日本語専門家 派遣先情報・レポート
国際交流基金ソウル日本文化センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
国際交流基金ソウル日本文化センター
The Japan Foundation, Seoul
派遣先機関の位置付け及び業務内容
韓国の日本語教育事情の把握、日本語教育関係機関及び日本語教育関係者とのネットワーキングに努めるとともに、日本語学習者と日本語教師の双方を対象とした多様な支援を行っている。 具体的な支援活動は各種中等日本語教師研修の実施、各地域の日本語教育研究会・日本語教師会への出講、日本語教師・日本語学習者を対象とした特別セミナーの開催、日本語教師との協働・ネットワーキング及び情報収集を目的とした中学校・高等学校訪問、日本語講座の実施、学会参加等を主軸として活動を行っている。また、韓国全土に向けてSNSを通じた情報提供を行っている。
所在地
Office Bldg. 2F, Twin City Namsan, 366 Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul 04323, Korea
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:1名、専門家:2名
国際交流基金からの派遣開始年
2002年

ことばと文化を合わせて楽しく学ぶ活動アイディア

ソウル日本文化センター
古閑紘子、大田祥江

巡回展とコラボ!妖怪ワークシート

国際交流基金では、日本の美術や文化を海外へ紹介する活動の一環として、海外での巡回展事業が行われています。2022年度は韓国でも「妖怪大行進:日本の異形のものたち」の展示会がソウル、済州、慶州の3カ所で行われました。この展示会では、日本の妖怪たちが描かれた絵巻や浮世絵、映画のポスターや玩具などの展示を通して、日本の妖怪文化に触れることができます。ソウル日本文化センター(以下、JFソウル)では、この展示会の開始に合わせて、日本語を学ぶ中高生を主な対象とした「妖怪ワークシート」を作成し、ウェブサイト(https://www.jpf.or.kr/index/s6/s6_1.php?wr_id=1148&page=2)で公開しました。ワークシートは「①ことばと表現」「②妖怪を知ろう」「③妖怪をデザインしよう」の3種類で、展示会に行っていなくても使うことができる内容です。

妖怪ワークシートの写真
妖怪ワークシート

「①ことばと表現」では、妖怪の絵やイラストを見ながら語彙・表現を確認する問題があり、最終タスクでは絵巻物に描かれた妖怪の中から好きな妖怪を選んで日本語で表現します。語彙の意味を確認するタスク以外は決まった答えはなく、生徒が自由な発想で妖怪を表現できるようになっています。
「②妖怪を知ろう」では、まず、韓国での/自分にとっての妖怪のイメージや、韓国に妖怪と似たようなものがいるかを考えます。次に日本の妖怪の絵を観察し、どんな妖怪だと思うか、どうしてか、感じたことを自由に書き出します。最後は日本でよく知られている妖怪(または自分が知りたい妖怪)について調べて特徴をまとめます。個人で取り組むこともできますが、ペアやグループで考えやイメージ、情報を共有しながら取り組めると、「妖怪とは何なのか?」をより深く考えられます。
「③妖怪をデザインしよう」は、「あまびこ」という妖怪の見た目とプロフィールを確認し、「あまびこ」の仲間の妖怪を自分でデザインしてみるというタスクです。妖怪のイラストやプロフィール、口癖を考える中で想像力・創造力を発揮し、妖怪のイメージを膨らませることができます。
このワークシートを教師研修で紹介したところ、ぜひ使ってみたい!という声が多く挙がりました。今後多くの教師・生徒に活用してもらえたら嬉しいです。

日本語キャンプで楽しく交流!

2022年12月、韓国中部にある忠清南道で「日本語1日キャンプ(以下、キャンプ)」が現地の教育庁主催で開催されました。このキャンプは忠清南道の小中学生が日本語と日本文化に触れることを目的とした1日完結のワークショップ型キャンプで、計4日間で213名が参加しました。JFソウルは忠清南道日本語教育研究会から要請を受けて活動内容やコースデザインの検討と決定、教材の提供を行ったほか、日本語専門家2名が現地に赴いて現地の日本語教師や大学生補助講師(以下、TA)と授業を担当しました。
キャンプの時間割は、午前2コマ、午後2コマで、午前は大ホールでの全員参加型、午後は4クラスに分かれての活動です。 日本や日本語の知識がなくても気軽に楽しめる内容にすること、生徒たちの日本・日本語への興味・関心を掻き立てるバラエティに富んだ活動にすることを意識して構成しました。
午前の1コマ目はアイスブレイク(自己紹介)で、最初のうちは声が小さかった生徒たちも、講師とTAの元気な声につられて次第に大きな声であいさつや自己紹介ができるようになっていました。2コマ目の盆踊りでは、手足の動きと「いち、に」「うえ、した」などの日本語をリンクさせながら繰り返し練習することで、言葉も自然に覚えられるようにしました。いずれの活動も、学校・学年が異なる生徒たちが大勢と交流・コミュニケーションを図れるよう工夫してあります。

大ホールでの盆踊りの写真
大ホールでの盆踊り

午後はクラスに分かれてのおりがみとバナナアートで、3~4人の小グループで助け合いながら作品を作りました。完成後はグループ内や教室全体で作品について話し合ったり紹介し合ったりして、生徒同士や講師・TAと交流しながら進めました。また、「かわいい」「かっこいい」などの単語を繰り返し提示することで「自分で使ってみる」流れができるようにしてあり、生徒からは自然に「かわいい!かっこいい!」の声が挙がっていただけでなく、ほかに知っている日本語で表現しはじめる生徒もいました。

休み時間には講師に翻訳機を使って話しかけてきたり自分の持ち物をプレゼントしてくれる生徒もおり、積極的にコミュニケーションを取ろうとする様子が見られました。多くの生徒にとって初めての日本語・日本人だったと思いますが、楽しみながら日本語と日本文化に触れるというキャンプの目的は達成できたのではないかと思います。キャンプに参加した生徒たちがこれをきっかけに、この先日本・日本語への関心を膨らませてくれることを願っています。
JFソウルではこれからも各地域の教師会や先生方と協力し、韓国の日本語教育を盛り上げていけるよう努めていきます。

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