日本語専門家 派遣先情報・レポート
ローマ日本文化会館

派遣先機関の情報

派遣先機関名称
ローマ日本文化会館
The Japan Cultural Institute in Rome
派遣先機関の位置付け及び業務内容
ローマ日本文化会館は1962年、政府による海外初の日本文化会館として開館、日本語講座は1964年に開講された。以来、文化芸術交流、海外における日本語教育、日本研究・知的交流を3つの柱としてさまざまな事業を実施。イタリアの日本語教育機関は高等教育がほとんどである中で、ローマ日本文化会館の日本語講座は、高校生や一般社会人にも日本語学習の機会を提供し、年間延べ400名強が日本語を勉強している。日本語講座の運営の他に、イタリア国内外での研修会を通した教師支援、ネットワーク形成支援、日本語能力試験などによる学習者支援、日本語教育事情の情報収集、地元団体が主催する催しへの協力などにも力を入れている。
所在地
Via Antonio Gramsci, 74 00197 Rome, Italy
国際交流基金からの派遣者数
専門家:1名、指導助手:1名
国際交流基金からの派遣開始年
1986年

日本語講座、新体制での運営

ローマ日本文化会館
中島永倫子

日本語講座の変遷

1964年に開講されたローマ日本文化会館(以降、「会館」とする)の日本語講座は、最も歴史ある成人を対象とした日本語の語学学校としてイタリアでよく知られています。開校から来年2024年で60年を迎える講座には1986年から国際交流基金の専門家が派遣され、時代に即して教材や開講レベル、教授法や評価方法などを改編し続けてきました。近年では、2011年に『まるごと 日本のことばと文化』(以降、『まるごと』とする)が主教材として導入され、それまで使用していた教材『みんなの日本語』から徐々に移行を始めました。2021には移行が完了し、すべてのクラスがJF日本語教育スタンダード(以降、「JFスタンダード」とする)を準拠とする講座となりました。この数年間、およそ200人の受講生を常に抱えてきた本講座では、2022年以降『まるごと』コース(A1からB1)と「自律的学習支援-プロジェクト型」コース(B1以上)を中核に講座運営を展開しています。ここに派遣される専門家としての講座での仕事は、コース全体のシラバスや評価方法を策定し、それらを授業担当の講師達に実施してもらい、彼らからのフィードバックに基づいて見直しや改善を図ることです。また定期的に文化日本語講座も開催し、JFスタンダードに準拠する講座として異文化理解力の育成にも力を入れてきました。

A2後半以上に特化した講座へ

2022年秋には、入門(A1)及び初級(A2前半)レベルのクラスを現地の提携校の「にほんごもっと」に移管することとなり、会館の日本語講座は初級後半(A2後半)以上のレベルに特化した講座となりました。この変革によって会館自体の学習者数は減少しましたが、イタリア全体としてみると学習者数に変化はなく、むしろ入門及び初級レベルの講座を現地の機関に移行することで、イタリアの日本語教育機関におけるJFスタンダードの理解促進及び拡充につながる機会となりました。一方で、レベルが上がるにつれて減っていく学習者を対象とした講座を運営する会館側としては、中級(B1)レベルにより特化したカリキュラム編成が求められることとなり、現在試行錯誤しています。

プロジェクト型学習の導入

『まるごと』では初中級の教科書からB1レベルのCan-doが入り始め、より「自立した言語の使用者(Independent User)」として日本語で自分のやりたいことを伝えられる(会話で自分の意見を表明する、など) ようになることを目指します。それには教科書で学んだことを活かして、生活の中で日本語を使う経験を重ねることが大切ですが、海外の日本語学習者にとって、日常の中に日本語使用の場を見つけることは容易ではありません。そのため2022年秋の新学期よりシラバスを改訂して、プロジェクト型学習をカリキュラムに正式に導入し、授業の一環としてプロジェクトの内容や達成目標を学習者自身が決めて取り組めるようにしました。具体的には全28回のコース期間のうち準備、発表、ふりかえりと評価のために5回の授業時間を充てて実施しました。

初中級クラスでのプロジェクト学習の進め方例の写真
初中級クラスのプロジェクト学習の進め方

2022年度に開校した初中級から中級の5つのクラスでは、以下のように学習者が各自の関心事に根差したテーマについて調べ、発表し、評価を行いました。

学生が記入したプロジェクトに関する情報の写真
学生が記入したプロジェクトに関する情報

この情報は全受講生とオンラインで共有し誰でも発表の見学に来ることができるように図りました。それぞれオンライン開講のクラスはオンラインで、対面開講のクラスは対面で発表し、その他の受講生や発表者の友人などが見学に来ていました。また料理レシピを作って発表した中級クラスの実施後のふりかえりでは「授業外でクラスメイトと集まって話し合うことで交流が深まった」「日本の料理についてもっと知りたいと思いオンラインで色んなレシピを調べて作ってみた」「準備は大変だったけど、発表した後に大きな達成感があった」などのコメントを学習者から得ました。
今後「中級以上の日本語なら会館で学ぼう!」となればと願っています!

ローマ日本文化会館の日本語講座の特徴のページ: https://lingua.jfroma.it/index-lingua.html
にほんごもっとのまるごと講座のページ: https://www.nihongomotto.it/jfl-japanese-as-a-foreign-language

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