目の州です。人口1,360,301人(2010年調べ)のうち約70%が住むオアフ島は政治経済の中心地です。

サトウキビプランテーション時代、複数の国から労働者がハワイに渡ったことから、ここでは様々な国の文化が入り混じった独自の文化が発展しています。日本の文化もその一つです。夏になると毎週末どこかで盆踊りが行われており、日系人だけでなくハワイに住む多くの人がそれを楽しんでいます。また、こういった歴史から英語より日本語の名前が浸透している場合が多々あります。ハワイに来たら、ぜひOctopusではなくタコ!Soy sauceではなくショウユ!といいましょう。ロコに思われること間違いなしです。

ハワイの教育制度は、多くの地域が6・2・4年制で、高校までが義務教育です。日本語は現在ハワイ州全高校で教えられています。またハワイ大学も日本語教育で有名です。ハワイは日本語が通じる!という印象を受ける理由の1つは、この為ではないでしょうか。

Go Marauders!!!

派遣先のワイパフ高校のシンボルは海賊!元気いっぱいのスタッフと学生が集まったハワイで2番目に大きな高校です。フィリピン系の生徒が約70%、サモア系が20%を占め、全体の99%がアジア系です。

現在約400人の学生が日本語を履修しており、3人のアメリカ人日本語教員と私で教えています。私はリードティーチャー(以下、LT)と一緒に日本語レベル1~3とAPクラスを担当しています。APとは大学レベルの日本語で、5月に全米共通の試験があります。試験では日本語能力だけでなく、日本文化の知識、論理的思考能力なども問われます。ワイパフ高校では一昨年APコースが始まったばかりで、私はLTとともにAPクラスの指導方法、APに合わせた高校の日本語カリキュラム全体の改革に取り組んでいます。まだまだ試行錯誤の毎日ですが、ハワイを始め全米で活躍する日本語教員の方々からアドバイスをもらいながら少しずつ進めています。

また、昨年広島県の高校と姉妹校提携をし、今年から交換留学のプログラムが始まりました。学生を日本に送ったり、日本の学生を迎え入れたり初めてのことばかりで大変ですが、学生が楽しんでいる姿を見られて、とても嬉しいです。

日本人代表

歴史の先生から仏教について授業してくれ、侍について授業してくれ、など出張授業を頼まれることがよくあります。また、アメリカは学生が1つの研究課題に取り組む授業が多く、課題の内容によっては日本人代表としてインタビューを受けることがあります。責任がある立場として、出張授業やインタビューの前には自分で調べたり、他の人の意見を聞いたりなど準備をするため、私にとっても良い勉強になっています。

また、放課後や週末は学校のクラブ活動に参加することが多いです。他教科の先生や日本語を履修していない学生、他校の学生のことを知るとても良い機会になっています。今では校内を歩いていると日本語を履修していない学生たちも「Hi, sensei」と声をかけてくれます。8月からはアメリカンフットボールとソフトテニスのシーズンが始まります。学生時代ソフトテニス部だったので、とても楽しみです。そして日本ではなかなか楽しめない高校生のアメフトも今年が最後なので昨年以上に楽しみながらサポートしていきたいです。

残り1年・・・

アメリカの学校教育は、論理的に考える・話す力などの‘能力’を伸ばすことに重きを置いているという印象を受けました。どの教科もプロジェクトベースの学生主体の活動がよく見られます。もちろん日本語のクラスもプロジェクトを多々考えなければならず、面白い反面、時間もかかり進度も遅くなるため、最初はこんなにゆっくりでいいのか、など戸惑いがありました。しかし、プロジェクトが終わったときには、日本語で1つやり遂げたという達成感があり、また教員側も学生の成長と自分たちの指導の反省点も見られるので、とても良い勉強になっています。

昨年1年間、学校や授業の流れが見られたので、2年目の今年はもっと全体のバランスや先のことを考えて動き、少しでも忙しいLTの役に立てるように頑張りたいです。またハワイ州で毎年行われている高校生対象の日本に関するクイズ大会‘Japan Wizard’に向けて早めに準備を始め、優勝を狙いたいです。

アメリカでの生活については、最近“アメリカ=自由”であったイメージが“アメリカ=尊重”に変わってきています。同僚など周りの人を見ていると“自分が何をしてもいい”という個人の自由ではなく、“他人の選択を尊重しましょう”という違いを認めるという態度でいることを、みなが心がけているように思えます。本当に素敵なことだと思いますし、私もそういう考えで周りと接していきたいと思っています。

  • 派遣先での写真その1
  • 派遣先での写真その2
  • 派遣先での写真その3
What We Do事業内容を知る