世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) アインシャムス大学での活動

アインシャムス大学
山口覚

アインシャムス大学外国語学部はエジプトの外国語教育の中心と考えられています。1835年に創設された外国語専門学校を前身とし、1950年にアインシャムス大学外国語学部に統合され、設立当初より現在に至るまで優秀な卒業生を輩出しています。日本語学科は2000年秋に設立されました。日本語学科は人気が高く他言語の学科より入学が難しく、高校までの成績がトップレベルであることが求められます。日本の伝統文化やポップカルチャーへの興味から日本語学科を志望したという学生もいますが、外国語学部の成績優秀者の集まる学科というステータスに惹かれて入学してきた学生も少なからず存在します。志望動機はともあれ教室はいつも熱気ムンムン。学生たちはもともとの勉強好きな性格に加えて、エジプト人ならではの積極的かつネアカな性格もあり授業はいつも活気にあふれています。

派遣先機関における日本語専門家の役割

大学から期待されている国際交流基金派遣日本語専門家(以下、専門家)の活動は学科運営です。学科のエジプト人の先生たちとの協力で進めています。彼らは論文や大学の他の業務、家庭のことなどで多忙であるにもかかわらず常に積極的な参加姿勢を見せてくれています。将来的な学科運営の自立に向けては博士号を持つ専任エジプト人教官が出現することが期待されますが、それにはまだ何年も待たなければなりません。少なくとも博士号取得者が出るまでは専門家からのサポートが不可欠なものとなっています。

文化紹介デー

おりがみのデモンストレーションの写真
おりがみのデモンストレーション

このイベントは他学科の学生に対して日本文化を紹介することを目的としています。また同時に学生たちが日頃の日本語学習の成果を発表できる場でもあります。このイベントの素晴らしいところは企画から運営まで学科の学生が主体となって行っていて、関係者との調整の仕方やチームワークなどを学ぶことができるというところです。本年度も4年生が中心となって役割分担を決め、計画的に準備を進めました。プログラムは「合唱」「折り紙デモンストレーション」「盆踊り」などです。歌にはラップや踊りを取り入れたものもあり、ふだんの教室活動ではわからない学生の隠し持った才能に驚きます。観客を巻き込んでの「ことわざクイズ」では物怖じしないエジプト人のパワーがものすごく、教師までが果敢に参加する姿にお祭り好きの国民性を感じました。「コスプレ大会」では、参加者はアニメの登場人物に扮して歌や演技を披露しました。また会場外にも、学生が来場者の名前をカタカナで書くサービスや、日本の風景のパネルが飾られ、賑々しい雰囲気に包まれました。当日AV機器がうまく作動せず進行が遅れ日本人としてはハラハラする場面がありましたが、そこは時間通りに物事が進まないということが多いエジプトのこと、来場のお客さんの反応もいたって平穏で、ポッカリと空いた時間に学生がステージ上で独唱を披露して喝采を浴びるなど、終始和やかな雰囲気のなかで大成功のうちに幕を閉じたのでした。

日本語弁論大会

スピーチ初級部門3位のバスマさんの写真
スピーチ初級部門3位のバスマさん

エジプトの日本語教育のもう一つの雄であるカイロ大学日本語日本文学科の40周年を迎えました。これを記念し弁論大会が開催されました。大会はエジプトで日本語を学んでいる学生を対象とし、スピーチ部門が初級と中上級に、その他オープン参加のプレゼンテーション部門にわかれ、それぞれの参加者が熱弁をふるいました。発表者はマイクに自分の声が届かないと見るや、会場全体にとどく大きな声で話し出す、マイク台からマイクをもぎとって歩きながら演説をするなど、他のスピーチ大会ではなかなか見られないパフォーマンスを見せ、会場も大いに湧き上がりました。

アインシャムス大学からは7名が参加、これは参加6機関24名中最多であり、層の厚さを見せました。惜しくも優勝には届かなかったものの、プレゼンテーション部門ではアインシャムス大学から出場した学生が2位に、初級スピーチ部門では3位にそれぞれ入賞し、応援にきたクラスメートや指導にあたった教師たちと喜びを分かち合いました。

派遣先機関における日本語教育の課題

日本語学科では教師の確保が例年の課題になっています。現地にも即戦力となりうる日本人教師は数が限られています。一方、求人を出して日本から教師を呼び寄せることは待遇面のことから非常に困難と言わざるを得ません。折角応募してもらったものの大学の定める定年規則によりお断りしなければならないこともありました。

学生たちは入学後には大量の課題をこなす日々が続きます。おしゃべり好きのエジプト人学生だけに全体的に会話力が高いですが、やはり読み書きは負担に感じられるようです。特に漢字の知識が十分でない学生にとっては中級以降に負担が大きくなっています。学科のカリキュラムの整備も専門家の重要な仕事の一つとなっています。将来の現地化をふまえ、エジプト人スタッフへスムーズな受け渡しができるよう、運営面でのしっかりとした土台を築いていきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 アインシャムス大学
Ain Shams University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
アインシャムス大学外国語学部日本語学科は2000年に設立された日本語専攻課程である。2004年には日本語・日本文学専攻の大学院修士課程も開設された。当大学はエジプトの外国語教育では高い評価を得ており、エジプトの日本語教育の中心的存在になっている。日本語専門家は学科運営、カリキュラム作成や現地スタッフへの指導、助言など行っている
所在地 Abbaseiya, Cairo, Arab Republic of Egypt
国際交流基金からの派遣者数 専門家:2名
日本語講座の所属学部、
学科名称
アインシャムス大学外国語学部日本語学科
日本語講座の概要

沿革

講座(業務)開始年
2000年
国際交流基金からの派遣開始年
2000年

コース種別

専攻科目
 

現地教授スタッフ

常勤3名(邦人3名)助手11名(うちエジプト人助手11名)
 

学生の履修状況

履修者の内訳
1年生27名、2年生16名、
3年生16名、4年生8名
学習の主な動機
日本に対する興味、日系企業への就職、観光ガイド、
翻訳・通訳者
卒業後の主な進路
日系企業就職、観光ガイド、大学院進学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N2程度
日本への留学人数
1~4名程度

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