世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 土日基金文化センターの日本語講座

土日基金文化センター
建木千佳

2000年から土日基金文化センター(以下TJV)で始まった日本語講座も16年目に入りました。開講当初から日本語専門家(以下専門家)が派遣されています。TJVは、トルコ資本で作られましたが、外務省、国際交流基金、日系会社の支援を受け、大小2つのホール、展示スペース、蔵書1万6千冊(和書を含む)の図書館を有する施設で、トルコと日本の文化活動を支援しています。特に、日本語関連行事の日本語能力試験(以下JLPT)とアンカラ日本語弁論大会は、実行委員会として企画、運営を行っています。

TJVは、昨年からいくつもの新しいチャレンジをしてきました。まずは日本語講座です。新規受講生からメインテキストを『まるごと』に変え、学期に1度は日本人との交流を設けるようにしました。TJV日本語講座は、1学期が40時間ですが、学期後半には、入門レベルでも日本語が話せるようになります。テキストや友達、先生の手を借りながらですから、ペラペラとはいきませんが、習い覚えた日本語で、一生懸命自分を表現しています。その姿を見ると、日本人ならきっと応援したくなるでしょう。

今年に入ってから、2つ文化体験を行いました。1月の書初めと4月の茶道です。

書初めでは、今年の抱負や希望を漢字で書いてもらい、その字を選んだ理由もききました。今回は、「平和」「安心」「幸せ」と書いた人が多かったです。昨年10月、120余名の死者を出したアンカラのテロ、トルコ南東部の争い、沿岸地域に漂着したシリア難民のボート。これらの犠牲は普通の人々や幼い子供たちです。受講生が、それを悼んで、平和を強く求めていることが分かりました。書初めは、受講生の目を社会に向け、いろいろなことを考える機会を与えるものとなりました。

茶道の様子の画像
茶道

茶道は、日本文化の真髄とも言えるものです。基本は相手への配慮、お客様のおもてなしです。この心は、日本人、日本語の理解にも欠かせません。お客様として参加した受講生は、抹茶の味が気に入ったようです。皆おいしかったと感想を述べると同時に、お点前を見せてくださったお師範に、お礼の言葉も忘れませんでした。これこそ、文法や漢字よりも大切な日本語教育ではないでしょうか。

TJVの日本語講座は、一般向けのものですが、人間教育の一端を担っています。日本語の授業では、実社会や世界に目を向け、いろいろ考え、それを他の人とシェアしてほしいと思っています。それは、21世紀を生きるためのスキルにつながります。講座担当者は、日本語を通して、これからを生きていくのに必要なスキルが身につけられるように、内容を考えていくべきだと思います。 今年のアンカラ日本語弁論大会では、初めてアトラクションを設け、トルコ人と日本人のコラボレーションを発表しました。TJV日本語講座の受講生と、昨年9月から始まった補習校高学年の生徒たちの群読です。にぎやかな祭りを詠んだ北原白秋の詩をアレンジしました。頭にねじり鉢巻き、子供たちは浴衣姿で、ソロと太鼓はトルコ人。皆で「わっしょい、わっしょい。」声を合わせて、気持ちも1つに、最後もピタッと決まって、素晴らしい発表でした。年齢差もあれば、文化も異なるトルコ人と日本人ですが、1つのものを一緒に作り上げるという作業を通して、「協働」の大切さに気付いてもらえたらと思いました。これも日本語教育が目指す大切なものの1つだと思います。

群読の発表の様子の画像
群読

トルコの日本語教育は、ほとんどが大学のコースですが、日本語を学びたい人は大学生だけではありません。日本語を学びたい人は誰でも大歓迎というのが、TJV日本語講座です。受講生には中学生もいれば、大学教授もいます。週に1回ですが、同じ空間で、同じ時間を共有します。そこで、新発見をしたり、知識を得たりして、新しい友達を作っています。それが、TJVの日本語講座で、その運営をローカルスタッフと一緒にするのが、専門家です。

トルコは中東地域で最大数の日本語学習者を有する国です。しかし、日本語学習機関は限られた地域にしかありません。国土が日本の約2倍もあるので、国内移動も時間がかかります。でも、全国各地に日本語を勉強している人がいます。日本語能力試験(以下JLPT)の申し込みがオンラインでできるようになったので、遠隔地からの応募も容易になりました。JLPTの応募者は毎年増えています。また、独学で日本語を勉強している人も多くなっています。こういう人たちの日本語学習をサポートするのも、TJVと専門家の役割です。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Turkish Japanese Foundation Culture Center
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
トルコにおける日本文化紹介、文化交流の中心となるべく設立された機関。設立時に日本からの支援で、視聴覚機材が寄贈され、多目的ホール、セミナーホールにて各種文化事業が行われている。
専門家は土日基金文化センター内の日本語講座、日本語能力試験、弁論大会等の日本語関連イベント企画・運営、及び日本語教育機関への支援を行う。
所在地 Ferit Recai Ertugrul 2 Oran Ankara 06450 Turkey
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
土日基金文化センター 日本語講座
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年   2000年10月1日
  国際交流基金からの派遣開始年   2000年
 
コース種別
  一般市民講座
 
現地教授スタッフ
  常勤 3名(うち邦人1名) 非常勤 1名
学生の履修状況
  履修者の内訳   受講生の年齢は13~50歳代で、各学期130名を超える。
  学習の主な動機   日本文化への興味
留学希望
  卒業後の主な進路   一般市民講座のためなし
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
  日本語能力検定N4受験可
  日本への留学人数   ほとんどなし

ページトップへ戻る