世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 10年目のソウル日本文化センター

国際交流基金ソウル日本文化センター
小西 広明・鎌田 牧子・鎌田 美保

日韓国民交流年の2002年、国際交流基金ソウル日本文化センター(以下、センター)は産声を上げました。10歳になった今、わたしたち日本語教育専門家がどんな活動をしているのかご紹介したいと思います。日本語教育業務は多岐にわたっていますが、以下のように大きく四つに分けることができます。

1.研修事業
2.学習者支援事業
3.情報交流事業
4.日本語講座の運営

1.研修事業

JFスタンダードの研修の写真
JFスタンダードの研修

2009年海外日本語教育機関調査によれば、韓国では3,900人の先生方が中学校、高校で日本語を教えています。わたしたちはその先生方を対象としたさまざまな研修会を実施しています。

毎年夏と冬には、センター主催でソウル、釜山を会場として、30時間の集中研修を実施しています。2001年の冬に始まったこの研修会は、2011年冬の研修から第7次プログラムが始まりました。今期のテーマは「評価について考える」です。これまで延べ1,000人以上の先生方が受講しています。

また韓国では、すべての市道(韓国の行政区画単位)に、中等教育機関の先生方のネットワークである「日本語教育研究会」があり、地域ごとに研修会を実施しています。わたしたちはそこへ巡回ワークショップという形で出講し、講義やワークショップを開いています。2011年度は全国16市道のうち10市道で講義・ワークショップを行いました。

集中研修でのポスター発表の写真
集中研修でのポスター発表

さらに大田市では年6回の定期研修会、京畿道では1か月間に及ぶ集中合宿研修など、さまざまな形での研修事業に取り組んでいます。

今後は、わたしたち専門家が主催し、中心になって実施する研修会だけではなく、各地域の先生方が主催する研修会のコーディネート業務を行っていきたいと考えています。地域の特色や実情に合わせた効果的な研修を実施するためには、地域のベテラン教師、日本語母語話者教師、さらに高等教育機関の先生方も一緒になって、縦横のアーティキュレーション確立を視野に入れた研修会が必要になってくるのではないかと思っています。

2.学習者支援事業

韓国では教育課程の改定などによって、今後学習者の減少が懸念されています。センターでは少しでも多くの若者に日本語を学ぶ楽しさ、異文化を知る喜びを味わってもらおうと学習者支援事業に力を入れています。具体的には全国各地で開催される日本語弁論大会、クイズ大会、演劇大会などへの助成や審査員参加です。2012年度もすでに十数件の事業予定が入っています。また、わたしたちが学校を訪問する教育機関訪問や、センターに来ていただく訪問受け入れなども積極的に実施しています。そこで日本人教師による日本語授業体験や日本文化に触れる機会を提供しています。

2011年度から始まった浴衣の貸出事業も大変好評を博しています。

3.情報交流事業

センターホームページでは、オンラインニューズレター「カチの声」を公開しています。2002年8月発行の第1号から最新第64号まですべてオンラインで見ることができます。ここには日本語学習者のための日本に関する最新の情報やデーター、また先生方のための日本語知識や教授法などが掲載されています。

また情報の収集と発信のため、各種学会や教師会に参加し、中等日本語話者教師のための情報交換会と日本語教師サロンを年に8回主催しています。

4.日本語講座の運営

センターでは2002年の開所当時から一般日本語講座を開講してきました。この講座は、もともとは日本語能力試験1級(N1)合格者だけを受講対象とした講座で、上級学習者の多い韓国だからこそ開講できた講座と言えます。ここではコミュニケーション言語活動の「産出」「やりとり」を中心とした「待遇表現」「対話技術」「テーマ討論」など、他に例を見ない特色ある講座が開かれています。

また従来6科目9クラス程度だった講座数を2011年度から順次拡充し、2012年度前期には10科目16クラスまでになっています。同時に「俳句」や「かるた」「能」などといった日本文化紹介クラスもスタートさせました。さらには受講対象者を日本語能力試験(N2)レベルまで引き下げるなど、より多くの学習者に受講していただけるよう工夫を重ねています。

まだまだ紹介しきれない楽しくてやりがいのある仕事がたくさんあります。20歳のわたしたち、30歳のわたしたちをどうぞよろしくお願いします。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Foundation, Seoul
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
韓国の日本語教育全般を把握するため、資料収集、現状調査を行うとともに、教師を対象とした支援を大きな柱とした各種支援を実施する。 具体的には、各種中等日本語教師研修、地方日本語教育研究会への出講及び研究プロジェクトへの協力、中学校および高校への訪問授業等である。また、日本語能力試験1級合格レベルの学習者を対象とする日本語講座を開講している。さらに韓国全土に向けてホームページや電子ニューズレター等の媒体を活用した情報提供も行っており、ソウルと地方の情報格差をできるだけ小さくする努力も行っている。
所在地 Vertigo Bldg. 2&3F
Yonseiro 8-1, Seodaemun-gu, Seoul 03779, Korea
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名、専門家:1名(嶺南地域担当除く)
国際交流基金からの派遣開始年 2002年

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