世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) All Japanで盛り上げる日本語教育

ケラニア大学
黒田 朋斎

 私は2011年4月にスリランカに着任しましたが、着任してすぐに感じたことがありました。それは教師会の先生方、ケラニア大学の学生ともに日本人との接点が少ないということでした。日本語教育が非常に盛んなスリランカですが、日本人日本語教師は数えるほどしかいません。また日本語学習者と当地に在住している日本人との交流もあまり行われていません。盆踊りなど日本人会が主催しているイベントに招待されることもありますが、イベント参加にとどまっており協力関係を築くところまでには至っていませんでした。

 そこで、現地に在住している日本人の皆さんを日本語教育に巻き込むことはできないかと考え、在スリランカ日本国大使館(以下、大使館)とコロンボ日本人学校(以下、日本人学校)に協力をお願いしました。その結果、大使館員によるケラニア大学での特別講義と日本人学校のスリランカ日本語教師会(以下、教師会)への参加が実現しました。今回はこの2つについて紹介します。

1.大使館員による特別講義

 まだ記憶に新しい東日本大震災。世界各国から多くの支援がありましたが、スリランカからも瓦礫除去隊が派遣され被災地で支援に当たりました。それに同行した大使館員が瓦礫除去隊の活動について、2011年7月にケラニア大学で特別講義をしてくださいました。

多くの学生が参加した大使館員による特別講義の写真
多くの学生が参加した大使館員による特別講義

 津波の傷跡がまだ生々しく残る中での活動の様子を写真で見せながら、瓦礫除去隊が家の中の瓦礫やゴミをきれいに片付けて現地の人々から感謝された話や、活動中以外のおもしろいエピソードなど、約45分間講義をしてくださいました。瓦礫除去隊がスリランカから日本に派遣されたことは、おそらくほとんどの学生が知らなかったのではないでしょうか。このような日本とスリランカ二国間の具体的な協力関係に関する講義は、大使館員ならではの貴重なお話でした。すべて日本語での講義でしたが、まだ震災のショックがさめやらぬ時期でもあり、学生たちは熱心に講義に聞き入っていました。

2.日本人学校による日本語教師会への参加

 日本人学校には教師会の活動に協力していただきました。これまでの教師会は組織と活動の安定化が最重要課題であったので、外部に協力を仰ぐまでの余裕はありませんでした。しかし、ここ1、2年で組織が安定し、定例会ほか、通年行事も回数を重ねて滞りなく運営できるようになってきました。そこで、さらなる発展を目指し日本人学校との協力関係を構築しようという方針を打ち出しました。そして今回、定例会への参加、JSCJSC=Japanese School in Colomboの略)フェスティバルへの招待、そして教科書寄贈の3つが実現しました。

 まずご紹介するのが定例会での発表です。これまで教師会では会員の日本語教師の発表がほとんどでしたが、2012年の3月と4月に日本人学校の先生に「コロンボの日本人学校について」、「日本人にとっての漢字」という題目で発表していただきました。どちらも日本の学校や日本人生徒の学習に関わるもので、日本人の生徒が学校の中でどのような活動をしているのか、日本人にとって漢字の学習は簡単なのか等、スリランカの日本語教師にはなかなか知ることができない内容でした。

 2つ目はJSCフェスティバルへの招待です。このJSCフェスティバルは日本人学校で毎年行われている、生徒たちが音楽や劇などを発表するイベントです。今回このイベントに教師会会員の教師とその学校の生徒約50名を招待していただきました。スリランカの生徒たちは、「小さな子どもたちがこんなに上手に演じるなんて!」と日本人学校の生徒たちの熱演に驚き、感銘を受けていました。

日本人学校から寄贈された教科書を手に取る教師会会員の写真
日本人学校から寄贈された
教科書を手に取る教師会会員

 そして3つ目の協力が教科書の寄贈です。教科書改訂などにより使わなくなった日本の教科書を教師会に寄贈していただきました。国語の教科書から算数、音楽、生活科など様々な科目の教科書があり、それを定例会で教師会会員に配布しました。スリランカの先生方はカラフルで絵が多い教科書に興味津々で、一人でたくさんもらい過ぎて持って帰るのが難しくなる人もいたほどでした。

 大使館員の講義にしても、日本人学校からの協力にしても、専門家個人ではとてもできないことです。また現地の日本語学習者や日本語教師にとっては、日本とスリランカの関係や日本の学校の実情を知ることは非常に重要なことでしょう。ありがたいことにスリランカでは、大使館を始め、どの機関も日本語教育活動に理解を示してくれます。専門家個人ではができないことは協力を仰ぎ、All Japanの体制でスリランカの日本語教育を盛り上げたいと思っています。



派遣先機関の情報
派遣先機関名称
University of Kelaniya
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケラニア大学の日本語講座はスリランカの高等教育機関の中で最も長い日本語教育の歴史を持ち、また中級レベルのカリキュラムを持つ数少ない講座の一つである。スリランカではまだ上級レベルの日本語講座を持つ学校教育機関はない。そのため、教育省からの依頼によりAレベル試験(高校卒業兼大学入学試験)の問題作成、採点などにもケラニア大学講師が参画しており中等教育の日本語教育にも影響力を持っている。本講座には毎年高校で初級を終えた学生が集まる。専門家は大学での授業、コース運営の支援、講師の指導のほか、中等教育の日本語教育支援および日本語教師会の活動支援も行う。
所在地 Dalugama, Kelaniya, Sri Lanka
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
人文学部 現代語学科
日本語講座の概要
沿革
 
講座(業務)開始年   課外講座:1978年
一般学位:1980年
国際交流基金からの派遣開始年 1980年

コース種別
  一般学位コース、選択コース、課外コース

現地教授スタッフ
  常勤2名(邦人0名) 非常勤6名(うち邦人2名)

学生の履修状況
 
  履修者の内訳   1年生:50名 2年生:50名
3年生:46名
  学習の主な動機 日本への憧れ・留学・日系企業への就職・日本語教師希望
  卒業後の主な進路 日系企業・日本語教育機関に就職
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力検定2級受験可能な程度
  日本への留学人数 2名~3名程度

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