世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 「日本」を発見する会館

国際交流基金ケルン日本文化会館
磯村 一弘・伊藤 秀明

 ケルン日本文化会館(以下、会館)では現在、約160名の学習者が日本語講座「本コース」を受講しています。この「本コース」に加え、昨年度からは「少しだけ日本語に触れてみたい」という人向けの『入門体験コース』、「日本の文化を知りたい」という人向けの『文化体験講座』、「アニメ・マンガなど特定分野の日本語を学びたい」という人向けの『テーマ別コース』、「とにかく今の日本語力で日本人と話したい」という人向けの『日本語しゃべりーれん』1が加わりました。新規コースはいずれも一回限りで登録・参加ができる単発講座として行われ、「会館に来れば、いつでも日本語・日本文化に触れられる」をウリとしています。今回は、この一年を通して特に人気の高かった「文化体験講座」と「日本語しゃべりーれん」をご紹介したいと思います。

文化体験講座-「日本を知る・日本に触れる」から「日本語への興味」へ-

文化体験講座の写真
文化体験講座

 「文化体験講座」は、「お正月」「ひなまつり」「子どもの日」「七夕」「年末」などの日本の年間行事に合わせて実施されていますが、その他にも「手巻き寿司とおにぎり」や「日本の遊び」といった企画もあります。年中行事の体験講座では、はじめにその行事について○×クイズ形式で簡単に紹介した後、関連した物語のDVDを字幕付きで鑑賞したり、折り紙や飾りを作ったり、ゲームをしたり、歌を歌ったりします。最後は甘酒や柏餅、年越し蕎麦など、その行事の食べ物を実際に体験します。

 日本語を全く知らない方でも参加できるように「文化体験講座」は基本的にドイツ語で行われますが、年賀状作成や短冊に願いを書く体験などを通じてできるだけ日本語に触れる機会を作り、「日本を知る・日本に触れるイベント」から「日本語への興味」を引き出せるようなアプローチを心がけています。

 受講者は子どもからお年寄りまで様々ですが、文化体験講座は土曜日に行っていることもあり、親子のふれあいの場として家族単位で参加される方も多くいらっしゃいます。会館の文化体験講座に親御さんとお子さんが一緒に参加され、クイズや歌などを通して日本文化に触れるとともに、折り紙で作った雛人形などを家に持って帰る姿も見られます。

 このように文化体験講座では、現地の人に「日本に触れながら、日本語への興味を持ってもらう」機会を提供し、日本文化理解や日本語学習へ繋げていくことを目指しています。

日本語しゃべりーれん-日本語を通して人と人とのつながりを拡大-

 「日本語しゃべりーれん」は月に一度、日本語学習者と日本人ボランティアが日本のお菓子や飲み物を囲みながら、小グループに分かれて日本語だけで自由に会話をするイベントです。参加者の日本語レベルは初級から上級まで様々ですが、毎回どのグループも日本語だけの「おしゃべり」を楽しんでいます。スタートした当初は、日本語学習者7名、日本人ボランティア3名というこぢんまりとしたイベントでしたが、回を重ねるごとに人数が増えていき、最近では毎回、日本語学習者・日本人ボランティアともに20名以上が集まり、総勢40名を超える人気イベントとなっています。

日本語しゃべりーれん花見バージョンの写真
日本語しゃべりーれん花見バージョン

 受講者からは「日本語を数年間勉強してきたけれど、初めて日本人と話した」などの声も聞かれ、海外の学習者に日本語で話す機会を提供することの意義が大きいことがわかります。また日本人ボランティアからも「日本語学習者と友達になるだけではなく、ケルンは日本人会がないので日本人の友達が増えてうれしい」との声も聞かれます。

 2012年4月には「日本語しゃべりーれん花見バージョン」として、会館の前にある公園の桜の木の下で開催しました。当日は稲荷寿司や日本酒も用意され、大変な盛り上がりでした。今後も「日本語しゃべりーれん」は、「日本語を軸にした相互理解のコミュニケーションの場」を提供していきたいと考えています。

「日本」を発見する会館

 以上のように、昨年度から新しく動き出した様々な講座が、この一年間でドイツの方々にも次第に認知され、成果を上げてきています。今後も着実に、そしてさらに多くの方々に「日本語・日本文化」に触れ、興味を持ってもらえるよう、いろいろな企画を準備しています。ドイツの皆さんが様々な側面から「日本」を発見する機会となることを目指して、これからもケルン日本文化会館は動き続けます。

1 ドイツ語標記「Nihongo Shaberieren!」。「-ieren」は、ドイツ語で外来語から動詞を作る語尾で、「Shaberieren」は日本語の「しゃべる」をドイツ語動詞化した造語です。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
The Japan Cultural Institute in Cologne (The Japan Foundation)
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
ケルン日本文化会館はドイツ語圏における日本語普及事業の拠点として、日本、日本語、日本文化の理解促進を目的に多様な活動を行っている。1985年から一般社会人対象の日本語講座を開講しており、現在ゼロ初級から上級まで約180名が日本語を学んでいる。通常の日本語コースだけでなく、日本文化体験コース、テーマ別コースなども開講し、様々なニーズに対応している。日本語講座運営の他に、研修会の企画・開催を通した教師支援、日本語能力試験などによる日本語学習者の支援、日本語教育に関する情報の収集と提供などを行っている。近年では地元機関と協力して行う各種催し物を通して新規学習者の発掘や広報にも力を入れている。
所在地 Universitaetsstr 98, 50674 Cologne, Germany
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名 専門家:1名
国際交流基金からの派遣開始年 1985年

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