世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) アインシャムス大学での活動

アインシャムス大学
山口覚・松岡英輔

日本へ行きたい

山口覚

アインシャムス大学外国語学部の日本語学科は学部内でのステイタスが高く、毎年成績優秀な学生が入学している。本年度も元気な精鋭たちが入学してきた。彼らの夢の一つは日本へ行くことである。提携大学への交換留学や文部科学省の留学プログラムの他、国際交流基金のスキームでの訪日研修の機会が学習の大きなモチベーションの一つとなっている。一方、日本語学科の授業を担うエジプト人の助手らも、自らの日本語力向上のためのみならず研究のための資料集めなどのために日本へ行きたいという気持ちが強い。日本への留学を経験したもののほとんどは再度日本に戻りたいという気持ちを継続して持っている。本年度アインシャムス大学は広島大学と大学間提携を締結した。その他の日本の大学とも提携の話が進行中である。専門家はこのような場合に窓口となって日本側との連絡調整を行っている。学生たちや学科スタッフらの期待を受け、締結へのすべてのプロセスは専門家にとっても夢と希望が湧いてくる瞬間である。

今年も文化紹介デー

山口覚

2012年より、外国語学部では各言語学科が学習言語の文化を紹介する発表会が行われている。その中でも日本語学科の発表はとりわけ面白いといううれしい評判も聞かれる。本年度は留学から帰国した4年生が9名と例年よりも多く、日本の文化祭の盛り上がりを知る彼らが強力なリーダーシップを発揮してくれた。何をするにつけ時間のかかるエジプトにあって、歌、踊り、芝居、プレゼンなどバラエティに富んだ内容をよどみなく時間通りに進めていく様には「ここは本当にエジプトか?」と舌を巻いた。昨年度は大学の音響機材に不調があり残念であったが、本年度はその反省から学生らは機材をレンタルし、その費用をまかなうためにスポンサーを募る、手作りの寿司を販売(完売)するなどし、資金運営面でも抜け目のなさを見せた。イベントは日本のニュースや新聞にも取り上げられ学生らはホクホクであった。イベントから数日後の反省会では「チームワークの経験が良い思い出になった」という声が多く聞かれた。感動で泣いている学生もいた。学生らは準備や運営を通じて多くのことを学んだはずである。このような真剣な取り組み自体が日本の集団文化の理解へつながるのだろう。そのためにも日本との交流や日本からの継続的なサポートが必要なのである。

イベント会場内の様子の画像
イベント会場内は熱気ムンムン

来場客に書道と折り紙を紹介している様子の画像
来場客に書道と折り紙を紹介

自立化へ一歩

松岡英輔

2014年4月にカイロに着任し、あっという間に月日が流れ、もうじき帰任の日を迎えようとしています。ここアインシャムス大学においては、新しい教科書の導入とカリキュラムの改善を行い、また、それらが学科全体のカリキュラムの中で上手く機能するよう現地人の教師達を技術的な面で指導してきました。

カリキュラムは各回のバランスを取りながら作成していくことが肝要であり、偏りすぎないカリキュラムの作成の難しさを感じました。作成中大変なこともありましたが、昨年の9月以降の新中級教材と新カリキュラムによる授業開始後、学生から喜びの声が学科のフェイスブックのページにありました。予てよりアインシャムス大学では長期にわたって中級教材が更新されず、学生、現地人日本語教師より中級教材とカリキュラムのアップデートの要望があがっていました。現地のその要望にこたえることができ、大変嬉しく思っております。

また、新中級教材と新カリキュラムを使用する現地人教師に対して、中級授業に関する指導を公開授業や授業見学を通じて行い、適宜アドバイスを行いました。その現地人教師達は、私がカイロ日本文化センターの養成講座で理論を教えた受講生達です。私の帰任後、その人達が新カリキュラムを継承していってくれたら、こんなに嬉しいことはありません。

日本語学科の完全な自立化までは、まだまだ長い時間がかかると思いますが、現在において現地人教師達が様々な授業を教えるようになり、自立化へ向けての大きな一歩を踏み出しました。近い将来、日本語学科が完全な自立化を成し遂げ、エジプトの日本語教育の中枢としてさらに大きく発展していってくれたらと切に願います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称 アインシャムス大学
Ain Shams University
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
アインシャムス大学外国語学部日本語学科は2000年に設立された日本語専攻課程である。2004年には日本語・日本文学専攻の大学院修士課程も開設された。当大学はエジプトの外国語教育では高い評価を得ており、エジプトの日本語教育の中心的存在になっている。日本語専門家は学科運営、カリキュラム作成や現地スタッフへの指導、助言など行っている
所在地 Abbaseiya, Cairo, Arab Republic of Egypt
国際交流基金からの派遣者数 専門家:2名
日本語講座の所属学部、
学科名称
アインシャムス大学外国語学部日本語学科
日本語講座の概要

沿革

講座(業務)開始年
2000年
国際交流基金からの派遣開始年
2000年

コース種別

専攻科目
 

現地教授スタッフ

常勤3名(邦人3名)助手17名(うちエジプト人助手17名)
 

学生の履修状況

履修者の内訳
1年生25名、2年生27名、
3年生9名、4年生24名
学習の主な動機
日本に対する興味、日系企業への就職、
観光ガイド、翻訳・通訳者
卒業後の主な進路
日系企業就職、観光ガイド、大学院進学
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N2程度
日本への留学人数
4~9名程度

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