学生と共に成長できた一年

レイク・オスウィーゴ・ハイスクール
髙橋 萌

オレゴン州って?

私が派遣されているオレゴン州は、アメリカ合衆国の北西部に位置し、北はワシントン州、南にカリフォルニア州と接しております。人口は約390万、面積は25万1400平方キロメートルで、日本の本州と四国を合わせたほどの大きさです。海や山、砂漠など、非常に豊かな自然と素晴らしい景観に恵まれています。全米では「環境に優しい州」として知られており、全米で住みたい町No.1と言われるポートランドのダウンタウンにおきましても、環境整備には力を入れています。現在はハイテク産業やクリーンテクノロジー産業の進出もめざましく、カリフォルニアのシリコンバレーと並ぶオレゴンのシリコンフォレストと呼ばれるほど、米国の輸出産業の中でも大きな位置を占めています。

オレゴン州で日本語を学べる環境は小学校から大学まであり、日本語を学ぶことはあまり珍しいことではありません。日本語のみで授業を行うイマージョン校や、外国語の選択科目として日本語を開設している学校があります。近年はアジア言語として日本語に代わり中国語が勢力を伸ばしており、残念ながら日本語のクラスが減ってきている、または無くなってしまう学校もあると聞きます。幸い私の派遣先の地域ではあまりそのような傾向は見られず、日本語をとる学生数の変化はあまりないそうです。

派遣校での業務について

私はLake Oswego High School(レイク・オスウィーゴ高校)と、Lakeridge High School(レイクリッジ高校)という二つの高校に派遣されています。共にポートランドから南に20分程のところに位置するLake Oswegoという町にある公立校で、学生数は1200人程です。Lake Oswegoはオレゴン州の中でも裕福な町の一つとして知られており、教育にも力を入れています。両校において外国語の選択科目の一つとして日本語が設置されており、日本語の他にスペイン語、フランス語、中国語があります。両校でJapanese1Japanese2Japanese3&4の混合クラスを開設しており、日本語をとる学生は二校で約100名です。

一年目は、主に日本文化紹介の授業や、チャプターが一通り終わった後の内容重視の授業運営に力を入れてきました。日本文化の授業は、主に日本の祝日や伝統的な習わしなどについて日本語で授業を行いました。祝日にどのようなことをするのかを紹介するだけではなく、なぜするのか、米国または自分のバックグラウンドの文化とどのように異なるかなどをテーマとし、教師主体ではなく学生の参加型の授業を目標としていました。

また、祝日だけでなく書道や日本の食文化、ポップカルチャーなど、幅広く日本について学べるよう意識をして授業を行っていました。内容重視の授業は、「日本語を勉強する」のではなく、「日本語を使って知識を得る」ということに重きを置いた授業です。各レベルのクラスでチャプターが終わった後、そのチャプターで学んだ日本語を使いながら新しい日本の知識について学べるような活動を行いました。

教室を超えた活動

派遣先校以外での活動として、同じディストリクト内にあるLakeridge Junior High School(レイクリッジ中学校)で、Cultural Exploration Classのゲストティーチャーとして日本文化や日本語を教えました。この授業は六年生(米国での中学一年生)に向けて開設されており、外国語を選び学ぶ前に様々な他の文化と言語を広く学び視野を広げることを目的としています。1学期につき2クラス、1クラスにつき各4回、3学期全ての授業を担当させて頂きました。また、在ポートランド日本国総領事館のお手伝いとして、ポートランドにおけるお正月イベントやJETプログラムの研修、日本語のスピーチコンテストの運営のボランティアなど、地域の中での日本文化、日本語教育を広められるよう努めました。その他にも、近隣の高校の日本語授業に出向き、授業観察をしながら学生と触れ合わせて頂いたり、本校のNational Honor Societyの表彰式において、ゲストスピーカーとして外国語を学ぶ意義について自分の経験をもとにスピーチをさせて頂いたりと、様々な形で地域に貢献できるよう心がけて活動を行いました。

また、赴任後二週間程経った頃、リードティーチャーと共にLake Oswego Reviewという地元の新聞紙から取材を受けました。まだ授業が始まっていなかったため、J-LEAPに参加したきっかけや今後の目標についてお話をさせて頂き、新聞とウェブ に掲載させて頂きました。

一年を終えて

一年目は、アメリカと日本の学校のシステムの違いや教師の授業への姿勢の違い、学習環境の違いなど、毎日驚きと戸惑いの連続で、環境に慣れるのにかなり時間がかかったように思います。それでも、実際に学んだ日本語を日本人に対して使うことが出来た、自分の日本語が日本人に通じたという学生の笑顔を見ると、私の存在が学習の手助けになっているのだという喜びと、大きなやりがいを感じることが出来ます。

こちらの高校生は、見た目こそ大人っぽく成熟しているようですが中身はまだまだ成長過程であると言えます。そのため、学生には単に日本語を教えるのではなく言語学習を通して人間として成長して欲しいと常に考えています。自分のバックグラウンドと異なる言語や文化を学び考える機会が、視野を広げ柔軟な考え方を持つきっかけになれば幸いです。そのような意味で、将来を担う国際人としての人材教育に少しでも貢献することが米国での日本語教育の最大の使命なのではないかと考えています。また、外国語教育の最大の魅力は、教師が常に学生から学ぶことが出来るということです。日々カルチャーショックを感じながらの授業は教師としても刺激的で、ある意味で文化の違いを学生に教わりながら一緒に成長していけることを嬉しく思います。

一年目は日々の業務に追われてしまい出来なかったことが多々ありましたが、二年目は日本語プログラム発展のために授業外での取り組みにより力を注ぎたいと思っております。具体的には、一年目に行った近隣の中学での出張授業により力を入れたり、コミュニティとのつながりを強め、学生が教室外でも日本語を使えるような活動を活性化出来たらと思っています。

  • 派遣先での写真その1
  • 派遣先での写真その2
  • 派遣先での写真その3
  • 派遣先での写真その4
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