世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート) 日本語学科2013年

王立プノンペン大学
杉山 純子

1.外国語学部の建物

外国語学部棟の写真
外国語学部棟

はじめに、外国語学部棟のデザインをしたヴァン・モリヴァン(Vann Molyvann)をご紹介します。モリヴァンはフランスで建築を学び、内戦前の黄金期のカンボジアで、カンボジアの土壌に合った近代建築を考案した建築家です。外国語学部にはピロティー階があり、風通しが良くなっています。一見モダンですが、アンコール時代のような空中回廊を作り、伝統的かつ斬新なデザインでもあります。外国語学部はモリヴァンの建物を補修しつつ、今も大切に使っているのです。

2.活動的な学生達

王立プノンペン大学日本語学科では様々な学生が日本語を学んでいます。日本語学科は午前、午後、夜の3部制で、働きながら学ぶ社会人や、他の大学で他の専門を学びつつ日本語も勉強するというダブル・スクールの学生もいます。

日本へ行くチャンスが増えたこの1年の学生の活躍ぶりはめざましく、日本理解も深まりつつあります。キズナ・プロジェクトでは当学科の14名の学生が東日本大震災の被災地を訪問し、現地の人々や大学生と交流し、多くのことを学んできました。また、他のプログラムも大学生とのディスカッションや学校訪問など、体験型のものが多く、自分の目で見て自分で考えたことを発表する機会が増え、学生達も成長しています。

日本語学科にとって、この1年のうれしい出来事は学生の外部イベントでの活躍でした。一つ目は日本語学科の学生が日本のテレビ局に招待され、外国人による日本語の歌の歌唱大会で特別賞を受賞したことです。二つ目は、カンボジア日本語スピーチ・コンテストもみじの部で日本語学科の学生2名がそれぞれ最優秀賞と優秀賞を受賞したことです。このような学生の活躍は他の学生の励みにもなります。

3.4年生の授業

学科長と教育クラスの学生達の写真
学科長と教育クラスの学生達

4年生になると、学生達は教育専攻とビジネス専攻に分かれ、それぞれの専門分野で学びます。例えば、教育専攻には応用言語学、教授法、教材研究、教育実習などの科目があり、ビジネス専攻には観光日本語、通訳、実務翻訳、日本経済などの科目があります。また、両専攻の共通科目として、アカデミック・ジャパニーズと日本文学の履修が義務付けられています。

日本文学では今年も東北の作家、宮沢賢治の作品を読んでいます。東日本大震災の時に人々の心の支えとなった「雨ニモマケズ」を上手に朗読できる学生もいます。文学に触れたことのない学生がほとんどですが、面白い動物が出てきたり、こわい出来事や不思議な現象が起こったりする賢治ワールドを楽しんでいるようです。

また、今年も4年生全員を対象に、外部からお招きした講師による特別講義を実施しています。特別講義はアート・デザイン、建築、歌、就職活動、遺跡修復などをテーマに、専門家の話を生の日本語で聞き、ディスカッションを行うという貴重な時間となっています。手弁当で来てくださる講師の方々も学生とのやりとりを楽しんでくださっています。

4.卒業論文

4年生の最大関心事は卒業論文です。今年は教育専攻の学生のテーマが多彩になり、日本語だけでなく、学校教育、日本社会、日本文化もテーマになっています。ビジネス専攻の学生はカンボジアの文化、社会、経済をテーマに卒論を書いています。個別面談も行いますが、学生数が多いためクラス授業だけでは時間が足りず、週末や祝日などにカフェ面談を行っています。

卒業論文に欠かせないものが参考文献です。読む力が不足している学生達に参考文献の内容を効率的に把握させるため、参考文献講読の授業も行っています。おかげで、最近は参考文献の欠点を指摘できるような学生も出てきました。

5.就職状況

日本語学科は今年5期目の卒業生を送る予定です。この1年でカンボジアに進出する日系企業がますます増加しています。求人数が求職者数を上回る状況で、アルバイトでもいいからと、在学中の学生に声をかけてくる企業もあります。この状況は喜ばしいことですが、その一方で、新入社員(卒業生)が短期で就職先を辞め、さらに良い待遇を求めて企業を渡り歩くという事態も起こっています。

6.日本語上級専門家の役割

日本語上級専門家(以下、専門家)の役割は日本語学科の授業担当だけではありません。学内では弁論大会、作文コンクール、読解ラン・コンテストの企画・実施に大きく関わっています。学外ではカンボジア日本語教師会セミナー、さくら日本語・日本文化普及キャラバン(他機関の教師、在留邦人、学生の協力を得て、各地の高校を訪問し、日本語や日本文化を紹介する活動)などの実施への支援を行ったり、アンコールワット日本語教師会セミナーの講師、高校生日本語スピーチ・コンテストの審査員などを担当したりなど、外部での活動も多々あります。縁の下の力持ちになって、ひとつひとつの仕事をこなしていくことが専門家の仕事ではないでしょうか。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Royal University of Phnom Penh
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
王立プノンペン大学は、カンボジアの国立高等教育機関の中で最大の総合大学である。日本語学科は2003年にカンボジア教育省の承認を得て設置され、2005年10月に開講した日本語・日本語教育を主専攻とする4年制の学士課程で、カンボジア全国から学生を集めている。2005年11月には、カンボジア日本語教師会の事務局が日本語学科に設置され、会報の発行、教師会セミナーの主催、他機関の教師への情報提供などを行っている。さらに、さくらネットワークの拠点機関にもなりカンボジアでの日本語教育普及に努めている。
所在地 Department of Japanese, Institute of Foreign Languages, Royal University of Phnom Penh,
Russian Federation Boulevard, Phnom Penh, P.O.Box416, Cambodia
国際交流基金からの派遣者数 上級専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
外国語学部日本語学科
日本語講座の概要
沿革
講座(業務)開始年   2005年
国際交流基金からの派遣開始年 2005年
コース種別
日本語専攻
現地教授スタッフ
常勤10名(うち邦人4名) 非常勤1名(邦人)
 
学生の履修状況
履修者の内訳   1年生119名 2年生71名
3年生58名 4年生57名
学習の主な動機 ・将来の仕事のため
・留学のため
卒業後の主な進路 日系企業・NGO就職、通訳・ガイド、日本語教師
卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N3-N2
日本への留学人数 1年間の留学5名程度

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