アシスタントティーチャーとしての2年間を振り返って-アメリカの日本語教育現場で得た学び-

テイラー・オルダーダイス・ハイ・スクール
吉田篤矢

アシスタント業務について

私が派遣されたテイラー・オルダーダイス・ハイ・スクールでは、日本語1、2、3/4/5(混合クラス)の3つの日本語クラスがあります。各授業は毎日行われ、1コマ45分の授業です。日本語を受講する学生は毎日45分間、遠い日本の言語と文化を勉強しています。アシスタントティーチャー(以下、AT)として派遣された私は、現地ピッツバーグの高校で長年日本語を教えているリードティーチャー(以下、LT)と共に、2年間日本語の指導に携わりました。ピッツバーグで日本語コースが減少傾向にある中で、日本語コースの強化をLTとの共通目標に業務を行いました。
ATとしての業務は多岐にわたりましたが、LTとの相談・合意、そして柔軟性を持つことを忘れずに2年間勤めました。具体的な業務は主に、レッスンプラン・教材及びテストの作成、採点・添削、授業実践、研修への参加です。授業実践について、1年目はLTを中心に、アクティビティに応じてサポートする形をとりましたが、2年目はATとして中心になりLTにサポートしてもらう形も多くとりました。また、2年を通して文化に関する授業を行い、日本の年中行事や伝統文化を紹介しました。5月の子どもの日には、こいのぼりの意味を勉強した後に、実際にこいのぼりを作成しました。作ったり食べたり、実際に何かしてみるということを大切に、授業を行いました。

地域における活動について

職場である高校から一歩外へ出てみると、日本から遠い離れた地域ですが、地域には日本語学習者や日本文化に興味がある人がいることに気づきます。私は2年間を通して、派遣されたピッツバーグ市のカーネギー図書館の日本人司書の方と共に様々が活動を行いました。
まず、「キャンプこんにちは」です。「キャンプこんにちは」はピッツバーグに住む子どもを対象とした日本語キャンプで、毎週土曜日、4週間実施しました。カーネギー図書館の司書の方と共に企画し、私は主にキャンプのレッスンプラン作成・実施を担当しました。毎回10名程度の子どもたち、そしてその保護者の方々が参加してくれました。毎回、「動物」や「数字」、「あいさつ」などの楽しいトピックで、ゲームや歌、そしてダンスなど、体を動かしながら飽きさせないように授業を行いました。「動物」のトピックでは有名な「こぶたぬきつねこ」の歌をダンスも交えて歌いました。キャンプ初回の授業でしたが、最終回でも子どもとその保護者の方が歌とダンスを覚えていてくれて、とても嬉しかったのを覚えています。日本語や日本文化の普及という観点から、子どもだけではなく、保護者も巻き込んだ活動はとても重要だと考えます。このようなイベント実施については、私自身今後も取り組んでいきたいと考えます。

言葉の壁を越えて

私が派遣された高校では毎年80名程の学生が日本語を勉強していますが、実際に日本人と日本語を使ってコミュニケーションをする機会は多くありません。そこで現地のLTの先生と共に、学生に実際に日本語を使って日本人とコミュニケーションをする機会を作ろうと心がけていました。
2014年の夏、研修でアメリカを訪問した岩手県の高校生とピッツバーグで交流しました。学生は日本の高校生と日本語を使ってコミュニケーションをとろうと努めていました。言葉の壁を越えて楽しそうにコミュニケーションをする学生たちを見て、とても感銘を受けました。外国語を学ぶことでより多くの人と関わることができます。その手助けができる教師という仕事のやりがいを改めて感じました。
また、ピッツバーグに住む日本人をゲストスピーカーとして教室に招き、日本語の会話クラスを行いました。日本語を学んで数か月の学生も、自分が学んだ日本語を最大限に使い、コミュニケーションを取ろうと頑張っていました。実際に自分の日本語が通じた学生はとても嬉しそうで、次の日に「もっと日本語を勉強したい」と言っていたのを覚えています。学生が日本語を通じて、多くの人と関わり、視野を広げ、日米をつなぐ存在になってほしいと強く願っています。

派遣を終えて

J-LEAPというプログラムではATとしてLTと協働し、現地アメリカの日本語教育の促進や日本文化の普及、また日米の文化交流を目的とし活動してきました。日本から来た日本語のネイティブスピーカーとして、アメリカの日本語教育に対してどのように貢献できるかを常に考えていた2年間でした。
派遣前は日本で地域の日本語教室や所属大学院TAとして日本語教育に携わっていましたが、本プログラムで初めて実際に日本語教師としてコース運営に関わり、手探り状態の毎日でした。そこでLTの先生と共に決めたのは「柔軟にいこう」というスローガンです。赴任時すぐに、教室に「柔軟」と書いた紙をLTの先生と一緒に掲示したのを今でも覚えています。実際に学校現場で働くと日々色々なことが起きます。学校では子どもの様子は毎日異なり、授業も計画通りにはいかないこともあります。毎日子どもの様子に応じて、授業を行わなくてはなりません。今後、同じように海外の日本語教育機関へ派遣される日本語教員の方々には、様々な意味で「柔軟」ということを大切に、現地の日本語教育を盛り上げてほしいと思います。
今後は、J-LEAPでの経験を活かし、アメリカで日本語教師になろうと考えています。現地でお世話になったLTの先生のように、明るくかつ専門性のある日本語教師を目指してまいります。

  • 派遣先での写真その1
  • 派遣先での写真その2
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