日本語専門家 派遣先情報・レポート
モンゴル日本人材開発センター

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
モンゴル日本人材開発センター
Mongolia-Japan Center For Human Resources Development
派遣先機関の位置付け及び業務内容
  1. (1)JF講座としての日本語コースの企画・運営支援及び副教材の開発修正支援
  2. (2)日本センター講師・非常勤講師対象の日本語教育専門研修の実施
  3. (3)日本語教師向け講座の実施
  4. (4)地方の日本語教育機関の情報収集を含むモンゴルにおける日本語教育状況の把握
  5. (5)モンゴル日本語教師会との連携を通じての日本語教育関連事業の支援、および日本語教育ネットワーク形成支援
  6. (6)「特定技能」制度開始に伴うモンゴルの日本語教育拡充及び国際交流基金日本語基礎テストに関する理解促進
所在地
Mongolia-Japan Center Building,Uraanbaatar, Mongolia
国際交流基金からの派遣者数
専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年

記念イヤーとなった日本センターの日本語教育事業

モンゴル日本人材開発センター
鶴田靖行

モンゴル日本人材開発センター(以下、日本センター)は、モンゴルの市場経済化の促進及びモンゴルと日本の相互理解促進に寄与する人材の育成を目的として、2002年に国際協力機構(以下、JICA)とモンゴル教育省、モンゴル国立大学の協力により開設されました。その後2012年にモンゴル国立大学の一部門として独立採算ユニット化され、2022年に開所20周年を迎えました。

日本センター開所20周年式典の写真
日本センター開所20周年式典

国際交流基金(以下、JF)は日本センターの開設以来、日本語専門家を派遣して、モンゴルの日本語教育の発展に寄与してきました。2012年には日本センターにJF日本語教育スタンダードに準拠したJF講座を開講し、2022年にJF講座開設10周年を迎えることができました。

さらに、2022年は日本・モンゴル外交関係樹立50周年やモンゴル国立大学創立80周年など、重要な記念すべき年でもありました。そのため、モンゴルでは1年を通じてさまざまな記念事業やイベントが開催されました。

JF日本語講座修了生の同窓会及び日本文化体験イベント

日本センターでは、JF講座開設10周年記念事業の一つとして、5月に「JF日本語講座修了生の同窓会及び日本文化体験イベント」を開催しました。これまで日本センターで日本語を学んだ人たちが再びセンターに集い、さまざまな日本文化体験を通じて旧交を温めるとともに、日本への関心や日本語学習のモチベーションをさらに高めることを目的にこのイベントが企画されました。

当日は修了生や現役生350名が参加し、水引作り、茶道、風呂敷、けん玉、浴衣の着付け、忍者体験、日本に関するクイズ大会など、7つの文化体験を楽しみました。会場では友人や先生方との再会を喜び合う姿がいたるところで見られ、活気に満ちた一日になりました。JF講座では今後も中級レベルまでの質の高いコースを提供し、モンゴルの人々と日本をつなぐ役割を果たしていきたいと思います。

初中等教育機関日本語教員向け研修

首都ウランバートル在住の日本語教員に比べると地方在住の初中等日本語教員は研修を受けられる機会がそれほど多くありません。そこで2020年1月に初めて地方在住の教員を対象にした研修会を開催しました。翌年からは対象をウランバートルの教員にも広げ、2023年1月に第4回目となる研修会を日本センターで開催しました。今回は地方の教員8名を含む30名の先生方が4日間、合計12時間の研修に参加しました。

研修内容は、事前に募った希望テーマから「外国語教育としての日本語授業」、「自律的な学習者を育てるためには」、「漢字」、「JLPT」の4つを取り上げました。「外国語教育としての日本語授業」と「自律的な学習者を育てるためには」では、日本の初中等教育機関で行われている外国語(英語)の授業動画や解説動画を使用し、外国語での言語活動を効果的に進める方法や自律的な学習集団の形成について、グループディスカッションを中心に理解を深める取り組みを行いました。モンゴルの先生方は授業方法や教材についてとても研究熱心ですが、日本の初中等教育機関で行われている「学習集団」づくりという考え方はとても新鮮だったようです。振り返りのコメントや事後アンケートで、「学習集団」づくりの重要性について触れる先生方が多かったのが印象的でした。

この研修会は年に一度、ウランバートルと地方の初中等教育機関の先生方がともに学びを深めるよい機会であり、教員間のネットワークを強化する貴重な機会にもなっています。日本センターでは、今後もこの研修会を続けていきたいと考えています。

特定技能制度に伴う日本語事業で新たな2つの取り組み

日本センターでは、JFから委託を受け、特定技能制度に伴う日本語事業を実施しています。今回新たな試みとして、2023年2月に『いろどり』教授実践報告会を開催しました。参加したのは民間の語学センターなどの日本語教師や日本語教育関係者45名です。当日は『いろどり』の概要説明の後、教育現場で実際に『いろどり』を使用している日本語教師4名(そのうち2名はJFの「特定技能制度による来日希望者のための日本語教授法研修」修了者)による実践報告が行われました。報告では『いろどり』を使用したコースの概要、授業の進め方、受講者の反応、悩みや解決方法などについて、実際に『いろどり』を使っている教師ならではのリアルな体験談やアドバイスが紹介されました。また、会場から多くの質問が寄せられ、活発なやりとりが行われました。

『いろどり』教授実践報告会の写真
『いろどり』教授実践報告会の様子

もう一つ新たな試みとして、2023年3月に特定技能制度に関する情報交換会を開催しました。特定技能制度に関わる4機関-モンゴル労働・社会保障省労働福祉サービス庁(GOLWS)、在モンゴル日本国大使館、JICAモンゴル事務所、日本センター-の担当者から直接話を聞ける貴重な機会だったこともあり、120名もの方が会場に詰めかけました。当日は日本側とモンゴル側の政府機関による特定技能制度に関する説明があった後、JICA専門家による「JICA人材キャリア支援プロジェクト」の紹介、そして日本センターの担当者からJFが実施する特定技能制度に伴う日本語事業について説明が行われました。この情報交換会を通じて、特定技能制度利用候補者へ日本語授業を行う機関や技能実習制度の送出機関などに対し、信頼に値する一次情報を提供することができたのではないかと考えています。日本センターでは今後も関連機関と協力しながら制度の普及促進に取り組んでいきます。

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