米国若手日本語教員(J-LEAP) 8期生 総合報告書
ネブラスカでの二年間を振り返って

リンカーン・サウスウェスト・ハイ・スクール
平岡 優

サウスウェスト高校での日々

リンカーン・サウスウェスト高校に、日本語教師の一人として迎えられた2年間、リードティーチャー(以下、LT)と、生徒達に日本語を教える毎日はとても充実していて、あっという間に時間が過ぎて行きました。私はアシスタントティーチャー(以下、AT)として、授業のない時間などに教材作りをしたり、授業で文字を教えたり、LTとアクティビティーのデモンストレーションや新しい文法を紹介する為の寸劇をしたり、宿題のチェックや課題の評価をしたりしました。また、朝は週に一度、生徒と集まって日本語で話す、会話テーブルを担当しました。
2年目は、リンカーンに住む日本人の知り合いも増えたので、クラスに講師としてお迎えし、授業をして頂くことが出来ました。生徒達にとっては、茶道やよさこいソーラン節などの日本文化を学ぶ機会となっただけでなく、私以外の日本人と接する機会にもなりました。講師をして下さった日本人の方々は、私が帰国した後も続けたいと言って下さり、今後、地域の日本人との交流が、サウスウェスト高校の日本語プログラムに定着していったら嬉しいです。

生徒主導のジャパニーズクラブ

ジャパニーズクラブには、十数名のメンバーがいて、週に一度集まり、月に一度行うイベントを企画していました。イベントには、クラブに入っていなくても参加できるので、大抵40名前後の生徒が参加していることが多かったです。 赴任した年、イベントを企画する為に集まったミーティングでは、あまりクラブの生徒達から意見が出ず、LTやクラブ長に頼っている印象がありましたが、2年目は、新しく加わったメンバーから、色々な意見が集まり、先輩メンバーがリーダーシップを上手く取って、話し合いや投票でイベントを企画して実行していくようになりました。
その最初のイベントは三色団子作りでした。当日は私も作り方を教えたりして、生徒達とお団子作りを楽しみました。事前のミーティングでは、すすんで家庭科室を使わせてもらう交渉に行ったり、作り方を調べたり、調理器具や材料を家から持って来る生徒がいたり、皆とても協力的で、ジャパニーズクラブが生徒による自主的な活動になっていくのを感じました。 今年の3月は、日本からの留学生を迎えて、校内で宝探しをする予定だったのですが、新型コロナウイルスの流行により、出来なくなり残念でした。学校での授業が再開されたら、また工夫して有意義な活動を続けてくれることを期待しています。

帰国前の3か月間

私達の学校はブロック制(90分の授業が1日に4コマある4学期制)で、3月中旬から4学期目が始まります。オンライン授業になったのは、ちょうど4学期目の開始時期、日本語2と日本語4の後半の授業を始める頃でした。私達のクラスは、Google Classroomというツールを使って、月曜日に1週間分のプランと教材を生徒に送り、生徒はその日の課題をGoogle Classroomから提出する形を取りました。そして、どちらのクラスも生徒を少人数のグループに分け、週に一度、Zoomというオンラインミーティングツールを使って会話の時間をもちました。
私が担当した日本語4は、各曜日に「もじマンデー」や「カラオケ火曜日」などの名前を付けて、月曜日に漢字の学習、火曜日に歌の穴埋めや新しい語彙の学習、木曜日に教科書のストーリーを追って新しい文法の学習をするなど、流れを作りました。 オンライン授業になる前から、金曜日に、Flipgridというアプリを使ってスピーチを録音する、「フリップグリッドフライデー」という日を設けていましたが、オンライン授業の間は、生徒が録音する際に参考と出来るようなビデオを作って、課題と一緒に送るようにしました。私にとっても慣れないことで、時間もかかり大変でしたが、中には、私のビデオへの感想から課題の録音を始めてくれる生徒もいて、作ったビデオが生徒とのコミュニケ―ションに繋がり、オンライン授業による思い掛けない成果もありました。

姉妹校との交流

私達の高校は、千葉県に姉妹校があります。毎年7月に十数名、3月に2名の生徒がサウスウェスト高校を訪れるのですが、7月に来る生徒達は、夏休み中の為、私達の高校の普段の様子を見ることが出来ません。その為、姉妹校の生徒との交流が深まるよう、サウスウェスト高校を紹介するビデオを日本語3と日本語4の授業で作成することになりました。
ビデオの内容は生徒達が決め、学校制度、校内の施設、通学の仕方、スケジュール、放課後の過ごし方、イベントなどを紹介しました。このビデオを見れば、日本の生徒達がこちらの高校のこと、高校生の様子などが分かるように、学校生活の写真やビデオを入れて工夫しました。このプロジェクト後の生徒達の反応は、「大変だった」が多かったのですが、生徒達の日本語の力が伸びたのを感じましたし、やりとげたことで自信もついたように見えました。自分達が作ったビデオが実際に使われ、日本の生徒の役に立つということは、とても良いモチベーションとなったようです。 1年目は、日本語を楽しく学んでもらいたいという思いが強く、新しい単語や表現を覚えるのに、ゲーム形式で楽しめるアクティビティーをよく行っていましたが、楽しいだけではない、やりがいのある活動をすることの大切さを感じました。

J-LEAPを終えて思うこと

たくさんの人の優しさに触れた2年間でした。LTや生徒達、同僚の先生方、そしてリンカーンで出会った皆さんには、本当に温かく受け入れて頂きました。熱心で生徒への愛情たっぷりのLTのそばで日本語を教えることで、その楽しさや生徒との信頼関係を築いていける喜びを味わうことができ、今後もまた日本語教育に携わりたいと思いました。そして日本の公立の学校で外国語を教えることにも興味をもちました。J-LEAPで得た経験を活かして、色々と挑戦してみたいです。
サウスウェスト高校の日本語クラスは、外国語の中で1番規模が小さく、生徒の数は少なかったのですが、クラスの雰囲気はとても良く家族のようでした。和気あいあいと、高校生が楽しく外国語を学べる環境は素晴らしいと思います。関わった生徒達が、以前よりも日本語や日本文化を好きになってくれていたら嬉しいです。
また、他の外国語の先生からも良い刺激を受けました。州や全米で行われた研修に参加して、面白いと思った教え方やアクティビティーを持ち帰り、LTと授業に取り入れたこともあります。このように上手くいったこともありますが、ATとしてもっと出来ることがあったかもしれないとも思います。例えば、私の活動は派遣先の高校が中心でしたが、近隣の大学の日本語教師や学生達との連携も築けていたら、サウスウェスト高校の日本語プログラムがもっと発展するきっかけになったかもしれません。今後、J-LEAPプログラムなどで派遣される方々には、良いと思ったことや、やってみたいと思ったことには、積極的に挑戦し、地域に飛び込んで、最大限にこの貴重な機会を活かして頂けたらと思います。

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