日本語専門家 派遣先情報・レポート
キングサウード大学
派遣先機関の情報
- 派遣先機関名称
- キングサウード大学
- King Saud University
- 派遣先機関の位置付け及び業務内容
- キングサウード大学では1994年に日本語専攻課程が開設された。1998年に、それまでの3年制から予備教育期間を含めた5年制の課程となり、2018年からは4年制となっている。日本語専攻課程は日本語学習を通じた全般的な異文化理解教育を目指していて、カリキュラムは通訳や翻訳といった実務的かつ高度な運用能力を育成すべくデザインされている。湾岸諸国で唯一、日本語専攻の学士号が取得できる教育機関であることから、湾岸諸国における日本語教育の中核を担う役割を期待されている。専門家は授業担当、カリキュラム・教材作成に対する支援、研究への助言などを行う。
- 所在地
- P.O.Box 87907, Riyadh 11652, Kingdom of Saudi Arabia
- 国際交流基金からの派遣者数
- 専門家:1名
- 日本語講座の所属学部、学科名称
- 言語科学部 ヨーロッパ・東洋言語学科 日本語専攻課程
- 日本語講座の概要
-
沿革 講座(業務)開始年 1994年 国際交流基金からの派遣開始年 1993年 コース種別 専攻 現地教授スタッフ 常勤5名(内、邦人1名)
基金派遣専門家1名学生の履修状況 履修者の内訳 1年生:35名 2年生:30名 3年生20名 4年生:15名 学習の主な動機 日本への憧れ、留学、日系企業への就職 卒業後の主な進路 日系企業や現地公的機関、企業への就職、大使館勤務、留学 卒業時の平均的な
日本語能力レベル日本語能力試験N2を受験可能な程度 日本への留学人数 ほとんどなし
リヤドでのJLPT新規実施
キングサウード大学
佐藤 修
サウジアラビアは豊富な石油埋蔵量を誇るエネルギー大国で、日本にとって最大の原油供給国です。そのサウジアラビアでは、石油依存体質からの脱却と産業の多角化を目指して2016年に「サウジ・ビジョン2030」が発表され、近年急速に経済、文化、教育などの多くの分野において改革が進められています。
そんなサウジアラビアで2022年度に2箇所で日本語能力試験(以下、JLPT)が始まりました。2022年7月にはジッダのダールアルヘクマ大学で、2022年12月にはリヤドのキングサウード大学で日本語学習者念願のJLPTが新規に実施されました。
本稿では専門家が派遣されているキングサウード大学で行われた12月試験について報告します。
予想以上の応募者数
12月試験のオンライン受付は当初、7月に開始する計画でした。しかし、キングサウード大学内部での手続きに想定よりも時間がかかってしまい、受付開始が大幅に遅れてしまったのでした。
応募受付期間が短くなってしまったので十分な人数が集まるか心配していたのですが、結果的には想定していた100名を超える136名からの申し込みがあり、120名が受験しました。それだけJLPTへの需要が高まっていたということでしょう。
受験者は、サウジアラビア国内各地からのみならず、アラブ首長国連邦、バーレーン、クウェートといった湾岸諸国からも集まりました。キングサウード大学の日本語専攻課程は湾岸諸国で唯一、学士の学位が取れるところであり、当該地域において中核を担う役割を期待されているのですが、今回の試験実施はその好例となったと思います。
男女が同じ教室で受験
応募者136名のうち、男性は63名、女性は73名で、女性が半数以上を占めました。キングサウード大学会場で特に気を付けたのは、男性受験者と女性受験者の受付を別にし、座席を可能な限り離せるよう工夫することでした。それは次のような文化背景があるためです。
サウジアラビアは小学校から男女別学が普通で、キングサウード大学も男子キャンパスと女子キャンパスに分かれています。2018年に女性の運転が解禁されたことが大きなニュースになりましたが、近年サウジ社会は大きく変化していて、働く女性の割合が急激に高まり、男女が同じ職場で働くことも珍しくなくなってきています。しかし、大きく変化している最中だからこそ、保守的な考えを持つ方々への配慮が欠かせません。実際、試験前の問い合わせでは、男性と一緒に受験することを心配する女性からの声が数件ありました。確保できる会場数(教室数)や試験監督員の人数の関係で男女で教室を分けることはできなかったため、教室内でできるだけ座席を離すなどの対策を取る必要がありました。
大会場の様子
今後の円滑な運営に向けて
試験当日はなんとか大きな問題は起こらずに、無事JLPTを実施することができました。
今後の課題は継続性です。今回は初回だったため、応募登録作業など、どのような作業をどのように進めていけばよいかが分からなかったものは、派遣専門家だけで行ってしまいました。しかし、専門家は任期が終われば、いずれいなくなってしまうため、JLPTの運営は現地スタッフ中心で行っていかなければいけません。今回作成したマニュアルを使いながら、現地スタッフの皆さんと一緒に次の試験のための作業をしていくことで、スムーズに引き継ぎを進めていきたいと考えています。