日本語専門家 派遣先情報・レポート
アルバータ州教育省

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
アルバータ州教育省
Alberta Education
派遣先機関の位置付け及び業務内容
州内の初等中等教育を管轄する政府機関。国際教育サービス課に所属し、交流プログラムや日本語教育への支援(学習指導要領、指導手引書、到達度評価文書等の開発、教材情報の提供、日本文化及び日本語教育振興行事の企画運営)を行う。カナダ全域のアドバイザーを兼任し、国際交流基金トロント日本文化センターとの連携のもとに、全国レベルでの日本語教育振興、教師研修、ネットワーク形成支援等を担当する。
所在地
Main Floor, 10044-108 Street NW, Edmonton, Alberta, Canada T5J 5E6
国際交流基金からの派遣者数
日本語上級専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年
2001年

オンラインのよさ、対面のよさを活かす

アルバータ州教育省
吉川 景子

 私が所属するアルバータ州教育省では、1年4か月に渡るリモートワークから、2022年4月、ついにオフィスワークに戻りました!職場で同僚と顔を合わせ、ちょっとしたおしゃべりができる環境の大切さを実感しています。一方、直接、学習者に教える仕事は含まれないため、業務のほとんどがオンラインです。アフターコロナでオンラインという選択肢が増えた今、オンラインと対面、両方のよさをどのように活かしていくか、考えていく必要があります。

オンラインのよさ

 アルバータ州教育省での業務は主に高校の日本語プログラムへのサポートです。高校生の日本語学習のモチベーションアップにつながることができないかと思い、2022/2023年のスクールイヤーに、いわゆる日本語学習の先輩をゲストに迎えるオンラインイベント、ゲストスピーカーシリーズを5回に渡って実施しました。高校で学習経験がある人、JET Programmehttps://jetprogramme.ca/)で日本に滞在したことがある人、マンガやゲームの翻訳をしている人、現在、日本の企業で働いている人など、アルバータ州に縁のあるいろいろな方に英語で経験談を話してもらい、その後で質問タイムを設けました。せっかくの機会なので、高校生に限らず、そしてカナダ全土から参加できるようにしました。いろいろな地域、時には日本にいるゲストとつなぎ、直接質問できる貴重な機会のため、参加者からは自分のキャリアパスを見据えた具体的な質問が次々と出されていました。いろいろなところにいる「先輩」というリソースを活用できるのがオンラインのいいところだと思います。
 国際交流基金トロント日本文化センターと連携した、カナダ全土を対象とする業務は、コロナ前から研修や交流の場をオンラインで実施する方向性が検討されていました。パンデミックを経た今、オンラインでの研修やネットワーク構築のための場の提供が業務の中心で、1-2か月に1回のペースで開催し、先生方が関心のあるテーマを選び、気軽に参加できるよう努めています。オンライン研修の場合、自宅や職場から参加できるため、参加へのハードルも低く、研修中の記録や資料の共有もしやすく、今まで年に一度会えるかどうか、といった異なる地域の先生方に頻繁に会えるようになりました。赴任当初はオンラインで関係が構築できるのか、という不安もありましたが、何度かオンラインで会っているうちに自然に「お久しぶりです!」、初めて対面で会うときも、「初めまして、だけど初めましてじゃない感じですよね!」という挨拶になります。広大な地域に教師が点在するカナダにおいて、オンラインで定期的に会う機会を創出することで、地域や機関を超えて共に学び合う、ゆるい仲間作り、ネットワーク作りに貢献できているのではないかと思います。

対面のよさ

 まず挙げられるのは文化体験などのハンズオンのアクティビティです。オンラインでもできないことはないですが、やはり対面で体験すると印象に残り、記憶に深く刻まれるのではないでしょうか。
 アルバータ州では高校生対象のExplore Japanという文化体験イベントがパンデミック前は実施されていました。複数の学校の高校生が集まって、1日でいろいろな日本文化が体験できるイベントです。2022/2023年のスクールイヤーは高校の先生たちから再開の要望があり、実施形態を変更し、小規模にして、エドモントン日本文化協会の主催で、実現しました(https://ejca.org/explore-japan)。当日は、学校の授業で実施するのが難しい、茶道、着物、書道、太鼓、空手のセッションが体験でき、生徒たちもとても興味を持って取り組んでいました。
 学校訪問の機会も以前より増えました。百聞は一見に如かず、ではないですが、実際に訪問し、授業見学をさせていただくことで得られる情報量はオンラインで先生から聞く情報量の何倍にもあたります。リクエストがあれば、私が文化紹介を担当する時間も設けています。このスクールイヤーは「風呂敷」のセッションを実施しました。風呂敷を使って、ただ物を包む体験に終わらず、風呂敷についてクイズ形式で学びながら、その合間に自文化について振り返るグループディスカッションを入れて、学びにつながるように工夫しています。自分で考えて、友達と話し合うことで、一つの文化体験がより深く印象に残るのではないかと考えます。
 それでは、対面研修のよさは何でしょうか。2022年10月にブリティッシュ・コロンビア州バンクーバーで開催された言語教師を対象とした大会で、カナダに赴任して以来、初めて中等教育の先生方を対象とした対面研修を実施しました。研修はオンラインでもできますが、このように地域に特化した機会だからこそ参加するという先生も一定数います。オンライン化が進む一方で、その地域に元々あったつながりが弱くなったという話も時々聞きます。その地域ならではのネットワーク作りには対面で会って、情報交換し、共通課題について話し合う機会も必要なのではないでしょうか。
 オンラインと対面の機会をうまく組み合わせて、これからも微力ながら、カナダの日本語教育をサポートしていければと思います。

  • Explore Japan 着物体験の写真
    Explore Japan 着物体験
  • Explore Japan 空手体験の写真
    Explore Japan 空手体験
What We Do事業内容を知る