日本語専門家 派遣先情報・レポート
ケルン日本文化会館

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
ケルン日本文化会館
The Japan Cultural Institute in Cologne (The Japan Foundation)
派遣先機関の位置付け及び業務内容
ケルン日本文化会館は1969年開館、日本語講座は翌年1970年に開講した。主にドイツ語圏における国際交流基金の拠点として、文化芸術交流、海外における日本語教育、日本研究・知的交流を3つの柱としてさまざまな事業を実施している。
日本語教育支援として、各種講座(JF日本語講座、入門体験、文化体験、会話クラブなど)、教師支援(教師会支援、研修会の開催)、日本語学習奨励(ポップカルチャーイベントなどへのブース出展)、アドバイザー業務(ネットワーク会議や日本語教育相談、情報収集)を行っている。
所在地
Universitaetsstrasse 98, 50674 Koeln (Germany)
国際交流基金からの派遣者数
上級専門家:1名 指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年
1985年

ポストコロナの日本語教育支援

ケルン日本文化会館
東健太郎

新型コロナウイルスも収束し、昨年提出したレポートの内容が信じられないぐらい社会状況は平静を取り戻しています。ドイツでは、2022年の春頃から徐々に制限が緩和され始め、10月より長距離公共交通機関や医療・介護施設などでのマスク着用義務以外の制限がなくなり、2023年3月にはこれらを含む感染予防措置は全て終了となりました。ポストコロナにおいて、日本語支援事業をどのように実施しているのかをレポートします。

日本語講座

2022年7月に開講した夏季コースでは、2年ぶりに対面授業を再開しました。コース開講中は、教師もひさしぶりの教室での授業を満喫しました。10月に開講したコースでは、対面授業を一部再開したものの、ケルン以外の遠隔地に住む受講者も多く、オンライン授業のニーズが高いこともあって、コロナ禍による制限が緩和されてからもオンライン授業が中心となっています。「JFにほんごeラーニング みなと」で開講中の「まるごと日本語オンラインコース」での自習とオンライン授業を組み合わせたブレンディッドコースも開講中です。
また、土曜開館の再開にともなって、オンライン開催していた「日本語しゃべり―れん」は隔月で対面とオンラインとで交互に開催しています。日本語学習者からも日本語ボランティアからも非常に好評です。さらに、日本文化体験コースも再開され、「節分」や「こどもの日」などのテーマで開催しています。こちらも毎回すぐに参加枠が埋まってしまう人気ぶりです。日本文化をきっかけとして、日本語学習に興味を持つ参加者もいて、日本語講座の受講にもつながっています。

日本語教師研修会

ポストコロナとなり、2021年度はすべてオンライン開催であった日本語教師研修会は、研修内容や目的に応じて対面研修とオンライン研修、ハイブリッド研修を使い分ける新たなスタイルができあがりました。

① 対面研修

グループワークや授業体験を中心としたワークショップ型の研修会は対面形式で開催しています。
オランダ日本語教師会勉強会 「多読」(2022年11月)
実際に多読ブックを手に取って多読授業を体験してもらった上で、多読授業の方法と多読ブック作成活動についてセミナーを行いました。さらに、教師会の先生方が作成した多読ブックについて参加者全員でフィードバックを行うワークショップも実施し、対面ならではの充実した内容となりました。
ベルリン日本語教育セミナー 「対面&オンライン授業をデザインする 学びのプロセスと学習意欲を高める内容を意識した授業設計」(2023年2月)
インストラクショナルデザインを基に、学習意欲を高める内容にするための授業のデザインについて考え、グループワークで意見交換とアイデア共有を行いました。参加者は、対面授業とオンライン授業のメリットとデメリット、その違いについてグループでじっくり話し合い、対面研修だからこそできるインタラクティブな内容となりました。

ベルリン日本語教育セミナーの写真
ベルリン日本語教育セミナー

日本語教師のための「本質観取」ワークショップ(2023年3月)
稲垣みどり氏(山梨学院大学)と岩内章太郎氏(豊橋技術科学大学)による現象学、本質観取、日本語教育での文脈化についての講演の後、グループに分かれて実際に本質観取を体験するワークショップを実施しました。ドイツだけでなく、オランダやトルコからも参加があり、非常に満足度の高い研修会となりました。

② ハイブリッド研修

グループワークや授業体験を対面研修と同様に、オンライン研修でも提供できる場合は、ハイブリッド形式で開催しています。
ケルン日本語教師研修会2022春 「TADOKU」(2022年5月)
多読授業体験を対面では実際の多読ブックを用いて行い、オンラインでは「オンライン多読ライブラリー」を利用して実施しました。グループワークでは、対面研修参加者とオンライン研修参加者とに分かれて、オリジナル多読ブックの作成に取り組みました。短時間であったにもかかわらず、各グループが興味深い作品を作成していました。
第55回オーストリア日本語教師会定例会 「ストラテジーを取り入れた日本語授業を考える」(2023年3月)
「ひきだすにほんご Activate Your Japanese!」をもとに、ストラテジーについて学び、ストラテジーを取り入れた授業をどのように行うことができるかを参加者と考えました。グループワークでは、「スアン日本へ行く!」を見て、自分だったらどのようなストラテジーを使うかアイデアを出し合ったり、授業案を考えたりしました。

③ オンライン研修

講義やコンテンツ紹介を中心としたセミナー型の研修会は、幅広い地域から多くの参加者が参加できるようオンライン形式で開催しています。特に、2022年度からは国際交流基金(JF)の欧州6拠点(ローマ日本文化会館、パリ日本文化会館、ロンドン日本文化センター、マドリード日本文化センター、ブダペスト日本文化センター、ケルン日本文化会館)が研修内容に応じて協力し合い、欧州の日本語教師の日本語教授力の向上のための支援を目的としたオンライン公開セミナーを共催しています。2022年度は5回のオンライン研修会を共催しました。各拠点が広報から研修準備、運営にいたるまで協力して行うことで、より質の高い研修会を欧州全域に向けて実施できるようになりました。2023年度も引き続き、開催していく予定です。

日本語教育普及促進活動

日本関連イベントに参加して広報活動や出張講座を実施したり、日本語教育ニュースレターやSNS、各教師会のメーリングリストへの情報提供などメディアを通じた広報活動を行ったり、現地の学校を訪問して日本語ミニレッスンや文化体験を開講して、日本語教育の普及活動を実施しています。中でも、毎年5月にデュッセルドルフで開催されるJAPAN-TAG(日本デー)には60万人以上の人出があり、ドイツだけでなく周辺国からも駆けつけた日本ファンで賑わいます。この日はスタッフ一丸となって、当館の日本語教育事業や文化事業、そしてJFのeラーニングコンテンツやオンライン事業などについて知ってもらうべく、広報活動に励んでいます。みなさんも機会があれば、ぜひお越しください!

日本デーの写真
日本デー

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