日本語専門家 派遣先情報・レポート
パリ日本文化会館

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
国際交流基金パリ日本文化会館
The Japan Cultural Institute in Paris
派遣先機関の位置付け及び業務内容
パリ日本文化会館は1997年の設立以来、フランスにおける日本文化の発信基地として幅広い文化活動を行っている。フランス国内の日本語教育支援をより積極的に展開するため、2005年に日本語教育事業が本格的にスタートした。教師支援事業として、定期的な教師研修会や気軽に教師同士が語り合える情報交換の場の提供「オンライン日本語教師サロンかたろん」などを開催する一方、JF日本語教育スタンダード準拠日本語講座の運営、日本語を学ぶ中高生オンライン日本語フェスティバル「Festipon」や出前多読サロンの実施などの学習者の直接支援事業も実施している。
所在地
101 bis, quai Jacques Chirac 75015 Paris, France
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家1名、専門家1名、指導助手1名
国際交流基金からの派遣開始年
2005年

Festipon たくさんのご参加ありがとうございます

パリ日本文化会館
三浦多佳史・兼行めぐみ

 フランス地方都市の中学校の日本語クラブ。教室に集まった生徒さんたちと指導する数学の先生が大歓声を上げている。昨年から当地で実施している中高生向けオンライン日本語フェスティバル「Festipon」のオンライン発表会での一幕だ。
 「Festipon」は日本語専門家だけでなく担当職員やフランス人の職員、日本語指導助手など多くの人が協力して実施するフェスティバルだ。「日本語教室ゆるキャラデザイン」「絵手紙」「アニメ・マンガ場面再現」「朗読」「好きな日本語のことば紹介」の5つのカテゴリーから、当地で日本語に親しむ中高生が作品を作って応募する。2022年度の1回目も今年の2回目も、フランス本土とニューカレドニア、それから日本の国際学校で学ぶたくさんの生徒さんから200を超える作品が送られてきた。どの作品も日本愛に満ち溢れ、いろいろな工夫を凝らした力作ぞろいだ。発表会は2時間で行われるのですべての作品を紹介できない。一次審査で50作品程度に絞り込み、オンライン会場に集まった100人ほどの参加者といっしょに鑑賞する時間を持った。その中からさらに各カテゴリーの最優秀作品が発表されたときの光景が、冒頭の日本語クラブの人達の大歓声だ。

『HUNTER×HUNTER』の一場面を再現する日本語クラブのみなさんの写真
大人気マンガ『HUNTER×HUNTER』の一場面を再現する日本語クラブのみなさん

 この日本語クラブはフランスの中等学校のものだが、正規の科目として日本語を勉強しているクラスではない。日本を愛してやまない数学の先生が、同じく日本文化が大好きな生徒さんたちを集めて、週1回ゲームをしたりアニメを見たり、少しだけ日本語の勉強をしたりしているそうだ。今年の「Festipon」に自分たちの日本語クラブのゆるキャラデザインと、彼らが大好きな『HUNTER×HUNTER』というアニメの一場面をスキットで再現した動画で参加した。そして見事にこの両部門で最優秀の作品に選ばれたのだ。おめでとう。
 「Festipon」はフランスの中等学校で日本語を勉強している生徒さんたちが、日本語の力だけでなく、いろいろな自分の得意なことで参加できるフェスティバルを目指して始めたものだ。絵を描いたり、デザインしたり、動画を撮ったり演技したり、それぞれが自分の得意分野で力が発揮できたら素晴らしいと思う。そしてそんな人たちが日本・日本語という共通のテーマのもとにたくさん集まった催しだ。昨年も今年も、コンピュータグラフィックスを駆使したり、丁寧な絵筆での見事な絵手紙や独特なパフォーマンスのスキット動画、クラスみんなで力を合わせて作り上げたゆるキャラなど、親しみあふれる力作が集まってくる。
 2023年度の最新の優秀作品はFestipon特設サイト:https://festipon.mcjp.fr/で見ることができる。

Festipon特設サイトの写真
Festipon特設サイト

 海外の現場で働く私たちの仕事で大切なことは、日本や日本文化が好きで集まった人たちに、ありがとうという感謝の気持ちを伝え、そしてこれからも日本や日本文化をどうぞよろしく、という思いを伝えることだと思う。「Festipon」がそういった私たちの気持ちを伝える場所になっている、と感じさせられた大歓声だった。
 フランスで日本語を学ぶ中高生にとって、遠いアジアの国の外国語学習は簡単ではない。せっかく日本語を学ぶ教室に来たのに、逆に日本語が嫌いになってしまう残念なケースもあるだろう。私たちにできることは限られているが、だからこそ人に喜ばれる仕事を大切にしていきたいと思う。私たちもみなさんが大好きだ。

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