世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 広がる日本語人材の需要

カンボジア日本人材開発センター
小川 京子

日本センターとは

 日本センターは、市場経済移行国におけるビジネス人材育成と日本との人脈形成の拠点として構想されたJICAプロジェクトで、現在8か国9か所で1)ビジネスコース 2)日本語コース 3)相互理解促進事業の3つを柱とした多彩なプログラムを展開しています。

カンボジア日本人材開発センター 日本語部門

企業委託日本語コースの写真
『企業委託日本語コース』

 カンボジア日本人材開発センター(Cambodia-Japan Cooperation Center、以下、CJCC)は2004年に王立プノンペン大学の中に設立され、日本語部門は、実務人材の養成を目指して、一般日本語のほか、ビジネス知識・日本文化・日本語を統合した3 in 1コース、日本語能力試験準備コース、企業委託コースなど、さまざまなパートタイムの日本語コースを開設しています。

 積極的に国際社会に参画していこうとするカンボジアでは外国語の果たす役割が非常に大きいのですが、CJCCでも、会議を含めて使用言語は英語です。受講者もCJCCがカンボジア経済を牽引できる人材の育成をめざしていることもあって、総じて教育的背景は高く、たいていの受講者は英語ができます。他国ほど日本のポップカルチャーが普及していないカンボジアでは、英語に加えて日本語を学び、社会での競争力を身につけて「留学」や「仕事」などに活かしたいというのが大きな学習動機になっています。

 現在初級から中級まで開かれている一般日本語コース受講者の大半は大学生で、大学での専門の勉強のかたわら、昼休みと放課後の時間帯に、日本語を学んでいます。

 これまでの日本語コース全体の受講者は累計1700名で、2012年5月現在も約170名の学習者が在籍しています。  

 しかし、勉強や仕事と平行して、細く長く日本語を勉強し続けるのは容易なことではなく、また、これまではせっかく日本語を学んでも日本語を活かして働ける場が少なかったため、途中で学習をやめてしまう受講者も少なくありませんでした。しかし、最近では、日本語人材の需要が急激に増えて、日本語学習者の励みとなる状況が生まれてきています。

日本語学習者のキャリアパス

 この一か月あまりの間にCJCCが受け取った求人を見ると、アパレル、電子、証券、会計、デジタルゲーム開発、美容院、クリニック、政府機関から、職種は翻訳・通訳を筆頭に、店長候補、チームリーダー、会計、一般事務、人事総務、美容師、投資コンサルタント、秘書等、多岐にわたります。これらはほとんどが日系企業ですが、中には韓国や台湾系企業からの求人もあります。要求される日本語能力はほとんどが日本語能力試験N2以上、それに加えて英語や中国語も要求されることが多いのが特徴です。パソコンのスキルが必要な職種も多く、さらに性格としては忍耐力、向上心、積極性などが求められています。

 日本語教育の歴史の浅いカンボジアではこのような要求に合う人材はまだ非常に限られているのが実情です。今後はこうした企業の求める日本語人材についてさらに調査し、それに応じたカリキュラムを整備して、企業のニーズを満たす人材を早急に育成していく必要があると考えています。

企業委託日本語コース

 CJCCでは企業に講師を派遣し、ある業種に特有の日本語に特化した特別日本語コース、福利厚生の一環としての会話中心のコースなど、各企業の個別のニーズに対応した日本語コースも開講しています。

 電器部品メーカーのM株式会社では、ローマ字によるオリジナル教材を使用し、文字の負担を減らした会話中心の授業を行っています。残業や出張などで定期的な授業への出席が難しく、途中でやめてしまう受講者も少なくないのですが、一週間の仕事が終わった土曜日の夕方の授業に、受講者も教師も楽しそうに授業に取り組んでいます。

『みんなの日本語クメール語版』改訂

クメール語版改訂検討会の写真
『みんなの日本語I』
クメール語版改訂検討会

 CJCCの重要な日本語関連事業のひとつに『みんなの日本語クメール語版』の作成があります。1998年にCJCCの教師が中心になって、クメール語版が作成されましたが、増刷に向けて、カンボジア全国から7つの日本語教育機関から17名の代表が集まって英語の文法解説書からクメール語への翻訳の適否を中心に改訂作業を行いました。

その他のCJCCの活動

 CJCCではその他にも日本語部門主催の日本語学習者が日本人と日本語でおしゃべりする『Chat Talk』、文化交流部門による年中行事や料理教室などの文化行事、ビジネス部門による英語でのビジネストレーニングコースのほか、外部機関への施設貸し出しも行っています。外部機関の主催による日本語スピーチコンテストや日本式メークアップセミナーなど日本語や日本文化を広める活動のほか、企業の会社説明会や面接の会場としても使用され、日本との接点としての役割を果たしています。CJCCは今後もこうした活動を通して、カンボジアと日本の交流促進をめざしていきたいと思います。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Cambodia-Japan Cooperation Center
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
 カンボジア日本人材開発センター(CJCC)は日本の知識や経験を活かしてカンボジアの市場経済化を促進し、市場経済化を担う実務人材あるいは地場の中小企業を主たるターゲットとした産業育成を担う人材を育成すること、及びカンボジアと日本の相互理解を深めていくことを目的として2004年に王立プノンペン大学の中に設立された。ビジネストレーニング部門、相互交流部門、日本語部門が相互協力しながらさまざまな活動を行っている。
日本語部門では実務日本語人材の育成をめざして、初級から中級、ビジネス日本語、企業委託等の定期日本語コースのほか、随時セミナーやイベントを開催している。
所在地 Russian Confederation Blvd., Tuol Kork, Phnom Penh, CAMBODIA
国際交流基金からの派遣者数 日本語上級専門家 1名
国際交流基金からの派遣開始年 2004年

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