世界の日本語教育の現場から(国際交流基金日本語専門家レポート)カンボジアの日本語学習者のためにできること

カンボジア日本人材開発センター
吉川景子

カンボジアにおける日本語教育は首都プノンペンと、アンコールワットで有名な観光の町シェムリアップを中心に行われています。カンボジア日本人材開発センター(以下、CJCC)では一般向け日本語講座だけでなく、日本語・日本文化に関する各種イベントが行われ、日本を発信するセンターとしての役割を担っています。

1.CJCCの学生です!

CJCCでは『まるごと 日本の文化とことば』(以下、『まるごと』)という教科書を使った講座を実施しています。受講生は主に大学生と社会人で、週2-3回通って日本語を勉強しています。しかし、先生たちは、週2-3回通うだけではCJCCに所属しているという帰属意識が薄いこと、学習成果を発表する機会が授業以外にないため、学習意欲への刺激が少ないことが問題だと感じていました。そこで、「CJCCの学生だ!」ということを意識してもらい、お互いに切磋琢磨し、日本語学習により取り組んでもらうために、受講生のためのイベントを企画しました。その取り組みを2つ紹介します。

CJCC学生日本語スピーチ大会の様子
CJCC学生日本語スピーチ大会

1つはCJCC内のスピーチコンテストです。毎年カンボジア日本語スピーチコンテストが行われていますが、CJCCから本選に出場する人はおろか、スピーチを書いて応募する人がいませんでした。それで、カンボジアのスピーチコンテストの前にCJCC内でスピーチコンテストを企画し、先輩の部、後輩の部に分けて行いました。先輩の部はカンボジアのスピーチコンテストに応募できるレベルのスピーチ作成、後輩の部は各レベルなりのまとまりのある話を発表し、達成感を味わってもらうことを目的としました。司会やパフォーマンスも受講生から募り、スピーチ発表者だけでなく、できるだけほかの受講生も関わるようにしました。その結果、まだまだ少ないですが、11名の学生がカンボジアのスピーチコンテストに応募し、1名が本選に出場することができました。

遠足の写真
遠足でラジオ体操!

もう1つは遠足です。クラスメート間、教師と受講生の間のネットワーク作りのため、どこかにいっしょに出かけて活動をしたいとの声があり、遠足を実施することにしました。しかし、ただ旅行をするだけでは日本語学習とは関係がありません。そこで日本の運動会のような活動をしようということになりました。特別な道具を使わず、お金もあまりかからず、みんなが楽しめそうな活動を選び、実施しました。日本のようにきちんとした「体育」の授業があるわけではないので、整列をしたり、グループで何かをしたりするのに慣れておらず、こちらの意図を理解してもらうことは難しかったですが、それぞれ新しいことを体験した1日でした。

2.先生もがんばってます!

先生も新しい『まるごと』の教科書に合わせた授業準備に大忙しです。特に、『まるごと』を使った中級レベルのクラスが新たに始まったため、毎週行っている勉強会では中級を扱うことにしました。カンボジア人の先生によっては学習者としてもレベルがちょうどいいため、教授法と日本語の両方の勉強になっています。最初に教科書分析を行い、構成と目的を理解した後で、報告者が1トピックの授業を一通り行いました。次回からほかの先生たちに模擬授業を行ってもらう予定です。

『まるごと』には副教材がないため、カンボジア人の学習者から作ってほしいという声が多く聞かれます。カンボジア人の学習観は先生に宿題をたくさんもらいたい、文字を書く練習をしたい、文法などの知識を教えてもらいたい、というのが一般的です。そのリクエストに応えて、筆順が載ったクメール語訳付の「漢字練習帳」を作成しました。また、初級の学習者のドロップアウトを少しでも減らすべく、次はクメール語版の文法解説書を作り、文法重視の学習観を持つ学習者のニーズにも応えたいと考えています。

3.教師養成コース始めました!

カンボジアでは常に日本語教師不足に悩まされています。そもそも日本語教師を養成する機関はプノンペン大学外国語学部日本語学科にしかないため、日本語ができるというだけで教師になっている人が多いのが現状です。カンボジア人の教師は若く、教師をやりながらも日系企業で働きたいとか、日本に留学したいという夢を持っていることが多いです。ですから、どこの日本語学習機関でも1-2年で先生がやめ、新たな教師を探すのに苦労しています。CJCCも同じ問題に直面しているため、少しでも教師の確保につながるよう、教師養成コースを始めました。教師養成というと日本では大学の専門で勉強したり、民間の養成講座で420時間の勉強をしたりするイメージがあります。しかし、CJCCではそんな悠長なことは言っていられません。そこで、まず『まるごと』の入門編が最低限教えられることに目的を限定し、短期コースを開いてみました。実は過去にも教師養成コースは開講されていましたが、人がそれほど集まらず、ニーズがなさそうでした。しかし、今回開講してみたところ、外部から7名、CJCCのスタッフが2名、CJCCの教師がブラッシュアップのため2名参加しています。この中からCJCCの非常勤講師、将来的には常勤講師が誕生することを願っています。

派遣先機関の情報
派遣先機関名称
Cambodia-Japan Cooperation Center
派遣先機関の位置付け
及び業務内容
CJCCはカンボジアと日本政府間の無償資金協力及び技術協力プロジェクトにより、王立プノンペン大学内に設立。日本の知識や経験を活かし、カンボジアの市場経済化を担う実務人材育成、カンボジアと日本の相互理解の深化を目的としている。主な事業はビジネストレーニング、日本語人材育成、文化交流。2013年までは国際協力機構(JICA)経由で、2014年からは国際交流基金(JF)より直接専門家を派遣している。日本語コースは2014年10月より日本語教育スタンダードに基づいたJF日本語講座を開講。スタンダードに基づいた日本語教育の普及、教師研修、カンボジアの日本語教育拠点としての役割が期待されている。
所在地 Russian Confederation Blvd., Tuol Kork, Phnom Penh, CAMBODIA
国際交流基金からの派遣者数 専門家:1名
日本語講座の所属学部、
学科名称
Language, Culture and Education Department
日本語講座の概要
沿革
  講座(業務)開始年 2004年
  国際交流基金からの派遣開始年 2004年
 
コース種別
  パートタイム(週2~3回、3か月~半年)
 
現地教授スタッフ
  常勤8名(うち邦人3名)、非常勤6名(うち邦人2名)
学生の履修状況
  履修者の内訳 定期コース:初級~中級約500名、企業委託:36名
  学習の主な動機 仕事、留学
  卒業後の主な進路 仕事、留学
  卒業時の平均的な
日本語能力レベル
日本語能力試験N4~N3
  日本への留学人数 1-2名程度

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